このチームでしかできないことを、やる。daichicrewさんたちが表現する、『TASOGARE COFFEE』という圧倒的な世界。


僕らは前に出るタイプじゃないし、裏方が向いてるなって気づいたんです。その代わり、演出とかで徹底的に魅せたいタイプ。

©️TOBARU

『TASOGARE COFFEE』の“TASOGARE”とは、どんな想いで名付けたんですか?

僕らはCICTという会社なんですが、生産したコーヒーを輸出して販売する中国のパートナー企業があるんです。そこのオーナーは日本でも10年間勤めてた方で、会社員がコーヒー屋で黄昏てる光景がすごく印象的だったみたいで。日本は戦後の経済発展で喫茶ブームが始まり、そこからセカンドウェーブが来たことで、チェーン系の店は必ずオフィス街にありますよね。でも、バブルで中国にもいろんなベンチャーの街ができたけど、コーヒー屋まではついてきてなかったんです。それで、「自分の大切な時間を使ってコーヒーを飲み、黄昏るって素敵なこと。だから、daichiたちが店をするなら“TASOGARE”という名前にしたい」って。それはいい話だなと思い、店の名前は『TASOGARE COFFEE』にしたんです。

そんなエピソードがあったんですね。人それぞれいろんなことがあるけど、コーヒーを飲んでゆっくりと黄昏る時間って、大事ですもんね。

コーヒーはどこで飲むか、誰と飲むかでやっぱり変わってくると思うし、僕らは『TASOGARE COFFEE』という名前をつけた時から、空間をコンセプトにしたコーヒーブランドにしようと決めたんです。だから、コーヒーを輸出するにしても、TASOGARE空間という空間ごと輸出できたらいいなと思って。

輸出の面も、お店で提供する時もそうですが、イベントでコーヒーを提供する時も、まさに空間ごとコーヒーを楽しめる感じになってますもんね。ブランドコンセプトの話を聞いて、イベント出店であれだけの作り込みをしているも納得しました。

コーヒーの味ももちろんですが、その空間作りにも絶対妥協したくない。ただ、僕らも作ることが大好きだから、必然的にコンセプトを体現してるカタチになってますが、コンセプトに縛られてるわけじゃないんです。それは、作ることが大好きなメンバーが集まっててよかったと思いますね。

イベントで『TASOGARE COFFEE』を見る度に、毎回驚かされてますから。普通ならテント出店が多いけど、世界観が違いますもんね。

でも、僕らも初めの頃はテントやタープで出店してた時期もあったんですよ。ただ、そんな時でも自分たちで3mのロングドリッパースタンドを作り、3人のバリスタが並んでコーヒーを淹れるという、視覚的に楽しめるこだわりは貫いてました。

その演出もかっこいいですね。ちなみに、ガッツリと作り込むきっかけは何かあったんですか?

兵庫県のハチ北高原のスキー場に2日間出店したことがあったんです。雪山の中間リフトを降りたあたりにテントを組んでて、1日目もすごい吹雪でね。心配してたんですが、次の日に見にいったら雪でぺちゃんこになってました(笑)。「テントないやん!」って。そこからですね、雪に負けないテントを作るために木を使い始めたのは。

フジロックに出店した『TASOGARE COFFEE』のブースがこちら。

で、どんどんエスカレートして、フェスやイベントではありえないレベルの、立派な木の建築物になったと。しかも、作ることがみんな大好きだし。

僕らは基本的に裏方作業をすることが多いので、裏方根性みたいなのがあるんです。これまでいろんな場所で仕事をさせてもらいましたが、やっぱり裏方が向いてるなと(笑)。あんまり前に出るタイプじゃないけど、その代わりに演出とかで徹底的に魅せたいタイプ。店を始めて自分たちの得意・不得意もわかってきたので、完全に裏方のチームなんですよ。

なるほど。裏方としての表現で、見る人や来る人を楽しませてるんですね。

だから、フェスやイベントを主催してる方から「今年も来てください!」って言われると、すごくうれしい。去年頑張ってよかったなって思えるので。これは僕らの約束というか、例えばフェスやイベントに出店しても、その場で良し悪しを判断しないようにしてるんです。あの日やったことが、その後や1年後に報われたらうれしいよねって感じで。

目先の利益じゃないと。

利益もそうだし、やりたい・やりたくないだけでは決めないし、とりあえず全力で目の前のことに挑むのが僕らのスタンス。それで今までずっとやってきたので。

でも、そのスタンスで続けられるって、珍しいと思います。やっぱり店としては利益とかも大切だし。

そうですよね、でも僕らはこのスタンスなんですよ。イベントの仕込みのために3日前から前乗りしたりしてるから、店を閉める期間も必然的に長くなるし、持ち込みの資材も多いのでトラックも借りないといけない。コーヒーを売るだけで変な苦労はめちゃくちゃしてます。

それだけ全力だからこそ、カタチにできるものがあるんですよね。daichiさん的に、その裏方根性が開眼したきっかけってあるんですか?

初めてバーニングマンに行った時は、裏方根性を持った人ばかりに出会えて感動したのを覚えてます。誰かを喜ばせるために、火が吹く車を1週間走り回らせる人がいたり、1000万円以上かけて砂漠の中にスピーカーやターンテーブルを置いてクラブを作る人がいたりして、僕らのやってることの延長線上にこの人らはいるんやなって。僕らも今までやってきてよかったなって。そう思えたから、バーニングマンだけは毎年参加してます。勉強にもなるし、自分たちのやってきたことを再確認できる場所なので。

バーニングマンでの写真がこちら。 ©️TOBARU

確かにバーニングマンは、誰かのためにっていう犠牲心というか、裏方だけど表現者の方々が集まってますもんね。

なので、今日のオープニングが終わったら行きます!

