今年もいよいよ始まる心斎橋PARCO『カレー大作戦』! コラボカレーが登場した『MASHUP FESTIVAL kobe』のプレイベントに潜入し、先行レポート!
『カレー大作戦』の仕掛け人・三嶋達也さんにインタビュー! 「1日も食べ逃すことのないように、気合いを入れて来てほしい」

ここからは、『カレー大作戦』の仕掛け人である三嶋達也さんにインタビュー。『カレー大作戦』誕生の背景と、10月10日(金)からスタートする第5回の見どころなどを伺いました。
2021年が第一回とのことですが、そもそもこのイベントはどんな経緯で始まったのでしょうか?
心斎橋PARCOの方から、カレーイベントをプロデュースしてほしいという打診があったのがきっかけです。でも普通にカレー屋さんが1店舗だけ出店しても面白みがないし、インパクトもないなと。そこで、2店舗のカレーをそれこそマッシュアップして、より面白く、美味しくしていくっていうところで始めたイベントなんです。大阪といえばカレーっていう名物になりかかってるのを、ちゃんとみんなに知っていただこうと。
2店舗が一皿を作る『カレー大作戦』独自のコラボスタイルは、そうやって誕生したんですね。
それまでも、あいがけという形で持ち寄りみたいなのはあったんですよ。それぞれのお店のカレーを2つかけてっていう感じで。でも『カレー大作戦』は2店舗がテーマを持って、「今までにないものを」というオルタナティブな感覚でひとつの皿を作っていくっていうのを、5年かけて育ててきました。

たしかにコラボカレーは単純なあいがけとは違って、まったくの別世界を見せてくれる気がします。
もともとキャラクター性のある2店舗を掛け合わせることで、既存のものから新しいものができる。そこが一番の特徴かなと思います。
カレーのポテンシャルってすごいものがありますね。
カレーはスパイスを使ったぶっかけ飯と言えばそうなんですけど、それだけじゃない。五味って味の要素がありますよね。一皿にあれがバラバラに置かれていて、混ぜながら食べ進めるうちに、味のレイヤーみたいな感じになるんです。一皿でコース料理まではいかないですけど、いろいろな料理を楽しめるっていう。今回は11日間開催するんですが、毎日全部違う食べ物になると思います。
カレーと一口に言っても、全く違う料理が連日登場するんですね。お店はどんなふうに選んでおられるんですか?
最初の年は、僕が直接2店舗を選んでお願いすることが多かったですね。狭いブースで2人になるので、あまり接点のない人でもやりにくいかなと思うので、ここ数年はこの人に出てほしいなって人に声をかけて、その人が誰か一緒にやりたい人がいれば相談しながら決めていく感じです。

なるほど、ある程度関係性があるほうが、お互いの個性を活かしやすいんですね。
もちろん、いつも一緒にやってる組み合わせばかりにはしません。新鮮さを大事にしてますね。前年が終わったタイミングで「来年はどうする?」って話を少しずつして、1年かけて組み合わせを練り上げていきます。ここだけでしか食べられない特別感や、遠方から来てもらう店舗との組み合わせなど、イベントならではの楽しさは意識してますね。
本当にカレー好きにとってはたまらない夢のようなイベントですが、回を重ねることで変わってきた部分はありますか?
完成度はどんどん高くなってると思います。最初のほうはやっぱり持ち寄りみたいな感覚のところもあったんですけど、その中でもすごいことをやるお店があったんですよ。例えば、堕天使かっきーとバガワーンカレーは、一皿3,000円で音符をイメージしたプレートを作ったんです。これとこれを混ぜたらCのコードになる、みたいな。
音符をスパイスで表現するということですか?
スパイスは全部香りの種類が違うから、それを組み合わせて音階を作るようなイメージで。これを加えると、ちょっと半音上がる、みたいな(笑)。そんなすごいことをやったもんだから、周りのお店も負けてられないなって感じで、すごいテーマとコンセプトと作ってくれるようになって。
あいがけどころの話じゃないですね。
想像を超える変態ぶりでした(笑)。でも、スパイスカレーと音楽を作る時の頭の使い方は似てるなと前から思ってたんです。僕もバンドをやってて曲を作ってたので。ミュージシャンでカレーをやってる人が多いのは、そこには何か親和性があるのかなと思いますね。

カレーと音楽には共通点があるんですね。これまでに、2店舗がコラボして一皿を作るようなスタイルはあったんですか?
仲の良いカレー屋さん同士で、周年だから一緒にやろうみたいな企画は昔からありました。でも、ただそれぞれの得意なカレーを出し合って「混ぜても美味しいね」くらいの感じで。お互いがテーマを決めて、最終的な完成形から逆算して一緒に作る、というスタイルはなかったと思います。
ただ持ち寄るんじゃなくて、一緒に作るっていうところがすごく面白い試みですよね。
やっぱり大阪のスパイスカレーの要素のひとつとして、“おもろい”がないとダメなんです。美味しいだけで終わってたらダメで、発見だったり没入だったり、もうひとつなにか超えていくものじゃないと。

