『たとえばボクが踊ったら、』がカムバック!仕掛け人である夢番地の大野さんとMCを務めるFM802の加藤さんに、開催に向けたいろんな想いをインタビュー。
「音楽はなくならない!」という気持ちも痛いほど分かる。音楽がイヤなことを忘れさせてくれても、心のどこかに引っかかるものは絶対にあるし。「じゃ、やらん方がよくない?」って。
『たとえばボクが踊ったら、』は初回から伝説が生まれたわけですが、めちゃ大変だったことや苦労したことってありましたか?
大野:2018年の初めて2会場展開した時ですね。開催前にめちゃくちゃ大きい台風が来て、公園内を歩けないくらい木が倒れ、停電して電源も確保できない状態になってしまって…。マジでどうしようかなと。電源については公園協会の方々が尽力してくれて前日には復旧しましたが、装飾を吊るす木も倒れてたので、かなりピンチでした。
あの大阪を襲った台風ですよね。
大野:そうです!しかもスポーツ広場の会場は土だから足がスポッと埋まるほどぬかるんでおり、搬入車両もスタックする始末。搬入できないのでプラスチックのマットを手配したものの、台風の影響もあって大阪全域で入手できない状態だったんです。名古屋の知り合いに速攻で連絡して300枚確保できたんですが、今度は積み込むための大型車がない!本当なら1台で積み込めたのに、結果的に3台で運ぶことになってとんでもなくお金がかかりましたね…。でも、背に腹は変えられないから「もうそれで行ってまえー!」って感じでしたが、超赤字でした(笑)
加藤:あんなにヒリヒリしてる状況は初めてくらいだったし、電話もらった時も「無理かも…」と言ってたし。
大野:それだけ苦労したおかげで、当日はビックリするくらいのピーカン。
加藤:公園協会の皆さんもいろいろ片付けや水かきもしていただいてたので、足元もよくなってたしね。でも、公園の所々には倒れた木々が積まれてて、あの時は何か異様な雰囲気もありました。
開催を中止しようとは思わなかったんですか?
大野:さすがに大阪入りしてるアーティストもいたし、何とかして開催することだけを考えてましたね。フェス当日は台風が抜けてるのは分かってたし、やるべきことを2日間くらいでやり切った感じです。多分、スタッフみんな死にかけてたと思いますよ。
修羅場もくぐり抜けたチームなんですね。ちょっとコロナ禍と音楽のことについても聞かせてください。昨年も『たとえばボクが踊ったら、』の開催を発表してましたが、コロナの影響で断念されましたよね。
大野:中止にはしたくなかったので、あくまでも延期ということにしてました。ブッキングしてたアーティストはそのままで、さらに増やして今回の『たとえばボクが踊ったら、』に至ってるという感じです。実は、コロナ禍において全国で初めて野外フェスしたのは僕なんですよ。
え!マジですか!?
大野:ちょうど2年前ですかね。
加藤:その時も服部緑地野外音楽堂でしたね。
大野:まぁ大赤字でしたけど(笑)
加藤:誰もがどうすればいいか悩んでる時だったから、大阪中のイベンターさんが集まってた。どんな風に開催するのか気になったんでしょうね。
当日の運営はもちろんですが、世間の反応とかも気になってでしょうし。そもそも人が集まるのかっていうのもありますし。
大野:大阪城ホールの方々も来てくれてましたからね。その時は国のガイドラインも作成中だったから、そもそもライブができるかどうかも分からない状態。でも、何とかして開催できる方法がないかと思ってたら、ダスキンさんが手を挙げてくれて。「協力させてください!」ということで、ダスキンさんがスタッフを動員して感染対策を全てやってくれました。手すりをこまめに拭いたり、トイレを掃除したり、除菌マットを敷いていただき、その時にベースのガイドラインができたと思います。
加藤:その時からダスキンさんは、フェスやツアーとかでもスタンダードになってますもんね。
きっかけを生んだ夢番地さんのおかげですね。ちなみに大野さん自身は、コロナ禍でフェスやイベントもできない状況をどのように思ってました?
