死ぬまでフロアにいたい。アツいイベントを仕掛け続ける『CATS』の吉田サキさんが持つ、好きなものへの熱量って。
初めてイベントを企画した時、スタッフの反応は微妙。でも、私の心の中は「知らんやろ?お客さんめっちゃ入るからな!見とけよ!」って。
『CIRCUS Osaka』の誕生から今年で10年!このクラブのいろんな変遷をサキさんは間近で見てきたことにもなりますよね。
もう10年ですよね。スゴイですよね、私は何もしてないけど…(笑)
いやいや、そんなことないでしょ。この場所が好きだからこそだと思うんですが、『CIRCUS Osaka』の魅力って何だと思います?
ブレてないし、やっぱりカッコイイ!正直、カッコイイとしか思ってないんですよ。
中にいても、10年間変わらずカッコイイと思えるって素敵ですよ。やっぱり自分たちがカッコイイと思うものを発信してるからなんでしょうね。だからイベントもそうだし、次から次へとやりたいことも出てくるのかなと。イベントもいろいろ企画してるそうですが、最初に担当したイベントはどんな感じだったんですか?
『CIRCUS Osaka』に入って2年目くらいの頃だったかな。どうしてもHIP HOPのイベントがしたくて企画したんです。DJはもちろん、ダンスショーケースも入れたりして。
周囲はすんなりと受け入れてくれたんですか?
反対とまでは言わなかったけど、「えっ、CIRCUSでHIP HOP?」みたいな反応でしたね。元々ドラムンベースやテクノがメインのクラブだったんで、「ダンスショーケースとか必要?」「そもそもお客さん入るん?」って感じで。だから、「絶対にお客さん入りますから!」って啖呵きりました。言葉には出さなかったけど、「知らんやろ?めっちゃ入るからな!見とけよ!」と心の中で思ってましたからね。
それだけの自信はあったと?
私自身はメロコアとかエレクトロが好きだったんですけど、夜な夜なアメ村界隈のクラブで行われてるイベントをハシゴしてたから、その時にHIP HOPとも出会ったんです。今まで全然聴いてなかったんですが、HIP HOPの人たちはいつも優しくてね。人間性を知れば知るほど、曲の良さにも気づけて、「HIP HOPって、めちゃくちゃカッコイイ!」なと。これはCIRCUSでもやるべきだと思ったんです。
人の内面の部分から魅力を感じると、想いもより強くなりますよね。とは言え、ブッキングとかも大変だったんじゃないですか?
そこはアメ村で遊んできた経験が力になりましたね。知り合いやその繋がりのある方たちに出てもらったので、夜な夜な遊んできた時間は無駄じゃなかったなと。そりゃ毎晩いろんなイベントに顔出してると、自然と知り合いも増えますからね(笑)
趣味と実益を兼ねるってわけじゃないですけど、好きなことに没頭してきた結果ですよね。それに人としての部分も好きになって繋がってるから、フランクな関係だけど強固な感じもする。ちなみに最初のイベントの成果はどうだったんですか?
お客さんもたくさん来てくれて、赤字なることは回避できましたね!それをきっかけに「HIP HOP CIRCUS」というイベントも定期的に開催するようになり、今では大御所から若手までいろんなアーティストさんのライブまでするようになりましたから。
してやったりですね、それは!サキさんは『CIRCUS Osaka』でもイベントを仕掛けつつ、現在は姉妹店の『CATS』を任されてますが、どんな経緯だったんですか?
『CATS』は誕生してちょうど5周年を迎えました!元々『CIRCUS Osaka』の上の階には美容室が入ってたんですが、イベントの振動とかが伝わりやすかったようで…。テナントが入っては出てしまう状況が続き、上の階も借りた方がいいかもねってことで最初はただの物置部屋にしてたんです。でも、やっぱりもったいないじゃないですか?だからTOYOさんに「物置だけにしてるのもったいないー!!私、バーやりたいー!!」って伝えました。
そんなノリで?
はい、そんなノリで(笑)じゃTOYOさんは「やりたないなら、やる…?」って言ってくれて、トントン拍子ですぐオープンしたんです。
TOYOさん、めっちゃええ人(笑)。そもそも、何でバーだったんですか?『CIRCUS Osaka』ではバーカウンターも担当してたのに。
私、すぐ外に遊びに行っちゃうんですよ(笑)。イベント中でもある程度落ち着いたらバイトの子にバーカウンターを任せて、「今週はあのイベントやってるからちょっと見に行こうかな」って。で、全然帰ってこない(笑)
華麗なる職場放棄!でも、それ故にいろんな繋がりも生まれる(笑)
さぼり癖ってわけじゃないんですけど……CIRCUSにいると任せられる子もいるから、ついつい外に出ちゃうんですよね。だから、もっと責任感を持つことも必要だなと思って。
それでスタートしたのが『CATS』だったと。
そうですね。名前は、TOYOさんが『CATS』にするって決めました。「え、何で?」って思いましたけど(笑)。多分、単数形じゃなくて複数形にしたのも、夜な夜ないろんな人たちが集まってきたらいいかなーみたいな。ホント、そんな感じだと思います。
ノリで言ったことがすぐ実現して、急展開で店を任せられる立場になったわけですけど、戸惑いとかはなかったんですか?
