ボカロP、シンガーソングライター、作家。マルチな才能を発揮し、現代人にぶっ刺さる曲を生み出し続ける大阪出身のアーティスト・すりぃってどんな人?

ボカロP、シンガーソングライター、作家と、マルチに活躍する大阪出身のアーティスト・すりぃさんをご存じですか?2017年に作曲家を目指して上京し、その翌年の3月3日より“すりぃ”としてニコニコ動画を中心に音楽活動をスタート。着々と活躍の幅を広げ、最近ではAdoの「レディメイド」などの作詞・作曲を手掛けるなど、精力的に活動しています。ボカロのセルフカバーではなく、本人歌唱の曲が多いのも楽曲の特徴。自身の顔を公開しない人も多いボカロの世界ですが、すりぃさんはアー写でお顔を公開されていて、しかもそれがイケメンとネット上で密かに話題となっています。今回は、去る11月14日に発売したオリジナルアルバム「グラデーション」のリリースに合わせて帰阪していた彼をキャッチし、音楽活動のお話や大阪時代の思い出について伺いました。皮肉さと素直さ、陰と陽の両面を併せ持つ彼は、まさにアルバムのタイトルと同様“グラデーション”な人でした。ボカロに興味がある人もない人も、1度ぜひ読んですりぃさんの楽曲を聴いてみて!

音楽活動の初期から作っていた60秒尺のショート動画が話題に。他人の意見をはねのけず、素直に受け入れる柔軟性が強みです。

すりぃさんが音楽を始めたきっかけは?

高校生の頃、アニメ『けいおん!』に影響されてギターを始めて、同じくハマった地元の男友達とバンドを組んでいました。ガールズバンドの曲を中心に『けいおん!』のカバーもしていたんですが、全員初心者やったからキーとか全然わからなくて、男性ボーカルがそのままのキーで『けいおん!』の曲を歌っていたんです。今思うとかなり無理がありました。

私も同世代なんで『けいおん!』の魅力がめちゃくちゃわかります。ちなみに、すりぃさんは誰が好きやったんですか?

ゆいちゃん派です。あのほんわか感がかわいいですよね。当時は『けいおん!』をきっかけにアニソンをよく聴くようになって、ニコニコ動画でボカロを知ったのもその頃でした。こんな音楽があるんだなぁと思いましたね。

高校卒業後はどうされたんですか?

大学に進学して建築学科に入ったんですが、全然興味が湧かなくて。

それなのにどうして建築学科へ?

建築系の仕事であれば給料もたくさんもらえるし、就職に有利やからと親に言われて……。めっちゃ浅はかな理由ですよね(笑)。内部進学ができる学校やったんで、受験もなくエスカレーター式に進みました。ただ外部生は建築が好きで入ってきてる子が多くて、「休日にあの建物の屋根を見に行こう」みたいな話になるんですよ。そういう姿を間近で見ていると、僕はここにおったらあかんのかなって思うようになって、環境なんちゃらっていう学部に変えたんです。

あれ、学部の名前に自信がなさそうですね。

仕方なくの判断だったから、きちんと覚えてないんですよ(笑)。建築の勉強って難しくて大変だったので、できるだけ楽な方に行きたいなぁと。音楽と両立したいという思いもありましたし。

その頃もバンド活動はしていたんですか?

メンバー募集サイトを使って集まった人たちと一緒にバンドをしていました。そのうちの1人は今でも音楽を続けていて、僕のライブのサポートもしてくれています。音楽を本気でがんばりたいと思い始めたのもこの頃です。ただ、バンド活動に本気になればなるほど大学が合わなくなって、結局中退してしまいました。

本格的に音楽の道に入ろうって思ったのはどうしてですか?

最初は、就職したくない自分の言い訳代わりに「音楽の道に進む」と言っていたんです。だけどだんだん音楽が楽しくなってきて、バンドの曲を作るようになってさらにのめり込んでいきました。その後、バンドを解散したタイミングで作曲家になるための勉強を本格的に始めて。高校時代から聴いてたボカロに興味があったので、まずは遊びでもいいからやってみようと思ったんです。

すりぃさんが自分で曲を作りたいと感じた原点は?

曲を作れたらかっこいいっていう単純な理由ですね。作曲をするようになってからは、曲を聴く時に作曲家の存在を意識するようになって。「これはこの人が作ったんや」「これとこれは同じ人が作ってるんや」とか、どんどん興味の世界が広がって、これを職業にできたら最高だなと思いました。上京したのは2017年、23歳の頃です。そこから1人でやっていこうと決めて、2018年の3月3日にボカロPのすりぃとして活動をスタートしました。

世の中の人に自分を知ってもらうために、どんな手段を取っていたんですか?