大野:コロナ禍になった最初の1年は、僕らが何かやるべきだと勝手に思ってましたね。でも、昨年とかは自分が言うのもアレですが、やらんでええかなと思うくらいにはなってた。何かしても、誰が得するんかなと。「音楽を止めない!」って気持ちはもちろん分かるけど、アーティストサイドや僕らを含めた⾳楽関係者はみんな⼤変で、⾚字を背負ってまでやるべきなんかなと思ったり。「⾳楽はなくならない!」という⾔葉もよく聞いてたし、その気持ちだって痛いほど分かる。ただ、お客さんだって、⼼にゆとりとか余裕がないと楽しめないと思うし、暗いムードの中、⾳楽がイヤなことを忘れさせてくれても、心のどこかに引っかかるものは絶対にあるし。「じゃ、やらん方がよくない?」って思うようになってましたね。
現場の最前線にいるからこそ、葛藤も深かったんですね。声を上げて立ち上がることだけが正義でもないし、何かするにしてももどかしさが邪魔をしたり。
大野:「コロナが落ち着いたら開催しよ!」「その頃にはきっと緩和されてるはず!」そんな想いを持って企画してましたけど、着手するのは1年前とかですからね。先行きは見えないままだし、「ほんまに開催してええんかな?」という葛藤はずっとありました。真樹ちゃんだって、「フェスに来てね!」とは言いにくかっただろうし。
加藤:今でこそ「こんなフェスがあるよ!」と感染対策を伝えながらポジティブに言えるけど、当時は口にはできない空気でしたね。昨年の『たとえばボクが踊ったら、』の開催を断念した時も、主催者側としてすごく考えた上での判断だっただろうし…。誰も得しないというのもそうで、全員が楽しむために集まれなかったら意味がないなと。アーティスト自身も「ここに出ていいんかな?」なんて思いながら出演してもらうのは、一番よくないことだと思う。
大野:それにお酒も出せなかったしな。僕自身がフェスでは遊びたいタイプだから、お酒がないのは全く理解できなかった。「何しに行くねん!?」って感じで。ずっとノンアル飲んでて、何がおもろいねんと。僕がこんなこと思ってるのに、胸張ってお客さんに「おもろいやろ!?」とは言えないもん。だったら開催しない方がええんちゃうかと思ったんですよ。
飲まない人にとっては変わってないけど、やっぱりフェスでお酒が飲めないのはツライ。音楽を楽しみに行ってるとはいえ、その場所、その時間にみんなと乾杯して盛り上がるのも醍醐味ですしね。
大野:ほんまにね!まぁ、ちょっと話は逸れますが、コロナで結婚式の予定が2回も飛びましたからね。
加藤:作戦会議もしっかりしてたのにね。
マジですか…。それもある意味で、人生におけるBIGフェスなのに…。
大野:MCは真樹ちゃんと中島ヒロトさんがしてくれることになってて、アーティストさんにも来てもらい、ディレクターさんにも入ってもらってすごいパーティーになりそうやったんですけどね。おまけに新婚旅行も飛びましたし。そもそも結婚式なのに、みんなでマスクして黙食して何がおもろいねんと!
加藤:もちろんノンアルやし。
大野:マスクしなくてもOKになったらやろうとは思ってたんですが、その気配もないしね。本当は奥さんのためにも結婚式はしたかったけど、相談した結果、もうええかなとなりまして。気づいたら新婚じゃなくなってました(笑)。
加藤:結婚式のパーティーのチケットは、イープラスにお願いしてましたもんね。
大野:そうそう!300人くらい呼ぶつもりで、100人誘った時点でコロナ禍になり、全員に行き届く前に中止が決定しましたから。
ツラすぎます…。
大野:しかも、みんなにお知らせを送って払い戻し作業も自分でやりましたから。自分の結婚式のパーティーの払い戻しほど切ないもんはないですよ(涙)
加藤:通常のイベント業務と同じことしてましたもんね…(涙)
大野:払い戻し期間は決めてたんですが、みんな気を使って払い戻ししてくれないんですよ。「大丈夫やで!」って感じで。でも、さすがにそうもいかないから、もう1回イープラスからメールを送ってもらったんです。「払い戻し期間延長のお知らせ」って…。あ、すみません全然話が逸れちゃいましたね。
いえいえ!大野さんの人間味があふれるお話が聞けて、『たとえばボクが踊ったら、』ファンには貴重なインタビューにもなってるかと。
大野 秀幸
コンサートのプロモーターである株式会社夢番地に所属。『たとえばボクが踊ったら、』の仕掛け人として、出演アーティストが全て自身の担当というフェスを立ち上げ、日本のイベントシーンでも異彩を放つ。アーティストからの信頼も厚く、ゆるいスタイルがモットー。フェスの時は率先して楽しむのも真骨頂。
加藤 真樹子
FM802に所属するDJ。大学在学中にラジオ制作に携わりながら、ラジオDJ、イベントMC、テレビ番組のレポーターなどを経て2002年にFM802でデビュー。“カトマキ”の愛称で親しまれ、現在は月〜木11:00〜14:00の『UPBEAT!』を担当しながら、イベントMCや雑誌での音楽レコメンドの執筆、アロマセラピストとしても活動中。『たとえばボクが踊ったら、』では、第1回目からMCを担当している。