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金輪際セメ子
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依藤 寛人

上方が発祥の地と言われる落語。何かと漫才に押され気味ではありますが、最近は若手の台頭も著しく、カフェなどを会場にした小さな落語会も多く開かれています。そんな上方落語会における一大イベントが、ただいま絶賛開催中の「上方落語若手噺家グランプリ」。上方落語協会に所属する入門4年~18年の若手が頂点をめざし、上方落語の聖地・天満天神繁昌亭で火花を散らして戦います。第8回となる今回は定員いっぱいの40名が出場、6月7日から4夜にわたって予選が行われました。そして8月23日(火)、予選を勝ち抜いた9名が出場する決勝戦で8代目のグランプリが決定、いわば明日の上方落語会を背負う若手スターが誕生するわけです。そこで、昨年大会史上初の女性受賞者(準優勝)となり、単独公演は即完売の注目株・桂二葉さんも登場する予選第2夜にお邪魔してきました!落語ど素人の勝手な感想も合わせてお届けします。

戦いの舞台は、上方落語の聖地・天満天神繁昌亭。

舞台となるのは、大阪天満宮の北鳥居を出てすぐの天満天神繁昌亭。六代桂文枝さんの肝煎りで2006年に誕生した、上方落語の定席(常設寄席)です。それまで大阪には約60年間も定席がなく、いつでも落語を聴くことができる演芸場の復活は上方落語会にとって長年の悲願だったそうです。誕生から16年、今では上方落語の聖地といわれるまでに。大阪の新名所として、コロナ前までは観光客も多く訪れる人気スポットとなっていました。

さて、「上方落語若手噺家グランプリ」は、この日の夜席。雨がしとしと降る中、会場前は開演を待ち侘びるファンでいっぱいです。前売りチケットも完売でした。

1・2階合わせて約200席の劇場はぎっしり満席、梅雨の湿気も相まって、むんむんとした熱気に包まれています。

司会の笑福亭銀瓶さん。サングラスをかけた姿は、最後列から見るともうそのまんまやしきたかじんでした。

第1夜から第4夜まで毎回10名が登場、各予選会上位2名と次点枠から1名を選出し、合計9名が決勝に進みます。司会を務めるのは、上方落語界のやしきたかじんこと笑福亭銀瓶さん。そして審査員は、予選4夜すべてを審査する桂枝女太さんほか、桂文華さん、桂あさ吉さんの3名です。持ち時間は1人8~10分、足りなくてもオーバーしても減点されます。ちなみに出演順は、当日順番で決められます。

舟歌からラップまで! 振り幅が広すぎる前半戦。

桂文五郎さん。舟歌の場面では、舞台袖にいるほかの出場者さんが鳴り物で協力。

出囃子が鳴って登場したのは、トップバッターの桂文五郎さん。演目の「三十石」は、京と大坂を結ぶ三十石舟の船上を舞台にした古典です。舟歌や、はめもの(囃子)もあり、古典落語を聴いてます!という満足感があります。艶っぽい場面もあったりで、粋な感じでした。

調子のええことばっかり言う太鼓持ちを、茶目っ気たっぷりに演じる桂小留さん。

二人目は、桂小留さん。お名前、ちろると読みます。演目は「茶目八」。口から出まかせばっかりしゃべる太鼓持ちが、ひいきの旦那のおめかけさんの家でえらい目に遭う話です。ご本人のキャラにもすごくあってて、古典ですがめっちゃポップ!いっぱい笑いました。

めっちゃパワフル落語な笑福亭大智さんは、マッチョなパワーで会場を圧倒。

三人目は、笑福亭大智さん。めっちゃ声が通る!!なんか圧が強い!!枕のエピソードから察するに、元ヤンの方でしょうか。演目の「天災」は、短気でけんかっ早くて、嫁を殴り母親を蹴る男が主人公。キャラそのまま、ぐいぐい力業で引っ張っていく感じでした。面白かった!

自作の新作落語をかける桂文路郎さん。じわじわ面白くて、私はこのネタ好きでした。

四人目は、桂文路郎さん。2015年入門の若手で、演目は「あんあん」。雑な人をつぶあん派、繊細な人をこしあん派にわける新作落語です。PTAの会議を無断欠席するがさつな人が「つぶあん派よあの人!」とディスられてましたが、まさに私はこの日PTAの会議を欠席してこの場にいたので、私つぶあん派やわ……と肩身の狭い思いで見てました。

いろいろな人物を演じ分ける月亭太遊さん。寄席でラップを聴くとは思いませんでした。

五人目は、月亭太遊さん。演目は「Chi~No~Re:」。農村のイベントのステージに、いろいろな人が上がる話。ヘビメタ、村下孝蔵、民謡などを歌う人が次々と現れ、最後はMC村八分によるコール&レスポンス! 声は出せませんが、 盛り上がりました。楽しかった!

