ポップスからヒーリングへ、東京から奈良へ。元CHAIのMANAKANAが見せてくれる、日常と呼応する心地よくも新しい音の世界。
次を考えてCHAIをやるのが、私はCHAIに嘘をつくみたいで嫌だったんですよね。CHAIだけをやりたかった、だからやり切った後に考えた。(MANA)

ヒーリング音楽を始められたのは、どんなきっかけがあったのかなと思ってました。
KANA:私はヨガもやってるのでもともとそういう音楽が好きなんですけど、CHAIを解散する最後の海外ツアーがカンボジアだったんですよ。そこで行ったマッサージ屋さんみたいなところの雰囲気が、すっごく良くて。BGMが、笛の音だけが流れてたんです。多分バンスリーっていうインドの笛なんですけど、その音だけ。それが腑に落ちて。
笛の音だけが。
KANA:自分の中で、なにこれめっちゃいいって思って。今吹いているインディアンフルートっていう笛にたどり着いたのも、それがきっかけで。CHAIの解散ツアーの時に練習し始めて、これやりたいかもって。
解散ツアーの時にはもう練習されてたんですね。
KANA:もともと環境音楽が好きだったし、その当時はひとつの楽器だけで奏でてる音がすごく心地よかったんですね。ちょっともう、ポップスいいやと思ってたから。ポップス聴けなくて。解散ツアーの時もCHAIの曲だけ聴いて、練習してっていう感じで。そこに急に笛の音がスッと自分の中に入ってきた感覚があって。

その時にKANAさんが求めてるものが、そういう音、音楽だったのかもしれないですね。そこから笛を始められて?
KANA:そうです。だからちょうど、1年ぐらいですね。でもすっごい難しくて。小学校の時のリコーダー、あれしか吹いたことなかったから。最初は先生に習いました、半年くらい。ちょっとずつ吹けるようになって、曲を作って。
MANAさんは、KANAさんがヒーリング音楽へ向かっている様子をどんなふうに見ておられたんでしょうか?
MANA:私、逆に新しすぎて、この音楽が。マッサージ屋さんとかで流れてるけど、それ単体に集中して聴くことって今まで一回もなかったんですよ。でもKANAに聴かされた時に、あ、心地いいなって。これめっちゃ新しい、やろうよって。そしたらKANAが笛を始めたもんで、それだったらコードがいるねってことでキーボードで。
KANAさんの笛のメロディを、MANAさんのキーボードで支えると。
MANA:KANAはすぐ集中してやっちゃうタイプなんですよ、ギターもずっとストイックにやってたから。だから感覚で、これ突き詰めるな、多分これでいくなと思って。すぐ曲作りも始めてたから、じゃあコード弾くねって最初セッションしたのがきっかけです。

それで、新しい方向に進んでいくことになったんですね。MANAさんも、ポップスをやることがちょっと負担になっている部分はありました?
MANA:最後のツアーではもうポップスは聴いてないですね。でも私はいまだに好きなんですけど、でも自分がやるっていうイメージはもうない。CHAIというポップスは自分の中でちゃんと集大成を迎えた、やりきったっていう感覚があったから。ポップスっていうよりは、CHAIに集中してたって感じです。私は逆に最後まで、CHAIしか考えてなかった。CHAIのお客さんのためにじゃないですけど、お客さんに次の未来を見せるよりも、私はちゃんとやりきりたいと思って。逆に、未来のことはいい、と思ってやりきりました。
MANAさんの中では、解散のタイミングでは、次こういうふうにしていこうっていうビジョンみたいなものは?
MANA:何も考えてないです。次を考えてCHAIをやるのが、私はCHAIに嘘をつくみたいで嫌だったんですよね。他事を考えながらやれるような、なんだろう、そんな気持ちで私フロントマンをやってなかったんですよ。CHAIだけをやりたかった、だからやりきった後に考えた。

CHAIの時は、CHAIのことだけ。
MANA:そう。で、次の日から考えた。
次の日から!未来のことを。
MANA:そうそう、浮気できない。1人の男だけ集中してその後、次の男を考えるみたいな。順番がいるんですよ。
なるほど(笑)。解散されてから、新しく何か始めようかなって思われてたことはありました?
MANA:それこそヒーリング音楽は聞くようになりました。逆にポップスがすぐ聴けんかったから。ヒーリングだけ聴いてて、あと絵も描いてました。何をやるか、はっきりさせる時間でもないなと思ってたから。全然時間はあるっていう気持ちでした。

ゆっくり考えることのできるこの1年だったんですね。KANAさんは、すぐにやりたいものが見つかって、曲も作ってという感じで?
KANA:そうですね、私意外とやりたいことがない瞬間ってあんまりないんですよ。CHAIの音楽もやってる当初はすごい好きだったけど、なんかこう違うなと思い始めたのが解散1年前ぐらいで。もう音楽は本当にやめようと思ってたんですよ。自分の中で音楽がなんかこう、仕事になりすぎちゃったというか。人の曲を聴いてても、ここのラインがこうだからとか観察しちゃって、全然楽しめない。
純粋に楽しめなくなってしまった。
KANA:音楽が好きだったはずなのに、ポップス作らなきゃとか、もっとメロディアスにとか。当初はDEVOみたいなことやりたかったのに、売れる曲作ろうとか考え始めちゃったもんだから、それが良くなくって。でも、いい曲はたくさん出せたんですよ、見てくれるみんなのおかげで。いいものはたくさん出せたんだけど、自分の中でもともと好きだったものが崩れていっちゃったその中で、ヒーリングだけはふっと入ってきてくれたから、それが今は腑に落ちますね。

MANAKANA
世界中で活躍していた元ガールズバンドCHAIの双子フロントマン。現在はヒーリング音楽を中心に、“魂の出発”そして“魂に響く音霊”を表現し、ライブ活動やモデルなどを通して幅広く活動中。
MANAは音楽やアートを通してアーティストとして、またポットキャストでエッセイを配信中。KANAはインディアンフルート奏者として活動。ヨガインストラクターの資格、RYT200を2021年に取得。
オフィシャルサイト:https://manakana.bitfan.id/
Instagram
MANA:@chaimanakana3333
KANA:@chaikanaaaa