Interview & Writing
金輪際セメ子
Photo
小林 俊史

女優・モデルとして活躍する水原希子さんが、友人で写真家の茂木モニカさんとともにアメリカを旅した際の写真を収録した写真集『夢の続き Dream Blue』。その世界を表現した写真展「夢の続き DREAM BLUE」が、渋谷PARCOでの展示から1年を経て、心斎橋PARCOで開催されています。写真展開催にあたって来阪したお2人に、写真に込めた想いや旅のエピソードなどをお聞きしました!

より深く写真の世界に没入できる、“体験する”展覧会。

2021年3月の東京に続き、大阪での開催が決まった時はどんなお気持ちでしたか?

水原:本当は東京のすぐあとに大阪で開催する予定だったんですけど、コロナの関係もあってできなくなってしまって。大阪に来て会場も見ていたから、すごく残念でした。でも、コロナが少し落ち着いた今の状況で開催できるのは、ちょうど良かったかなと思います。皆さんにも、前向きな気持ちで見てもらえるかなって。それに、一年空いたことで、前回の写真展とは違うアイデアだったり、新しい試みを今回の写真展に盛り込むことができたので、そこも良かったと思ってます。

東京と大阪では、展示内容が変わっているんですか?

茂木:空間が広いので、どうやってスペースをもっと面白く見せるかとか。渋谷では展示しなかった写真もいくつかありますし、グラデーションを背景に切り抜いた写真も渋谷にはなくて、ここだけのアイデアですね。

水原:あえて照明を落として暗めにしたり、大阪のほうが写真の世界により没入できるような演出になってます。見るよりもっと入り込める、世界を体感してもらえるような展示になってるかなと思います。

神戸出身の水原さんは、久しぶりの来阪とのこと。「学生時代はよくアメ村で遊んでたので、懐かしいなって思ってました」

目で見るというより、体で感じる展覧会なんですね。この写真は、水原さんとモニカさんが旅をしながら撮影されたものだと伺っていますが、どんなきっかけで旅に出られたんですか?

水原:2017年に私がLAに長期滞在しているときに、モニカが遊びに来たんです。当時私はモニカの友人の家にホームステイしていたんですけど、その子も一緒に、息抜きに旅行しようって話になって。写真も撮ろうって言って、化粧品や衣装も準備して、みんなでロードトリップに出たんです。

ということは、撮影のための旅行ではなく、完全にプライベートな旅行?

水原:そうです、写真集を出そうとかいう目的はなく、とにかく旅行をして、旅先の美しい景色とともに写真を撮ろうって。行く先々で、大きなキャニオンや空が広い一面の野原、自然に湧き出ている温泉、雪山、いろんな景色に出合いました。

茂木:雪山は不思議な光景だったよね。車で走ってたら、ずっと砂漠だったのに、いきなり雪山が現れて。

大阪に来るのは3回目と言う、ニューヨーク在住の茂木さん。「純喫茶とか、スナックの看板とか、レトロなものが好き。大阪にはいっぱいあるから面白いですね」

砂漠からいきなり雪山!それはなかなか見られない景色ですね。

水原:そういう奇跡的な瞬間がいっぱいあって、ちょうど夕暮れ時にさしかかって美しい空を見た瞬間にパシャパシャって撮ったり。その場でその瞬間に受けたインスピレーションでメイクも衣装も選んで、この岩だったら女神っぽくしてみようってヘッドアクセを付けてみたりとか。ほんとにその場に応じてって感じで撮影してました。

茂木:そう、ぜんぜんロケハンもしてなくて。でも、ラッキーなモーメントがいっぱいありました。

「こういう写真を撮ろう」みたいに狙って撮ったわけではなく?

水原:行き先すらあんまり決めてなかったので。この写真(下)も、車で走ってたらたまたま牛が見えたんです。「牛、めっちゃいる!」って車を停めて。ここだったらデニムのブラがいいかなって着替えて、笠は友達がかぶってたのを「これちょっと貸して」って借りて、その場でパパっとメイクして撮りました。

メイクもスタイリングも、その場に応じて。「なにも計算せず、その瞬間その瞬間を切り取るような感じでした」

茂木:私もこの写真見てびっくりしてる、こんないい写真撮ってたの?って(笑)。このときたしか、メーターも使ってなかったです。

今からリクリエイトしようとしても、同じ写真を撮ることはできない。

本当に行く先々で、思いのまま、気の向くままに撮影されてるんですね。

水原:モニカは写真が大好きで、私も小さい頃からお着換えごっことかが好きで、だから子どものようにわちゃわちゃしながら撮ってました。いい意味でのゆるさというか、ほんとにフランクな感じで。実はすごくたくさん撮ってたんですけど、でも旅の最中はそんなこと全然意識してなかったんです。おしゃべりして遊んで、すごく楽しい時間のなかで撮ってたから。

