入り口はキャッチーに、中身はディープに。満を持して京都にオープンしたレコードショップ・pinks vinylの正体。

「これ、レコ屋のCM!?」。それが『pinks vinyl』からあがっている動画を初めて見た時の感想。架空のクリエイターが手がけたとされるTシャツのCMは、本気なのかふざけているのか分からないけど、最後まで見てしまう引力があったのです。オンライン上のレコードショップとして2020年に誕生した同店は、肩の力が抜けたブランディングと玄人好みのラインナップというギャップを武器に、音楽好きな若者からレコード通の大人まで、幅広く親しまれています。ここ2年ほどで、TANK酒場・「PARCOでレコード市」をはじめ現場への出店も増え、昨年秋には京都市左京区に実店舗をオープン。その独自の見せ方や、バックグラウンドに迫るべく、ブランドの仕掛け人であるニシウチタカトさん、DJ GRADEEさん、CH.0さんの3人に話を聞きました。このストリーミング全盛時代に、レコード店を、それも閑静な住宅街に立ち上げた背景と心境やいかに。

『pinks vinyl』は、「このレコード知ってる?」みたいな情報を共有するアカウントから、「良いレコードを買いたい」という欲求に応えるために走り出したプロジェクト。

改めて店舗のオープンおめでとうございます。まずは3人の出会いと、一緒にレコードショップをやるようになったきっかけを聞かせてもらえれば!

CH.0:僕は京都を拠点に活動しているんですが、2人と会う前に、Tha Jointz(※)(以下:Jointz)のメンバーであるKOHとかJASSと仲良くなっていたんです。彼らに大阪のイベントに呼んでもらうなかで、同じくJointzのメンバーであるダイちゃん(DJ GRADEE)、タカトと出会いました。でもその時は2人とレコードの話をすることはなかったですね。

※大阪・アメ村を拠点に活動するHIPHOPクルー。ラッパーやDJのほか、ビデオグラファーやダンサーなど、バラエティ豊かなプレイヤーが所属するアングラ集団。

タカト:僕は大学進学を機に地元の岡山から大阪に出てきて、毎日Jointzのメンバーと遊んでいたんですが、大学卒業後は上京して、映像の制作会社に就職したんです。『タモリ倶楽部』とかも作っているようなところで。

左からDJ GRADEEさん、ニシウチタカトさん、CH.0さん。

すごい!本格的に映像を学べる環境に行けたんですね。

タカト:それが、雑用ばっかりで映像に関する仕事は何もさせてもらえなかったんですよ。扱いも酷いし(笑)、1週間くらい会社に缶詰め状態とかも当たり前でしたね。会議室に椅子を並べて寝たりしてました。

うわあ…。ザ・ADって感じですね。

タカト:だから今、いろいろ映像を作らせてもらっていますが、この時にノウハウを学んだものは一切ないです(笑)。ほんとにキツくて「これ以上は無理だ」ってなって、入社2ヶ月で辞めました。その後は、もともと音楽が好きだったこともあり、東京の某レコードチェーン店で働き始めました。

お!そこで音楽業界に舵を切ったわけですね。そのレコードチェーン店で働き出したのはなぜですか?

タカト:「この際、都会でしかできない仕事をやってみたい」と思ったんです。せっかく上京したのに、すぐに仕事を辞めて地元の岡山に帰るのはかっこ悪いし、そもそも地元には、レコ屋でバイトをするという概念すらなかったんで。でも、レコードの個人店に入るというのは、選択肢にはなかったですね。緊張もするし。音楽ショップでいうところのスーパー的な、間口が広いレコードチェーン店だと緊張感もなく入りやすいと思って。

CH.0:タカト、チェーン店が好きなんすよ。ご飯屋さん行くってなってもチェーン店が多いよね。だからその判断もタカトらしいと思いました。

タカト:そうなんですよ。チェーン店は失敗しないんで。サイゼリヤとか大好きです(笑)

GRADEE:それと同時期に、僕も大阪の同じレコードチェーン店で働き出しました。タカトも同じ会社で働いてることを知って、いろいろと仕事の話もするなかで、「このレコード知ってる?」みたいな情報を共有するようになっていったんです。

「情報を共有する」方法は、普通にLINEなどを使ったやりとりですか?

