Interview & Writing
チリ圓子
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西野 恭平

「何コレ!」と、思わず突っ込まずにはいられないキャッチーなビジュアルが目を惹く「納豆マガジン」。今年2月2日に発酵(発行)されたこちらは、日常的に目にする機会は多いものの、主役にするにはなんだか物足りない“納豆”に、あらゆる角度からフォーカスした新感覚カルチャー雑誌。編集長を務めるのは、元「カジカジ」編集部の村上竜一さん。現在は納豆にまつわるイベント企画に加え、納豆をテーマにしたオリジナルアパレルを展開。さらに神戸で古着屋を2店舗オープンするなど、今ノリにノッているんです。今回は、彼の納豆への想いやマガジンの制作秘話、そしてこれからの展望について伺いました。究極のニッチを追求する粘り強いマインド、あなたもこの記事を読めばきっと「納豆マガジン」が読みたくなる!

僕自身、めちゃくちゃ前から納豆好きだったワケではなくて(笑)。まだあまり注目されていないモノの価値を発掘したかったんです。

最初に簡単なプロフィールを教えてください。

約3年間「カジカジ」の編集をしていて昨年退職。今年2月に「納豆マガジン」を京都 I’mの出版社「さりげなく」から発行しました。最近は、納豆をテーマにしたオリジナルアパレル<ネバネバビーン>の制作や納豆丼イベント「なとぅ屋」の活動を通して、日々納豆の魅力を発信しています。また、神戸・和田岬と塩屋に古着屋『ロストバード』を出店し、古着とオリジナルグッズの販売も行っています。

色んなことをされてるんですね。そもそも「納豆マガジン」ってどんな雑誌なんですか?

納豆を色んな角度から紐解いた雑誌です。関西の納豆紹介や納豆づくりの現場取材、納豆のアレンジレシピなど、様々な企画を通して納豆の魅力を発信しています。どのページを開いても退屈しないよう、デザインにもとことんこだわりました。

どのような経緯で「納豆マガジン」を発行することになったんですか?

去年の8月までは、ファッション誌「カジカジ」の編集部として働いていました。だけどコロナの影響で雑誌が廃刊になるタイミングで会社を辞めました。その期間は時間もたくさんあるし、今できることをしようと思って。そこで、以前から興味を持っていた納豆を知るための旅に出たんです。

“納豆を知るための旅”って一体どんな旅ですか?

納豆の名産地といえば茨城県・水戸ですが、実は関西にもいくつかメーカーがあって、そこを巡る旅です。あと、地域のスーパーも。納豆のことだけをひたすら考えながら、丸2週間旅を続けました。都会とかけ離れた所で製造している所も多くて、初日から野犬に襲われたり、怪しい男の人に声をかけられたり(笑)。何日か野宿の日もあったりして、めちゃくちゃ色んなことがありましたね。

そこまで大変な思いができてしまうほど、納豆がお好きだったんですね。

いや、もともとめちゃくちゃ好きではなかったです。

え、それはどういうことですか?

2年くらい前に寿司屋に行って納豆巻きを食べた時、ふと「ここに納豆巻きを目掛けて来てる人っていないよな」と思ったんです。納豆巻きを主役にした飲食店ってないんじゃないかって。気になって調べてみると、岩手県に一軒だけ納豆巻きが名物の寿司屋があったけど、本当にそこだけ。それから納豆に興味を持って、納豆巻きのイベントを時々古着屋やカフェを借りてやっていました。最初は来てくれる人も少なかったんですが、根気強く続けていくうちに少しずつ集客が増えて、納豆のことをもっと知りたくなったんです。そんなタイミングで新型コロナウィルスが拡がり、イベントができなくなりました。でも納豆は発信したいなと思っていたので、そのタイミングで納豆レビューをInstagramではじめたんです。そこから約半年くらいで退職することとなり、納豆を知るための旅に出て。最初はそれをアウトプットする形として簡易なZINEをつくるつもりでしたが、ちょうど京都で出版社を立ち上げた友人から連絡があって、「納豆マガジン」を雑誌として発行しようということになりました。

どこか主役になりきれない、中途半端なところが好き。たくさんの人のサポートがあって、今の僕がいるんだと思います。

納豆にフォーカスするってめちゃくちゃマニアックだと思うのですが。他にもたくさん食べ物があるなかで、どうして納豆を選んだんですか?

僕自身、幼い頃から世間一般的な“王道”ではないものに惹かれてきたんです。それでいくと納豆ってすごくちょうど良くて。身近なものではあるけど、好きな食べ物を聞かれた時に納豆を挙げる人ってあんまりいないんですよね。一方で、色んな種類の納豆があって、どれも生産者の強い想いが込められている。知れば知るほど奥が深いことに気付いて。まだ多くの人が見つけれられていない納豆の魅力を、自分のフィルターを通して伝えたいと考えました。

なるほど。だけど納豆って独特なにおいや風味があって、どうしても好きになれないという人もいますよね。

そういう人には無理して好きになってもらわなくてもいいと思っていて。もちろん好きになってくれたら一番嬉しいけど、皆が好きになってしまったらそれはそれで面白さが半減する気がするんです。主役になりきれない、中途半端な感じが好きですし、嫌いな人が多いのも魅力だと思っています。

「納豆マガジン」をつくるなかで、印象的な出会いはありましたか?

