Interview & Writing
前出 明弘
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依藤 寛人

<LEARNERS>や<湘南乃風>をはじめとする人気アーティストとコラボしたり、原宿の『kit gallery』での個展開催、タワレコ渋谷店でのポップアップなどなど、21歳にして日本のカルチャーシーンの最前線にくい込みながら活躍しているイラストレーターのIBUさん。幼少期の環境から生まれた個性的な作風と独特のキッチュなタッチは、見た瞬間から作品の世界観に引き込まれてしまうものばかりです。年齢なんて関係なしに、自分のやりたいこと、なりたい姿に対してとにかく貪欲なまでに突き進んできた彼女に、これまでとこれからのことについて聞いてきました!ずっと想いを抱き続けてるあの憧れのバンドとのコラボも、近いうちに叶うんじゃないかなって思います!!

アルバム『THE GIFT』のジャケットを見て、「私もこんな風にバンドのジャケット描きたい!横山健さんやハイスタと仕事したい!」って思ったんです。

個展や全国各地でのポップアップ、ブランドへのイラスト提供など、弱冠21歳ながらイラストレーターとして大活躍のIBUさんですが、いつ頃からイラストを描き始めたんですか?

幼稚園くらいの頃からですね。絵を描くのが大好きだったので、昔は絵本作家になりたいと思っていました。

お絵描きがだんだん発展していったんですね!IBUさんの作品からは80’sや90’sのダウンタウンカルチャーやアメリカのヴィンテージトイのような雰囲気をすごく感じますが、その作風も昔からなんですか?

パパがヴィンテージトイのお店をしていて、バンドも大好きだったので、その影響をもろに受けてますね。家にはヴィンテージのアメリカントイがあふれてるし、音楽に触れる機会も多くて、いつの間にか私自身もハマってました。往年のマクドナルドのキャラクターやキャスパー、マイペットモンスターは今でも大好きですね。だから、物心ついた時からポップなものしか描いてないかも。今の自分の作風も、高校生くらいから変わってません。

アメリカのカルチャーにどっぷり浸かってきたと。自分の作風を模索する人は多いと思いますけど、好きなものを描き続けてきたってのは、ある意味では理想的ですよね。

他にもタトゥーのデザイン例が描かれてるフラッシュも好きだし、古着やスケートボードとか、今の作風は自分のいろんな好きなものがミックスされてる感じです。

なるほど。キッチュなタッチだったり、ポップさとカルチャー感がミックスされた作風なのは、そんな由縁があるからなんですね。高校生の頃には自分の作風が確立されてたそうですが、「イラストで食べていく!」的な決意もあったんですが?

そうですね。イラストで食べていくというよりも、自分はやっぱり絵だなと。「自分の絵で好きなバンドやカルチャーに関わっていきたい!」そんな想いがあったんです。

そう想うきっかけがあったんですか?

横山健さんが大好きすぎて…。オールドのスケートボード系のTシャツにディッキーズ穿いて、足元はバンズ。タトゥーも入ってて、その姿がほんとかっこいいなと。初めて<Ken Band>のライブに行って衝撃を受けて、そこから<Hi-STANDARD(略:ハイスタ>の存在を知り、どんどんのめり込んでいきました。私は2001年生まれなんですけど、ハイスタが活動休止したのが2000年。生でライブが観れないことをずっと悔やんでたんですが、高校2年の時に発売されたアルバム『THE GIFT』のジャケットを見て、「私もこんな風にバンドのジャケット描きたい!横山健さんやハイスタと仕事したい!」って思ったんです。しかも曲を聴いてみると、自分自身や自分の才能に対する歌詞があって、「私はやっぱり絵やな」と再認識させてもらえて。ちょうど進路に迷ってた時期で「どうしよかな?」と考えてた時期だったので、もっと絵を勉強するために芸大に行くことを決心したんです。だから、イラストレータとしての今があるのは横山健さんのおかげでもあるなと思ってますね。

好きなことが、未来へ進む自分の意志に変わった瞬間だったんですね。ちなみに『THE GIFT』の発売後に全国ツアーもありましたが、行ったんですか?

