終焉を迎える味園ユニバースで送る、怒涛のエンターテインメント「全日本赤犬歌謡祭」
「第68回 全日本赤犬歌謡祭」開演! 君はこの情報量についてこられるか?

「オールスターものまね王座決定戦」から短い休憩時間を挟んで、いよいよ「第68回 全日本赤犬歌謡祭」が開幕。宇宙王族タ・カーが、邪悪な侵略者との戦いを繰り広げるオープニング映像が、これから始まるスペクタクルへの期待を高めます。

メンバー紹介からおなじみのオープニング演奏に突入すると、「柳家睦とラットボーンズ」のダンサーであるオディールさんが登場。華麗な動きでステージを彩り、ワンマン公演の祝祭感が演出されます。続いて登場したナイトサパーズとのラインダンスでリベラマイルドのCMを思い出したのは私だけではないはず。



会場の盛り上がりがピークに達すると、荘厳な音楽とともに客席後方から石棺が登場。屈強な担ぎ手たちと先導役のナイトサパーズが場内を周回した後、ダンスフロアの上手側にセットされ、重い音を立てながら上蓋が開かれます。
中に眠っていたのは、先ほどのオープニング映像に登場した宇宙王族タ・カー! 2億4千万年の眠りから目覚め、神秘に満ちた眼差しで、ステージへとゆっくり歩を進めます。
なお、公式には2億4千万年ぶりとされていますが、実際は数年ごとに起きてオリンピックや大相撲観戦を嗜んでいたとのこと。また、そのルックスから吉村作治さんに目をつけられていることが本人の口から語られました。




タ・カーを加えた赤犬は、まず『タカアキのズンドコ節』で景気よく会場の熱気を高め、2曲目『リボルバー』に突入。ここでは「八尾のサックス番長」ことスティーヴィー和田さんをゲストに迎え、ハードなブロウが楽曲のダンディズムを増幅していました。
次は、そのままの編成でムードナンバー『デラノーチェ北浜』へ。ナイトサパーズがダンスフロアに降りると、いたるところでチークダンスが繰り広げられ、場内はモッシュピット状態に。ヒデオ氏は、目をつけたターゲットを次々とステージに上げ、ダンスの報酬として500円の小切手を切る大技で格の違いを見せつけました。


『デラノーチェ北浜』を歌い終えたタ・カーは、2億4千万年ぶりの歌唱で体力が限界を迎え、再び眠りにつくためステージを後に。残されたナイトサパーズが、今どきの流行歌でも歌ったろかいと構えた刹那、どこからともなく聞き覚えのあるギャグが……。そこに現れたのは、吉本新喜劇のGMである間寛平さん! 実は、赤犬と寛平さんはここ数年、たびたび共演させていただいており、今回もユニバースでは最後となる全日本赤犬歌謡祭を盛り上げるために駆けつけてくださいました。
コーラスを務めるエメラルドスターズと共に『青春グルリンコン』『ガッツマンのテーマ』を歌い上げ、最後には新ギャグまで披露という大サービスぶりで会場は爆笑につぐ爆笑。いつなんどき、どの方角からでも自在にギャグを放つ寛平さん。そのすさまじさを改めて知るひとときとなりました。アヘウヒハ。


続いての楽曲『お蝶夫人』では、長い眠りについたタ・カーの啓示を受け、私、タカ・タカアキがステージに。さあ、かっ飛ばして歌うぞと思ったら、闇を引き裂くようなギターの轟音が! そこに現れたのは謎の覆面ギタリスト。その正体は、おとぼけビ~バ~のスケバンギタリストこと、よよよしえ! 突如始まったチョッピー氏とのギターバトルを交えながら、ただでさえにぎやかな曲調は混沌の渦を巻き起こし、収束不可能なまでに爆発します。武田信玄と上杉謙信、ペルシアとスパルタのせめぎあいのように拮抗したギターヒーローの戦いは両者引き分けとなり、よよよしえさんは、颯爽とステージを後にしました。