たしかに、その場の空気感とかが伝わるような感じがします。

茂木:だからきっと、今から同じ写真を撮ろうと思ってももう撮れない。がんばって撮ろうとすると、ナチュラルさやフリーダムがなくなっちゃうから。だから、この写真は見ていてすごく愛を感じる。

水原:そうだね、今からリクリエイトしてようと思っても、もう撮れない。

本当に、ありのままの写真なんですね。

水原:ヌードの写真もいっぱい撮りましたけど、なぜヌードになったかって言うのは…。

茂木:みんなでヌードになったんだよね。

みんなでヌードに!

茂木:そう、ライトボックスを見たら、私がちょっとだけ映ってるセルフィーもあります。

水原:本当に誰もいなかったので、なんかもう脱いじゃう?みたいな感じで、自然と一体になろうよ!って。

写真集に収録しなかったフォルムをコラージュした作品。アザーカットでありながら、その写真もとても魅力的。

なんだかすごく楽しそうな感じがします(笑)

水原:ほんとにおもしろかったですね。一緒に行った友達はこの会場の音楽も担当してくれてるんですけど、彼女が、なかなか外で裸になることなんてないから、あそこの部分に太陽を当ててみようって言い出したんです。太陽にさらす機会なんてないし、いい気が入って来て体にもいいって聞いたしやろうって。それで3人でブランケットを敷いて寝そべったんですよ。そしたらすごい開放的な気持ちになって。

茂木:車に積んでた青いチェックのブランケットね。あれを見ると、もうそれしか思い出せない(笑)。あとで見て、こんな写真撮ったっけ?って。

水原:フィルムで撮ってるから、現場では見れないんですよ。

デジタルではなく、フィルムカメラで撮影されたんですね。

茂木:それが私のスタイルで、fate、運命に任せてるっていうのが、フィルムの楽しさなんです。

水原:フィルムは何が写ってるかわからないけど、時にはすごく神がかった魔法のような瞬間が撮れることもあるんです。どういうものが写っているか、モニカはそこに期待して、フィルムで写真を撮ってるよね。

「希子、あの時の写真すごいよ、ほんとに素晴らしいよ」

旅の後、撮った写真をご覧になってどんな感想を持ちましたか?

水原:実は私たち、旅の直後はパーッと見ただけなんです。撮ったことに満足しちゃってるから、「ああ、いい写真が撮れたね!」って。でもどこに出すわけでもなかったから、その時はそれでオッケー!って感じで。

茂木:ハードドライブにずっと入れてただけだったよね。

水原:でも月日が経ってコロナが起きて、世の中も色々変わってしまった時に、モニカが旅の写真を振り返って「希子、あの時の写真すごいよ、ほんとに素晴らしいよ」って。私もちょうどその時の写真を思い出したり、写真集を出したいなと考えてた時期だったので、モニカと相談して、あの写真を出すタイミングは今じゃない?っていう話になったんです。

旅の直後とは、写真が違って見えたということですか?

水原:コロナが起きてすごく息苦しくなってしまったけど、この時の写真の私たちは、ピュアにありのままの自分を楽しんでいるんです。自然と一体になる感覚だったりとか、その瞬間を生きるみたいな、言葉にするとありきたりですけど、それを実際に当時の私たちはやっていて。その姿を見て、過去の私たちから、インスピレーションを受けたみたいな感覚になりました。

茂木:そこにも作品の意味があると思う。4年の時間が経って、気持ちが変わった、そこが大切なところ。

「自然に湧き出ている温泉があって、すごく気持ちよかったんですけど、日が暮れたらたくさん蚊が出てきちゃって」という裏話も。

4年という歳月が流れて、世の中や自分が変わったからこそ、見えてきたものがあるというか。

水原:振り返って見た時に、なんて尊い時間だったんだろうって。月日が経ってからその時の素晴らしさをあらためて実感して、だから、今出そうって。

茂木:そうだね、感謝も込めて。若かったから撮れたというか、色々あって、成長して。当時は気付いてなかったけど、あとで見ると、すごい成長したね私達って。

旅の意味みたいなものが、あらためて浮き彫りになったんですね。

水原:私がなぜアメリカに行ったかと言うと、当時アメリカのエージェントと契約して、現地でオーディションを受けていたんですね。でも、その頃ちょうどダイバーシティという言葉が出てきて、アメリカの企業も積極的にアジア人や黒人を採用して、ダイバーシティの“枠”を埋めようとしていたんです。