もちろん!大阪、広島、福島にも行きましたし、翌年の『AIR JAM 2018』にも参戦しました!ハイスタや『AIR JAM』世代の人って、当時は高校生くらいだったと思うので、私も高校生の時に生で観れてほんとに感動しましたね。ハイスタが好きすぎて、高校の美術の授業でハイスタの絵本を作ってたくらいですから(笑)。そのタイミングで活動再開してくれたハイスタには勝手にすごい縁を感じてますし、今でも変わらず「一緒に仕事したい!」って想いは持ち続けてますね。

ただ漠然とですけど、「19歳までには一発かましたい!」という野望があった。

横山健さんやハイスタの影響もあり、本格的に絵を学ぶために芸大に進学しましたが、学校生活はどうでしたか?

大阪芸術大学に進学したんですが、実は半年でドロップアウトしちゃって…(笑)

半年ですか!?決断が早すぎというか…(笑)。その理由は?

まず、シンプルに遠かった(笑)。それと、入学したタイミングから仕事がすごく忙しくなってきたんです。正直、学校で勉強するよりも仕事してる方が楽しくて…。

その頃から既にイラストレーターとして活動してたんですか?

高校生の頃から知り合いのお店のTシャツをデザインしたりしてたんです。ただ趣味で描くだけじゃなくて、描いたものはインスタなどのSNSにアップして発信してたし、ステッカーを作っていろんな人に渡してました。

自分でできる行動は既に起こしてたんですね!

やっぱりつながりを作ることが大事だと思ってましたし、ただ漠然とですけど「19歳までには一発かましたい!」という野望もあったんです(笑)

漠然だけど、明確ではありますよね。一発かますってことは(笑)

高校生の頃からそんな欲もあって、インスタのフォロワー数も頑張って増やしたいと思ってたんです。

それで、一発かませたんですか?

インスタでブランド展開してるところのTシャツを作った時に、それがちょっとバズってフォロワーも一気に増えたんです。それをきっかけにどんどん仕事の依頼も来るようになり、忙しくなって学校にも行けなくなって…。

「人を惹きつけるかわいい絵を描くけど、本人も言ってる通りまだまだ発展途上。とにかく素直で、絵に対して真っ直ぐな子なんです」と『SUNNY DAZE』オーナーの山口さん。IBUさんの良き理解者の1人です。

なるほど。そうなるとやっぱり好きな方を選んじゃいますよね。でも、行動してきたからこその結果ですが、トントン拍子すぎて不安になりませんでした?

正直、今も不安しかないですよ。まだまだ若いし、分からないことの方が多いですし。ただ、同年代で相談できる子もなかなかいないから、周囲の大人の方々にいつも相談に乗ってもらったり、支えてもらってますね。今日、撮影で使わせてもらってる『SUNNY DAZE』の山口さんもその1人。以前に展示させてもらった時も、いろいろアドバイスしてもらえたのでほんと周りの人に恵まれてるなと。感謝しかないですね。

『SUNNY DAZE』とコラボしたソックスもお店では販売中。

確かに同年代は学生ですし、社会人の方がいたとしてもイラストレーターとして働いてるのは稀すぎますもんね。今、イラストレーターとして活動を始めて3年目になりますが、壁にブチ当たったり、描くことがしんどくなる時ってありますか?

基本的に負けず嫌いなんです、昔から。「どうせ無理!」なんて言われたら逆に燃えるし、壁にブチ当たるような場面なら「絶対にがんばったらできる!これは自分への試練だ!信じてやるしかない!」って思うようにしてます。精神論なんですけど、そのマインドの持ち方が大切だなと。それに描くことが好きで続けてるのに、しんどいと思うこと自体がイヤなんです。仕事で好きな絵を描いて、お金までいただいてるし、バイトもしてない。絵だけで生活できてるなんて当たり前じゃないですからね!それを忘れたらアカンと思ってます!

今の状況への感謝はもちろん、自分の立ち位置を把握してるからこそですね。

「こんなところで落ちてたらアカンやろ!まだまだ上を目指してるやろ!」ってね。

横山健さんやハイスタをはじめ、好きなバンドと仕事するっていう大きな目標もありますしね!