えっ、明日からですか?(取材は8月28日のリニューアルオープン日)

はい(笑)。今回はオープニングと重なってしまい、砂漠に入れるのは4日間だけで自分たちの出店はできないけど、「今年も待ってるで!」って向こうの仲間にも言われてるので。店はみんなに託して、ケイ君とシミちゃんの3人で行ってきます。

いいですね!そして、チームのみんなで支え合ってるのも!ちなみにdaichiさんはDJもされてて、Twilight Clubsというユニットも組まれてますよね。結成した由縁が何かあるんですか?

Twilight Clubsは直訳すると“黄昏部”なんですが、空音やkojikoji、NEWLYが所属する音楽事務所『Broth Works』代表の清水さんとコロナ禍で仲良くなって、何か一緒にやりたくて作りました。清水さんはアーティストを支え、僕らは音楽イベントとかでコーヒーを出す、業種は違うけど双方が裏方なんですよ(笑)

そこにも裏方魂が!

Twilight ClubsはDJのイメージがありますけど、コロナ禍の時はカメラチームとして動いたり、VJもしたりで、僕らとしては音楽シーンを盛り上げる裏方チーム。だから、裏方の人間がDJしてるんです(笑)。とりあえず清水さんと一緒に何かするためのチームであり、そのための名義。清水さんにはすごくお世話にもなってるし、人間的にも本当に好きなので。

清水さんありきのTwilight Clubsなんですね。

そうなんです。それぞれが音楽もDJも好きだけど、何か誘う時には「Twilight Clubsで!」と言うと、みんな来てくれる都合のいいチームでもあるんです(笑)。1人よりも2人、3人の方が楽しいし、その人数が増えるほどに能力も発揮できるし。

まさに魔法の言葉!ちなみに1人よりも2人、3人の方が楽しいってことですが、バックパッカー時代は1人旅が多かったですよね?その時の体験とかも影響してる感じですか?

「1人旅ってすごい!」とよく言われるけど、僕はそうじゃないと思ってるんですよ。苦労して見た絶景とかも誰にも共有できなくて寂しいし、好きな時間に起きて好きな場所を巡ってるだけで、自分にわがままでいれるだけ。日本は働き方とかもあって1人旅する人も多いですが、海外にはバケーションがあるから「みんなで行くぞー!」って感じで、バックパッカーも団体が多いんですよ。

確かに、気楽さはあるけど、1人だからこその寂しさもありますよね。

1人旅してきた僕からすると、地元じゃない街でチームと動けるって、客観的に見ても楽しそうなんです。そして、チームには必ずリーダー的な人がいて、「お前がそう言うなら、俺も行くぜ!」みたいな感じで小さな組織が形成されてる。そのチームの力って、すごいなと。

じゃあ、daichiさんもそんなチームを間近で見たと。

エクアドルのキトで見ましたね。パフォーマンス集団みたいな人たちで、中庭でジャグリングしたり、いつも盛り上がって楽しそうだった。でも、僕なんか街の治安の悪さに気持ちが沈没してて、しかも歯が痛くなって帰国しようかなと思ってたから、その集団がなおさら楽しそうに見えて…。ちょうどその時にカツヤから連絡があり、「daichi今どこおるん?来月にメキシコのカンクン行くから、どう?!」と言われたから、「行きます!!」って。速攻で、コロンビアとパナマを北上して、メキシコに行きました(笑)

そのフッ軽なやりとりもすごいですね(笑)。でも、それだけ仲間が近くになることの偉大さを痛感したと。

僕が見た集団の話で言えば、休みをどう使うかは自由だけど、みんなで過ごすことを選択してそこにお金もかけ、旅をしてる。それって、みんなを引っ張るリーダー的な存在の人間がいるから旅に出ることにしたはずだし、組織として成立してるのもそう。だから、自分もそんな存在になりたいなと思ったんですよ、その時に。

その想いがあるからこそ、『TASOGARE COFFEE』のリーダーとしての今があると。

自分を犠牲にしてでも、仲間のことを考える。そんな存在でありたいなと。

先ほども率先して裏方作業をしてたり、店前の自転車を整理してる姿を見てました。今のdaichiさんの言葉、その通りだなと。

逆に言うと、僕1人では何もできないんですよ。僕1人でできることをみんなでやってるんじゃなくて、みんなでしかできないことをみんなでやってる。そのカタチが『TASOGARE COFFEE』であり、Twilight Clubs。1人でできることを1人でやっても、しゃーないですからね。全ては仲間の力、チームの力なんですよ。

僕らが目指したい姿を1つ挙げるとしたら、日本一、世界一、かっこいいコーヒーショップでありたい。まだまだ発展途上だけど、コーヒーだけじゃなく、空間全てにおいてそうありたいなって。
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Profile

daichicrew

TASOGARE COFFEE代表。19歳から海外へと旅に出て、バックパッカーとして65カ国を巡り、5年かけて世界を一周する。帰国後、昔からのダンス仲間と2016年9月23日に南船場に『TASOGARE COFFEE』を立ち上げ、フジロックやサマーソニックなど様々なフェスにも出店。2024年8月28日に南堀江に同店をリニューアルオープン。Twilight Clubs名義で、DJとしても様々なイベントで活躍中。朝から寝る前までコーヒーを欠かさない、根っからのコーヒー好き。

Shop Data

TASOGARE COFFEE

住所:大阪市西区南堀江1-16-11
営業:月〜金 10:00〜19:00/土日祝 9:00〜18:00
休み:不定休

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