戸惑いよりも、どんな場所にしていくかはすごく考えましたね。店としてはバーですが、毎週イベント組むべきか、ドリンクはどうするかとか。TOYOさんと話し合いしながら、5年走り続けてきてようやくカタチになってきたかなって思います。途中の2年間はコロナもありましたし。
バーカウンターに立つのと、店を運営するとでは全然違いますもんね。
お酒1杯の価格設定もアメ村ってシビアですからね。若い子が多いからそもそも500円のお酒じゃないと飲まなかったりもするし、600円のものとかは普通に値切ってきますもん。「500円にしてや!」って。そりゃワンコインの方が飲みやすいし、払いやすいのも分かるけど…「しゃーないやん!」って感じですよ。まぁ当初は500円の時期もありましたけど、さすがに原価も上がってるので最近ちょっとだけ値上げさせてもらいましたね。
『CATS』がサキさんにとって楽しい場所だからこそ、商売としても成立させないとダメですからね。
TOYOさんは好きにやっていいと言ってくれてるけど、そこはね。まぁ、逆に好きにできてなかったらめっちゃ文句言ってるかもしれませんが(笑)。『CATS』を任せてもらってる責任感はあるので、集客や売上は以前よりもリアルに考えるようになったと思います。もちろん思いっきり楽しむことは、大前提ですけどね。
自分がカッコイイと思う人しか呼びたくない。そこは絶対的に守ってること。
『CIRCUS Osaka』はもちろん、『CATS』でもいろんなイベントをされてますが、サキさんが企画する時に一番こだわることって何ですか?
自分がイイと思う人、カッコイイと思う人しか呼びたくない。イベントを提案されても、自分が納得できないものはしない。そこは絶対的に守ってるし、ブレてない理由なのかもしれませんね。
簡単そうで、それを貫き通すのはめちゃくちゃ難しい。
そんな考えって、ホントはダメかもしれないんですけどね。自分の感覚をブラしてまでやりたくはないなと。でも、私自身の好きなものの振り幅はめっちゃ広いので、モーニング娘。とかつんくプロデュースオンリー、TK(小室哲哉)オンリーのイベントもやってますよ。さすがに夜だと店の雰囲気と合わないから、昼からバー営業までの時間限定ですけど(笑)
スゴイ振り幅ですよね。それはそれで、めっちゃおもしろそう!
モーニング娘。もTKも大好きだし、DJしてる人たちのことも心からカッコイイと思ってますから!自分の好きなものとしての軸はあるけど、偏りすぎてないからそれぞれを生かし合えてるのかなって。だいぶ異質で楽しい空間に仕上がってますよ!
好きなものには徹底的にこだわる。そんなサキさんの熱量やブレないことを、アーティストの方やDJの方も絶対に感じてるでしょうね。
そうだとうれしいですね。ブッキングの際には自分の感覚も大切にしてますが、出演していただく方々の気持ちもめっちゃ考えます。例えば、誰と出演すると楽しいか、誰と出演したいと思ってるかなど、これまでの関係性で生まれた会話を思い出したりしながら声をかけるようにしてるんです。それプラス、CIRCUSっぽい雰囲気もMIXできれば最高かなと。
いろんな繋がりを築いてきたサキさんだからできることだし、演じる側も絶対に楽しめる!やっぱり演じる側が楽しんでるステージって、お客さんにも伝わるし、最高のグルーヴ感が生まれますもんね。でも、こんなご時世だし、イベントを企画する側としては、コロナ禍によって開催を断念せざるを得ないこともあったと思います。そんな時の心境も聞かせてもらえれば。
ちょうど『CATS』が3周年の時に、東京の『STUDIO COAST』でイベントを企画してたんです。こんな大きなハコでできる機会なんて滅多にないし、簡単に押さえられるハコでもない。私もかなり力を入れてて、第一弾の出演アーティストまでは発表してたんですが、やっぱりできなくなってしまって…。イベントを組んでは途中で断念するってことが何度も続くと、もうハンパない挫折感を味わいましたね。
「できそう!」「いや、やっぱできない…」が繰り返される状況でしたしね。イベントを楽しみにしてるお客さんよりも、主催者さん側の心労やツラさは想像を超えるものだったと思います。
世の中的に仕方のないことだし、アーティストのみんなも理解してくれてますけど、わざわざ予定を合わしてくれてるから申し訳なさでいっぱいで…。「さすがにイベントを組む気力もなくなるわー」って感じでした。最近はようやく緩和され、感染対策や人数制限を守れば実現できるようになってるのでホッとしてますが、あんなにもツライ経験はもう二度とゴメンですね。今回5周年のイベントも無事に開催できて、ホント良かったです!!
吉田サキ
アメ村のミュージックバー『CATS』の店主。18歳の頃からライフワークの如く夜のクラブ活動を続け、そこで培ったアーティストたちとの繋がりを生かしながら、HIP HOPをはじめさまざまなイベントを企画している。周囲からは「いつもスゴイ人をイベントに呼んでくる!」と言われるほどのブッキング力を持つが、本人は好きなものに対してただ真っ直ぐなだけ。これからの大阪のクラブカルチャーを支えるキーマンの一人。
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