そうですね。そういう目標設定は常に自分の中にありますし、いつもイメージするようにしてます。「こんな仕事をして、こんな自分になっていこう!」という感じで。後は、いつも公言すること。どこで誰がつながってるか分からないし、やっぱり口に出さないとつながりもリアルに生まれてきませんからね。

自分で自分に期待することって大事なことだし、マインドも含めて好転するきっかけを生み出してるのかもしれませんね。イラストレーターとしてこれまでいろんな仕事をしてきてますが、自分のクオリティに納得する判断基準ってありますか?ここからはOKだけど、これ以下はダメ的な。

そこは自分でジャッジしないようにしてますね。個展やポップアップでは自分の好きなものを描いてるので、そこを突き詰めることを重要視してますが、クライアントワークはまた別かなと。クライアントの要望を絵に落とし込み、求められた以上のクオリティを出すために描いてますが、判断するのは相手側ですから。自分ではジャッジせず、描いたものをまず見てもらうようにしてます。そこでの反応を見て、あんまりそうなら描き直したり、OKならさらにブラッシュアップしていくような感じです。

絵に対する向き合い方のポジショニングを変えていくんですね。

自分で客観視もしますが、やっぱり反応を見るのが一番かなと思うので。ただ、クライアントワークでもグッズ制作とかになると、自分の絵が入ったものが一番売れるようにしたい!その気持ちはめちゃくちゃ強いと思います。

ちなみに絵を仕上げていく際は、ラフからしっかり描き込む感じですか?

自分の絵はそもそもそこまで描き込む系ではないから、ラフも思いついた時に描く感じですね。いつでもどこでも仕事したいタイプだし、手帳とパッドは絶対に持ち歩くようにしてます。常に考えてるので、「あ、今や!」みたいに急に思いついちゃうんです。特に移動中の時に思いつくことが多いかもしれません。自分ではそんなに意識してませんが、多分、気持ち的にも変化があるんでしょうね。でも、ラフと本番の作業は別の日にしていて、日々思いついたラフを整理して仕上げるようにしてます。

IBUさんのお話を聞いてると、マインドのセットやコントロールが絵を描くことと密接につながってる気がします。普段のリフレッシュ方法とかあれば教えてください!

うーん、最近はほんとに絵しか描いてなくて(笑)。アメ村にも以前ほどは来れてないし、全然遊べてないんですよね。でも、たまに山登りしたり、自転車オタクのパパから勧められた<SURLY>のチャリに乗ってる時はリフレッシュ感あるかも。それと最近は個展やポップアップなどで全国各地に行かせてもらってるので、仕事ではあるけど自分の中ではリフレッシュできてる瞬間でもありますね。

<LEARNERS>のチャーべさんからDM来た瞬間は、「ヤバッ!」ってめちゃ叫んでしまいました(笑)

少しお話にも出てきましたが、最近は個展やポップアップなどですごく精力的に動かれてますよね。しかも、IBUさんの初個展が原宿の『kit gallery』。どんな経緯で個展の開催に至ったんですか?

<LEARNERS>が大好きで、昨年の3月にライブに行ったんです。その時、友だちに「せっかくやからチャーベさん(松田“CHABE”岳二)に絵を渡しーや!」と言われて。タトゥーのフラッシュっぽいイラストを思いきって渡してみたんですが、それをすごく気に入っていただけたんです!その反応だけでもうれしかったのに、後日インスタのDMで「バンドのキャラクターを作ってほしい!」と頼まれることになって…。

直々にオファーが届いたんですね!

DM来た瞬間は「ヤバッ!」って、めちゃ叫んでしまいました(笑)

そりゃ叫びたくなりますよ!

大好きなバンドとの仕事は<LEARNERS>が初めてだったので、1つ夢が叶ったなと。しかも、最初が<LEARNERS>って贅沢すぎますよね。チャーべさんも憧れの存在でレジェンドだし、めちゃテンション上がりっぱなしでした。

そこでチャーべさんとつながり、『kit gallery』での個展開催が実現できたんですね。

そうですね。<LEARNERS>のキャラクターを描かせてもらえたことで、たくさんの人に絵を見てもらうきっかけをチャーべさんに作っていただけました。そして、東京に行った時に「『kit gallery』で展示させてください!」とお願いしたら、開催できるように段取りしていただけて。出会ったばかりの若い子にチャンスを投げてくれる大人って、やっぱりすごい!心からそう思いましたね。

初個展が『kit gallery』ってすごすぎますが、IBUさん自身の手応えはどうでしたか?