5人が終わったところで、いったん休憩に入ります。座って聴いてるだけのくせに、なぜか私ものどがカラカラ。水分補給して、後半戦に備えます。

正統派と個性派が、しのぎを削る後半戦。

桂ぽんぽ娘さん。都合のいい理由をつけて不倫相手に電話をするくだりが最高でした。

後半トップの六人目は、桂ぽんぽ娘さん。下ネタ満載のピンク落語でおなじみの方です。今回の演目「シングル・デブ」は、クリスマスイブに不倫相手にふられて街をさまよう女性の話。めちゃくちゃ面白かったです。途中で予想外にしんみりしたりして。こんなに上手な人やったんや!と驚きました。

桂二葉さん。体全体で表現されていて、華奢な方ですが圧倒的なパワーがありました。

そして七人目は、昨年準優勝の桂二葉さん。演目の「がまの油」は、縁日で口上を述べ立てて、がまの油を売る男が主人公。前半の立て板に水のようになめらかな口上もお見事ながら、後半の酔っぱらいパートがすごくて、酔いっぷりがリアルなうえに愛嬌もあって、めっちゃくちゃ笑いました。余計なことを考える暇もなく、隅から隅まで面白かった。

じっくり聞かせる正統派タイプ(と私は思う)桂九ノ一さん。黒い着物に白い羽織が素敵でした!

八人目は、桂九ノ一さんの「正月丁稚」。商家の正月を舞台に、丁稚がいろいろやらかす話です。古典を丁寧に演じる正統派な印象。ベテランさんかと思いきや、2006年入門の26歳と後で知ってびっくりしました。

色気があって洒脱な感じの林家染吉さん。着物もおしゃれです。

九人目は、林家染吉さん。演目の「借家怪談」は、長屋の住人たちが空き部屋を借りに来た人を幽霊話でビビらせて、借り手がつかないようにする話。語り口がこなれていて粋さもあって、古典でも現代的なノリがあって好きでした。

「ん廻し」の田楽食いを演じる桂治門さん。落語に出てくる食べ物ってだいたい美味しそうです。

そしてトリを飾るのは、桂治門さん。ふだんは前のほうに出るので、最後は緊張しますとのこと。演目は「ん廻し」。“ん”がつく言葉をひとつ言うごとに田楽が1本食べられるという話です。素人目にも、上手な人なんやな、というのがわかります。聴いてるうちに、田楽が食べたくなりました。

いよいよ審査発表!8月の決勝に進める2名は誰?

さあ、これで10名全員の出番が終わりました。このあと審査発表ですが、私の順位では1位が二葉さん、2位が染吉さん。さて結果はいかに……。

左から、桂枝女太さん、桂文華さん、桂あさ吉さん。文華さんは「審査員を恨まんといてくれよ!」とコメント。

舞台に上がった審査員の桂枝女太さんは「もう出る人みんな同じネタにしてほしいわ」と、古典と新作が混在する中での審査の難しさを嘆きつつ、「先週(予選第一夜)もそうでしたが、すごく楽しめました。話の後半になると点数つけなあかんから笑えんようになるんですけど、それまではほんまに楽しませてもらいました」と若手を労います。

第一位に選ばれた桂二葉さん(左)と、月亭太遊さん(右)。

では、いよいよ審査結果の発表です。第一位は、桂二葉さん(予想が当たりました!)。第二位は、月亭太遊さん。そしてなんと、決勝に進める可能性を残した次点が桂文五郎さんと桂治門さんのお2人。本来は1人ですが同点で2人が選ばれました。

唯一タイムオーバーで計15点減点されていたと聞いて、桂ぽんぽ娘さんが荒ぶる場面も。

「接戦で10名ほとんど点差がない」と桂枝女太さんがおっしゃっていましたが、本当に10名それぞれに違った魅力があり、落語ってこんなに笑えるのか!というほど笑わせてもらいました。あと、余談ですが、みなさん着物がとてもおしゃれです。
その中で第一位になった桂二葉さんは、ど素人の私から見ても圧倒的に面白かったです。うまいな~と思わせる隙もなく、うまさを忘れさせる面白さでした。もうすでにかなり人気の方ですが、もっともっと見たい!と思ったので、これから推します。今この距離で会える推しって、ちょっと貴重じゃないでしょうか。

そして6月28日に予選第4夜が終わり、ついに決勝進出9名が決定しました!!

第1夜 露の紫/笑福亭生寿
第2夜 桂二葉/月亭太遊
第3夜 桂りょうば/桂三実
第4夜 桂そうば/月亭希遊
笑福亭智丸(予選4回の次点6名の中から選出)

個人的には、宝塚ファンの笑福亭生寿さん、第2夜でめっちゃ笑わせてもらった桂二葉さん、桂枝雀さんの息子の桂りょうばさんが気になります。

決勝戦は8月23日(火)、チケット発売開始は7月23日(土)です。詳しくは繁昌亭ホームページでご確認を。誰が第8回のグランプリに輝くのか、私もとくと見届けたいと思います!


第8回上方落語若手噺家グランプリ2022 決勝戦

日時: 8月23日(火) 午後6時30分(6時開場)
出演: 桂そうば/笑福亭生寿/露の紫/月亭太遊/桂二葉/桂三実/笑福亭智丸/桂りょうば/月亭希遊
全席指定 前売2,500円 当日3,000円
※菟道亭配信あり
※7月23日発売予定

https://www.hanjotei.jp/


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