茂木:アジア人とか、女性とか、そういう枠。

水原:そう、ただアジア人とか女性とかそういうレッテルだけを見られていて、これは私自身を見てくれてるのかなって。何か違う気がする、うれしくない、なんだろうこの気持ちは……ってなっていたときに、なんかもういいよ、旅行こうぜ!って感じで旅に出たんです。もう自分たちのやり方で自由に遊ぼう!みたいな気持ちで。そしたら、こんなにナチュラルでいい写真が撮れたんです。無理をしていると写真には写ってしまうし、例え他の人にはわからなくても、自分ではわかるんです、この写真の私はハッピーじゃないって。でも、この写真に写ってる私は、全部本当にその時の等身大の私でした。

素のまま、そのままの水原希子が写っていたと。

水原:こんな写真は、撮ろうと思ってもなかなか撮れるものじゃないんですよね。私は長く表現する業界にいますけど、こういう写真を残せた、こんな作品をモニカと一緒に作れたっていうのはすごく特別なことだと思います。

茂木:私たちも写真集を作ろうってなったときに、自分たちでPARCOに行ったんです、この写真どうですかって。そしたら、本当にレイアウトとかも全部任せてもらって、100%自由にさせてもらえた。それも、やればできることなんだなって。

写真集の企画を自らPARCOに持ち込みされたんですか!?

水原:この写真をどうやって世に出そうか考えていた時に、PARCOが過去に出版した本をたくさん持っていて、そのどれもが本当に素晴らしくてアート性の高いもので、アーティストに対するリスペクトを感じたんですね。だから、一度PARCOに相談してみようって。そしたら、サポートはしてくれるけど私たちに自由を与えてくれて、なんの規制もなく、すべて任せてくださって。本当に感謝しかないというか、心強かったですね。

茂木:展示もね、自分たちでやってるから。だから、自分たちの言葉でちゃんと話すことができる。

心の赴くままに行動した先で、素晴らしい景色に出合えたから。

お2人の想いがちゃんとカタチとして表現された写真展になっているんですね。2017年のロードトリップはとても特別な旅だったと思うのですが、旅の前後で変わったことはありますか?

水原:私はすごく、そのままでいいんだって思いました。写真にはその時の気持ちやエモーションが全部出るから、この写真が全てを物語ってると思います。誰かに合わせたり、惑わされたりすることもあるけど、自分のままでいいんだよって。私たちは自分の感覚で、自分の心の赴くままに行動して、その先で素晴らしい光景に出合うことができたので。

茂木:私はこの写真から、自信をもらいました。カメラマンとモデルのconfidence、trustがないと撮れない写真だった。特にヌードを自然に撮るのは、お互いの信頼関係がすごく大事。

水原:それはすごく感じましたね。モニカは私のことを全部わかってるし、私もモニカのことをわかってる。だから写真を撮るときに、なにもない。全部ありのままを撮ってくれてるっていう感覚になるから、本当にすべてをゆだねられる。100%信頼してる。

茂木:このあとから一緒にたくさん仕事もしたけど、その土台になったよね。

水原:この写真展の作品はプライベートな旅で撮ったものですけど、モニカとだったらバシッとスタジオでポーズを決めて撮ったとしても、自然なんですよ、ありのまま。

モニカさんが撮る水原さんの写真が、とても特別な写真なんだとわかりました。最後に、『夢の続き Dream Blue』に込めた意味を教えてください。

水原:振り返ると、この旅の時間は、私たちにとって夢のような時間でした。自由にどこにでも行けたし、奇跡みたいなこともたくさん起きました。素敵な景色だったり、マジカルなタイミングで写真が撮れたり、いきなり雪山が現れたり。旅の間ずっと空が青くて、水も青くて、いろいろな美しい青に出合ったので、Dream Blueと付けました。

旅は予想もしなかったことばかりで、今思えば夢の中にいたような感覚。でもそれは、夢で終わるのではなくて、人生はそういう時間が続いていくと信じています。自分が信じれば、夢はずっと続いていく、そんな思いを「夢の続き」に込めました。この写真展を見てくれた人に、自分のやりたいことをほかの人に惑わされずにやってほしい、きっとできるよってことを感じてもらえたらうれしいですね。


INFORMATION

 
水原希子・茂木モニカ 写真展
「夢の続き DREAM BLUE」

会期: 2022年5月20日(金) ~ 6月5日(日) 10:00~20:00
会場: PARCO GALLERY (大阪市中央区心斎橋筋1-8-3 心斎橋PARCO 14F)
入場料: 1,000円(税込)
※詳しくは心斎橋PARCO公式サイトをご確認ください。

主催・企画制作: PARCO
協力: Office Kiko
展覧会公式サイト: PARCO ART

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