今年の1月に個展をさせていただいたんですが、ほぼ新作を描いて挑みました。チャーべさんの知り合いや『kit gallery』のファンの方々、ほんとにたくさんの人に見てもらえて、私自身も刺激を受けっぱなしの状態でしたね。絵の技術的な部分はまだまだだけど、イラストレーターとしては1つのターニングポイントになったと思ってます。

実績としてもマインドとしても、また次のステップに進む大きなターニングポイントだったかもしれませんね。今年は『kit gallery』を皮切りに個展やポップアップなどもすごく多い印象です。IBUさん自身も会期中などは現地に滞在されていますが、そこでの人との出会いをどのように受け止めてますか?

現地にいるのは、やっぱり見に来てくれる人と出会えるのがほんとに楽しいからなんです。その出会いも、やっぱり何かの縁ですからね。インスタでも作品などを発信してるので見ることはできますが、やっぱり原画を見てもらった反応を体感できるのはその場しかないので。ただ、あんまり近くで見られると恥ずかしさもあるんですけどね。

恥ずかしいんですか?

自分よりうまい人はいっぱいいますから。キャンバスに描き始めてからまだ1年も満たないし、勉強しようと思った大学も半年でドロップアウトしたから基礎的な部分が抜けてる気もしてて…。

もちろん優れた画力の人はたくさんいるかもしれませんが、人を惹きつける作品ってそこだけじゃないと思います。IBUさんの作品って、ポップさやカルチャーの絶妙なミックス感だったり、1枚の絵からストーリーを読み解きたくなる世界観だったり、そうした部分がすごくいいなと。

ありがとうございます!基本的にはこれまで描いてきた絵が自分の軸になるんですけど、最近は作品の幅を広げるためにもいろんなテイストの絵を描くようにしてるんです。中でも特に力を入れて勉強してるのが、タトゥーのフラッシュ系のイラストですね。

タトゥーのデザインベースになるようなやつですよね。IBUさん自身もいくつかタトゥーが入ってますね。

昔からタトゥーが大好きで、20歳の誕生日の翌日に入れました。最初に入れたのは、つがいのツバメです。

タトゥーにはいろいろ意味があると聞きますが、なぜツバメを?

つがいのツバメは家族愛を意味するものなんです。ツバメは昔から神聖視されてるもので、飛び回っていても必ず戻ってくるじゃないですか。そういった意味も含めて、最初に入れるのはつがいのツバメって決めてましたね。

なるほど。ちなみに、自身の絵を入れたりしないんですか?

それはないです(笑)。自分の絵は入れたくないですけど、もし他の人が自分の絵を入れてくれるとなればすごくうれしい。やっぱり一生残るものだし、その人のために一生ものを描けるチャンスがあれば、ほんと素敵なことだなと思いますね。

確かに、消費されていくものじゃないですし。その人のために一生ものの絵を描くなんて、すごく意義も感じます!では最後に、IBUさんがこれからしたいことや夢などを改めて公言していただければ!!

横山健さんやハイスタをはじめ、自分の大好きなバンドと一緒に仕事がしたい!これからも自分の大好きなカルチャーに関われるイラストレーターになっていきたい!後は、めちゃくちゃ大きい作品にもチャレンジしたいですね。例えば大きな看板や、誰の目にもつくようなものとか。他にも、意外性のあるコラボとかにもチャレンジしたいです。「あ、IBUはあんなところともコラボしてるんだ!」と思ってもらえるような、今までの私らしさを超えていけるコラボができればなと。そんな夢を叶えていくためにも、いろんな出会いや縁を大切にしながらどんどんステップアップしていきたいと思ってます!!


<IBUさんがお気に入りのお店>

SUNNY DAZE(大阪市浪速区幸町)
展示させてもらったり、アドバイスをもらったり、いつもお世話になってるお店。アメリカンな雰囲気がカッコよくて、フードもめちゃおいしいです!

GIANT BABY(大阪市西区南堀江)
よく行く古着屋さんです。スケートものやバンドのアイテムなどが豊富で、スタッフさんのトークも抜群。カルチャーがしっかりあるお店です!

Profile

IBU

2001年生まれ。大阪府出身。幼少期から往年のアメリカントイやダウンタウンカルチャーの影響を受けて育ち、ポップさとカルチャー感をミックスしたインパクトのあるキャラクターを描くイラストレーター&デザイナー。LEARNERSや湘南乃風をはじめとするアーティストにも作品を提供し、アパレル・映画・音楽など幅広いシーンで活躍している。

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