ニコニコ動画への投稿ですね。当時はYouTubeの勢いが今ほどなくて、ボカロ=ニコニコ動画のイメージが漠然とあったので、ニコニコ動画にだけアップすればいいやと思っていました。だけど誰かに「YouTubeはやらへんの?」と言われて、どうせ手間は変わらないし出してみるかという軽いノリでYouTubeも始めました。そこで話題になったのが60秒尺のショート動画だったんです。

どうして60秒にこだわったんですか?

Twitterにアップできる動画の秒数が当時60秒だったんです。今はどちらかというとショート動画が主流ですが、当時は短尺のものって珍しくて。僕はその頃から短尺でサクサク観られる方が好きだったので、僕の活動に興味を持ってもらうきっかけになればという気持ちで作り始めました。

結果的にそれがバズる要因にもつながったと。

サブスクもちょこちょこ始まっていていたので、今後は長尺で聴く人が減るんじゃないかと思っていたんです。当時から短い曲も結構出してたけど、すぐに火が点いたわけじゃなかったので、結果としてはちょっと早すぎたのかもしれません(笑)。今でこそTikTokやYouTubeのショート動画が人気だけど、当時はよく「短すぎ」って言われていました。

ショート動画の先駆け的な存在だったんですね。YouTubeにショート動画をアップした後、しばらくしてからロングバージョンを出したりもしているじゃないですか。ショートとロング、どちらを先に作っているんですか?

大体ショート動画が先で、後から長尺になるよう調整しています。60秒動画をきっかけに曲を知ってもらって、みんなもう少し聴きたそうだなって思ったら、ロング尺にしたりMVを付けたりしてアップデートしています。

ショートからロングになっているものは、反響があったものが中心なんですね。

そうですね。1度寝かせて再考したり動画に付いたコメントを読んだり、聴いた人の感想を見てみたり、そこから得られる発見や解釈の方法もあるので参考にしています。自分では思ってなかった新たな解釈を取り入れることで、曲に深みが出たりよりおもしろくなったりもしますし。そこは頑なにならなくていいのかなって思います。

柔軟な考えをお持ちなんですね。ある種すごく現代的なのかもしれません。

自分を信じてその感性を貫くアーティストもすてきだと思うけど、僕はおもしろくていいものが作れるなら、他人の意見を取り入れることに抵抗はないです。今はシンガーソングライターとして歌ったり表舞台に出ることが多くなりましたが、もともと作曲家志望だったので、ある種オーダーに答えるようなやり方が合っているのかもしれません。

いろんなアーティストの楽曲制作しながらも、すりぃさんの曲だと気付いてもらえるような仕掛けをこっそり盛り込んでいるというインタビュー記事をお見かけしたことがあります。それは今も続けてらっしゃるんですか?

遊び心みたいなものなんですが、みんなが想像するすりぃっぽさをいろんな曲に散りばめることで、僕が作ってるんだなってわかってもらえたらいいなって思うんです。

専門的な話になってくるかもしれませんが、すりぃさんっぽさってどんな部分なのでしょうか?

コード進行やリズム、フレーズ感とか。いろいろ言い始めるとややこしくなるんですが、パッと聴いた感じはコミカルでかわいい音が入っていて楽しそうだけど、歌詞はちょっとシリアスで陰がある。そのギャップを感じられるところですかね。パッと聴いただけでわかるものもありますしわかりにくいのもあって、最近はその時の気分次第で入れたり入れなかったりです。ただちょっと飽きてきたので、もうやらなくてもいいかなと思っています。

普段は明るい性格だけど、曲作りをしていると内へ入りこんで、どんどん暗くなっちゃう 。僕の悩みやモヤモヤを「飲もうや」のひと言で一掃できるギャルマインドが眩しいです(笑)
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Profile

すりぃ

ボカロP、シンガーソングライター、作家。2018年3月3日にボカロPとして活動をスタート、同日に初投稿した「空中分解」が後にニコニコ動画で初殿堂入り。Adoを筆頭に様々な人気アーティストへの楽曲提供をする他、シンガーソングライターとしての一面もあり、最近はライブ活動に力を入れる。短編恋愛小説「トキメキ因数分解」を手掛けるなど、執筆活動も行う。

HP:https://three0303.com/
YouTube:@THREEE_0303
TikTok:@iii0303iii
ニコニコ動画:userID:78655994

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