プロデュースされている立場でも、やっぱり予想を超えるような瞬間に出会うことってあるんでしょうか?
ありますね。選んでいるお店も創作系ばかりじゃなくて、わりとオーソドックスな南インド系のカレー屋さんにも声を掛けているんですけど、ちゃんと創意工夫してくれるんです。去年も、南インドと北インドのカレー屋さんがコラボして一皿を作ることで、インド大陸プレートができたんですよ。それって、普通ならひとつのお店では食べられないじゃないですか。
そうですよね。南インドカレー屋さんで北インドカレーは食べられない…。
でも、ここではそれが食べられて、しかもめちゃくちゃ美味い!ってなるんです。そういう面白さやミラクルがここにはある。カレー好きの夢が集まっているコラボなので。どのお店も、次は何ができるかっていうところを探ってきますし、やれることはまだまだあります。
カレーはやっぱり奥が深いというか、可能性がすごいですね。
絵画とかもそうだと思うんですけど、描き始めた瞬間から過去になっていくじゃないですか。最初に浮かんだイメージを形にしていくわけですけど、その過程でどんどん過去になっていく。できあがったときには、もう前の自分がイメージしたものになってるんです。だから、その時点で、また次のことを考え始めるっていう。

だから回を重ねるごとに、完成度が高くなっていくと。でもこのコラボスタイルは、大発明ですよね。
ここまで心斎橋PARCOと一緒に作り上げてきた形なので、フォーマットだけを取り入れても同じようにはならないと思います。出店してくれるカレー屋さんも、限られた条件の中でどう工夫するかを考えてくれて、毎回その想像を超えるものを出してくれるんです。料理人というより、表現者としての意識の高さをすごく感じますね。僕自身も、有名店同士を組み合わせて「このコラボすごいでしょ?」と見せるよりは、それぞれのお店の個性が際立って、仕上がったカレーが純粋に面白い、というところを大切にしています。
積み重ねがあってこそなんですね。いま三嶋さんご自身から見て、大阪のカレーシーンはどんなふうに映っていますか?
僕的にはまだブームにすらなってないと思う。ブームって、それこそ一時のタピオカみたいに、みんなが知ってるものだと思うんですよ。でもスパイスカレーはそこまでじゃない。だからまだ伸びしろがあるんです。
つまり、まだ本当の意味でのブームには達していないと。
実際、いつもの人気店がずっと人気のままで、そこをブレイクスルーできてない。これまでにない発想を持った若手が、なかなか出てきにくい状況にあるんです。ラーメンってすごく身近で、誰でも食べるものになってますよね。カレーもラーメン並みに「みんなが当たり前に好き」な存在になれば、もっと自由な発想で新しいことをやる人が出てくるはずなんです。

そういう人はまだ出て来ていないですか?
今は、どこか“まとまりすぎている”印象があります。美味しいけど印象に残らない、器用貧乏というか、小ぎれいにまとまったカレーが多い。カレーって実際はハードルの低い料理だから、そこそこ美味しく作れるけど、突出した個性が見えにくいんですよね。
さっき仰ったように、ただ美味しいだけではダメなんですね。
スパイスカレーって昔は本当にバラバラで「これがスパイスカレーです!」って言える基準もなかったんです。でも最近は、見た目とか味のイメージがなんとなく固まってきて、「普通」と「普通じゃない」の境界が見え始めた感じですね。だからこれからは、その枠を壊すような、新しい発想の人が出てきてほしいなと思います。
なるほど、そういう意味でも『カレー大作戦』の存在は重要ですね。
そうですね。いい意味で、既存の世界を壊すような人が出てきたらいいですね。

では最後に、今回の『カレー大作戦』の注目ポイントがあれば教えてください。
今年は11日間やりますが、1組1日しか出店しないので、その日を逃すともう食べられないんです。11日間毎日違うカレーが登場するので、ぜひ1日も食べ逃すことのないように、気合いを入れて来てほしいです。1日だけの出店にすることで、普段はイベントにはなかなか出店しないレアなお店も参加してくれています。本当にもう二度と食べれないカレーたちですから、大阪のカレーってこんなにすごいことになってんねやっていうのを体感していただけたらなと。
心斎橋PARCOのテナントさんもいろんなカレーを出されてるので、スタンプラリーもぜひ楽しんでください。あと、今回はドリンクもぜひ。クラフトコーラの「伊良コーラ」と、鹿児島の焼酎蔵「大山甚七商店」がコラボした「伊良コーラ酎」も登場するので、ぜひカレーと一緒にお酒も味わってもらえたら!