嵐のような『お蝶夫人』の後は、ようやく一息つけそうな時間が……と思いきや、ここでも「ちょっと待ったらんかい!」と、突然の来訪者が。その力強い歌声で「大阪のゴッドねえちゃん」の異名を持つ大西ユカリさんが、艶やかな黒のドレスに身を包んで登場です。
ヒデオ氏がバックバンドのギタリストを務め、私タカの高校の先輩であるなど、赤犬とは親戚のような間柄のユカリさん。まずは『Laila』でオディールさんのダンスも交えた情熱的なパフォーマンスを披露。2曲目には、東心斎橋のヘアサロン・夢屋の創業20周年ソング『夢屋で待つわ』を軽快に聴かせてくださいました。


続いての楽曲は、ぶっといリズムで黒くうねりまくる『男のメンツ』。ナイトサパーズは曲のコンセプトを体現するため、もっとも男らしいとされる姿で登場。南河内のマラソンランナー、男塾四天王の一人で鞏家兜指愧破の使い手である羅刹、『マッドマックス2』のヒューマンガス様など、男の多様性を示した出で立ちからは、時代の波に乗る赤犬の先進性を感じていただけたかと思われます。


曲も中盤にさしかかり、間奏に突入しようとすると、ここでもまた突然の乱入者が。巨獣の雄叫びの如きトロンボーンと共に現れたのは、ファンク番長ハマケンこと浜野謙太さん! ヨシオ氏とのトロンボーン対決で男のむせび泣きを共鳴させると、客席のボルテージは最高潮に達しました。



トロンボーン対決ですっかり体が火照ったハマケンさん。せっかくなので、ここは1曲歌っていただきましょうということになり、自身がリーダーを務める在日ファンクの『京都』をプレイ。中盤のコール&レスポンスならぬ京都&レスポンスに差し掛かると、胸に秘めた思いが抑えられなかったのか、ハマケンさんの「大地、大地、大地が欲しいー!!!」という叫びが場内にこだまし、なんと、通りがかりの伊藤大地さんがステージに現れたではありませんか!
用意されたドラムセットで大地さんがけたたましいソロを披露すると、SAKEROCKのライブではおなじみのスキャット対決のコーナーに突入。2人の濃厚なやり取りを赤犬と約1000人のお客様が見守るという、尊いにもほどがある時間が繰り広げられました。

いよいよ終盤に差し掛かり、曲は福井県でわかめの大漁祈願のために歌われるという『めんとこおけさ』へ。この曲は本来、ナイトサパーズの3人で歌われるのですが……あれ、なんか肩に鷹を乗せた大男が? あ、あの人は有名なロックバンドのベース・ボーカルでねえか! ということで、モンゴル800のキヨサクさんが登場。「めんとこ」のコーラスと、曲中に行われる禊の儀式に参加するためだけに、はるばる沖縄から飛行機で来てくださいました。


怒涛のように過ぎていった全日本赤犬歌謡祭も、いよいよラストナンバーに。楽器陣が緊張感を漂わせるインプロビゼーションを展開すると、毎回、『世直し道中あんちくしょう』でヒロインを務めている峰U子さんが赤の襦袢に白塗りのスタイルで舞踊とポールダンスを披露。お客様の情報整理が追いつかない中、赤犬の楽曲でも随一のドラマ性を誇る『アモーレ』のイントロが奏でられ、一気に終末感が高まります。ナイトサパーズは白塗り+学生服+ふんどし+手長という田園で死にそうな出で立ちで不気味にステージを徘徊。プログレッシブな間奏も相まって、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されました。約10分にもおよぶ演奏は巨大な銅鑼の一撃で終わりを告げ、メンバーはステージを後にしました。

赤犬
1993年、大阪芸術大学の学生で結成。大阪のライブハウスを中心に活動し、2010年、二代目ボーカルとしてタカ・タカアキが加入。2015年には渋谷すばる主演の映画『味園ユニバース』に本人役で出演する。各種イベントへの出演のほか、ワンマン公演『全日本赤犬歌謡祭』など、自主企画も開催している。2023年に30周年を迎え、現在もマイペースに活動を展開中。