老舗納豆メーカーの並々ならぬこだわりを紹介している取材ページ。

取材にご協力いただいた納豆メーカーさんが良い方ばかりで、どれか一つと言われると困ってしまうんですが、京都<藤原食品>の社長・藤原さんには本当に感謝しています。SNSをあえてやらないことで工場に訪れてくれる人を増やす工夫をしたり、地域の人を巻き込んだワークショップを開催したり。新しいことを生み出すパワーや面白い考えに満ち溢れている方で、すごく尊敬していますね。いつもアニキ的な立ち位置で目をかけてくれて、マガジンが発行された時本屋さんへの営業にも一緒に回ってくれたんです。納豆アパレル<ネバネバビーン>とコラボしたスウェットやTシャツもつくらせてもらって、周りからも結構好評なんですよ。

京都の納豆メーカー<藤原食品>の定番商品「京納豆」のロゴを大胆にプリント。Tシャツ各4,400円。

「納豆の雑誌をつくりたいから取材させてほしい」という僕の突拍子もない話にも、皆さん快く耳を傾けてくれて。たくさんの人のサポートがあったからこそ、つくり上げることができたのだと思います。

今後は納豆だけに固執せず頑張っていきたい。実は、すでに第2号の発刊に向けて動き出しています。

約1年間色んなことがあったと思いますが、現在の自分のことをどのように考えていますか?

去年コロナの影響で「カジカジ」を退社した時は、自分がこんな風になっているなんて想像もしなかった。あの時、真剣に納豆と向き合う選択をして、本当に良かったと思っています。やれるかわからなくても、まずは一歩踏み出してみることが大事ですね。ここ数カ月、マガジン関連でTVに出演させてもらったりライティングの仕事をもらえたり、以前より自分自身の幅が広がったように感じていて。ほんと人生って何が起こるかわからないです。

これからやろうとしていることはあるんですか?

醤油やカラシは入れず、箸で100回ほどかき混ぜて食べるのが村上流。そうすることで粘りがまろやかになり、大豆本来の味が引き立つそう。

納豆関連のグッズをもっと増やしたいです。アパレルはもちろんだけど、今出している納豆皿が好評だから、次はお箸をつくろうかなと。納豆のプラスチック容器を使ったアート作品もつくりたいですね。これだけ納豆を食べているとたくさん溜まりますし、有効活用できたらと思っています。それと、1年前くらいからInstagramに投稿している納豆レビューにも力を入れていきたいです。最初はそれぞれどんな違いがあるのかわかりませんでしたが、100種類を超えたあたりから少しずつわかり始めて。今で250種類ほど食べているのかな。もっとたくさん投稿されている人もいるから、後出しの僕はなかなか及びませんが(笑)。「納豆マガジン」の編集長として、地道に頑張ろうと思っています。

京都<ものづくりびと>に別注をかけた伝統工芸品・清水焼の納豆皿 各4,200円。淡いグリーンとマットな質感がポイントです。
最近<ネバネバビーン>でリリースしたマメックレス各3,750円。コンセプトカラーのグリーンをベースにしたこちらは、コーディネートのアクセントにぜひ。

「納豆マガジン」第2号も制作中と聞きました。

そうなんです。すでに第2号の発刊に向けて少しずつ動き出していて、もう少ししたら本格的に取材に出かける予定です。だけどその前に納豆と向き合う時間がほしいので、2週間くらいまた旅に出かけようかな。たくさんインプットして、色んな角度から納豆を捉えられるようにしたいです。

それは楽しみですね。これからもずっと納豆を極めていく予定なんですか?

正直それはわからないですね。以前より納豆が注目され始めていて、あんまりスポットが当たりすぎると僕自身が興味を無くしてしまいそう……(笑)。そうなったら程良いところでスパッと辞めて、別のベクトルに切り替えるかもしれないです。

別のベクトルとは?

例えば若いアーティストを発掘してプロデュースするとか。『ロストバード』も活用しつつ、色んなことを仕掛けられたらと思っています。今年28歳だからまだワーホリにも行けるし、コロナが収まったら海外に住んでみるのもいいですね。そしたらまた新しい何かが見つかるかもしれないし、納豆だけに固執せず、柔軟にやっていきたいと考えています。

Profile

村上 竜一

広島県出身、1993年生まれ。関西のファッション誌「カジカジ」の元編集部で「納豆マガジン」編集長。納豆アパレル<ネバネバビーン(@never.never.bean_natto)>や納豆イベント「なとぅ屋」を手がけるほか、今年1月に古着屋『ロストバード』の1号店を神戸・和田岬に、今年7月末に2号店を塩屋にオープンするなどアクティブに活動中。

nnbean.stores.jp

Shop Data

ロストバード

兵庫県神戸市兵庫区笠松通り7-1-8
TEL/なし
営業時間/12:00~19:00
定休日/土日のみ営業

https://lostbird.buyshop.jp/

Shop Data

ロストバード2

兵庫県神戸市垂水区塩屋町4-10-11
TEL/なし
営業時間/11:00~18:00
定休日/金~月のみ営業

https://lostbird.buyshop.jp/

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