タカト:いや、インスタで互いにおすすめのレコードを投稿し合うスタイルをとっていました。自分の番が来たら、やばいと思うレコードをピックして「このA面の2曲目やばい」みたいなコメントをつけて写真を投稿するという。だから今やってることの原型ですよね。でも誰かに発信するというよりも、僕とダイちゃんの2人で情報を共有するだけのアカウントでした。でもある日、そのアカウントがCH.0君に見つかったんです(笑)

CH.0:鍵アカではなかったから、普通にフォローして見てて。しかもDJをやってる僕としては、当然2人が紹介してるレコードが欲しいんですが、ただ2人がレコードの情報を投稿してるだけやから買えはしないんですよね。そこで歯痒くなって、2人に「販売ページ作ったらええやん」って言い始めました。だから、『pinks vinyl』は「良いレコードを買いたい」という、僕の欲求から走り出したプロジェクトなんですよ(笑)

なるほど(笑)。でも、CH.0さん目線で「欲しい」ってなるということは、他のDJからも需要があるかもしれないですしね。

CH.0:そうですね、欲しい人は絶対多いと思いました。2人に提案したのが2020年くらいかな?

タカト:そうそう。その頃、ちょうど僕が東京から大阪に戻ってきて、今度は大阪の系列店でアルバイトし始めたんです。

あれ?ということは、GRADEEさんと職場が同じになったんですか?

タカト:そうなんです(笑)。レコードの話も、より深くするようになって。で、CH.0君と久々に会った時に、レコードのオンラインショップの話をされたんです。レコードディールを個人でやることにも興味が出てきた頃だったので、早速3人のグループLINEを組んで進め始めました。

CH.0:僕は当時、一般企業で働いていたんですけど、その片手間でウェブページをサクッと作って(笑)

ではオンライン時代は3人で運営をしていたんですね。

タカト:そうです。インスタのアカウントも3人でシェアして、週替わりで自分が持ってるレコードの情報をアップしていました。

GRADEEさんは、「一緒にレコードショップやろう」と提案された時はどんな感覚でしたか?

GRADEE:そうですね、もちろんワクワクもしたけど、その一方で「自分らだけの情報交換だけでとどめときたいな」という気持ちもあったり……半々ですね(笑)。しかもDJでかけたいのに「あ、あのレコードもう売れてたんやった!」ってなったりするじゃないですか。

自分の手元にあるストックリストを販売していくのは、複雑なところもあるんですね。

CH.0:タカトだけはDJではなく、レコードショップのスタッフとしての目線が強かったですね。

タカト:レコードチェーン店でレコードの売買の知識を覚えていくうちに楽しくなってきたんです。例えば、100円でかっこいいアルバムがあったら「今は評価されてなくても、魅力をきちんと伝えられれば、500円で買ってくれる人がいるかも」って思うわけです。だから安かったらとりあえず買っちゃうスタイルでしたね。

「ここで勝負しないと、この先やっていけないんじゃないか」と思って、実店舗オープンのための物件を決めました。
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Shop Ddata

pinks vinyl

住所: 京都市左京区田中東春菜町30-3 THE SITE - C
時間: 13:00〜19:00
休み: 火曜・水曜
TEL: 075-741-8399

https://pinksvinyl.theshop.jp/

Profile

ニシウチタカト

岡山県出身。大学進学を機に大阪に出てHIPHOPシーンに触れる。共通の友人を介して出会ったGRADEEと意気投合して遊ぶうちにTha Jointzのメンバーとも出会い、自然とクルーに加入。現在は、『pinks vinyl』オーナーとして店舗運営やレコードの買い付け、買い取りを行う一方で、映像ディレクターとしてブランドCMやアーティストのPVなども作成する。

Profile

CH.0(チョウ)

京都出身・在住のDJ/ビートメイカー。兄の影響で小学生時代からHIPHOPに興味を持ち、高校からDJの活動をスタート。二十歳ごろには、西海岸のHIPHOPカルチャーに触れるため、カリフォルニアで丸一年ほどを過ごす。現在は自主レーベル・「Onda Bubbles」のファウンダーとして関西から発信を行う一方で、KID FRESINOのライブDJとしても全国的に活動中。

Profile

DJ GRADEE(グラディー)

東大阪出身。大阪を拠点に活動するHIPHOPクルー・Tha Jointz所属。小学生時代から周りと違う音楽性を養い、高校からは日本語ラップに熱中する延長で海外のHIPHOPも聞き始め、DJデビュー。『pinks vinyl』のCMに出演する名アクターとしても知られる(他の2人からの呼び名は「ダイちゃん」)。

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