『梅田羊肉串』の“働きたくない店主”尾儀洋平さんは、なぜ働きたくないのか。その本当の理由をインタビュー。


羊肉串はめんどくさいから出してなかったんですけど、常連さんがある日、「尾儀さんにとってあの串を出すにあたって、どの部分が一番嫌ですか?」って聞いてきたんですよ。

もともと中華料理屋をされていたときは、きちんと働いておられたんですよね?

働いてましたね。サボろうとも思ってなかった。

そうなんですね!

でも、あかんあかんと思いながら、だらけてしまったんですね。後ろめたさを感じながらも。

そんな時代もあったんですね…。それが、働かなくてもいけるという大発見をしてしまって。

最初はなんかわからんけど、だらだらしてても帳尻あうぞ?ってだけやったんです。でも、ビルの管理会社でパートのおばちゃんたちとのやりとりで思ったのは、売上とは労働の対価ではないなっていうこと。売上は労働の対価じゃなくて、喜んでもらった代なんやなって。

ということは、必ずしも汗水たらして働かないといけないわけではなくて。

究極、僕が何もしてなくても、僕が人を喜ばせることができればそれは売上になるし、一生懸命やっても喜んでもらってなかったら売上にはならないってことに気が付いたんです。

なるほど…!

例えば料理も、中華料理屋の頃は自分が市場まで足を運んで、ちょっとでもいいものを一円でも安く仕入れようって思ってましたけど、でも今は労働を削減することにコストをかけてるんです。配達してもらうとその分コストはかかりますけど、僕の労働は削減される。そうすると、そのリソースをお客さんに喜んでもらえることに回せるわけです。

ご自身が遮二無二がんばるんじゃなくて、効率よくお客さんに喜んでもらえる仕組みにされてるんですね。

僕の労働をサボる分、原価をむっちゃかけることができるんです。究極、この店はお客さんが何十人来ても回るんですよ。

尾儀さんのワンオペでもですか?

はい。どんな簡易な飲食店であっても、一人で無理なく対応できるお客さんの数って6~7人ぐらいなんです。あるじゃないですか、店員さん今忙しそうやからビール頼むの後にしようか、みたいなこと。それって単純に機会損失で、客単価が下がっちゃうんですよ。なので飲食店の場合、店員一人あたりの売上の上限ってあまり高くないんです。

たしかに、人数は増えても客単価が上がらなければ、無駄にただ忙しいだけですよね…

それが、うちはまったくないんです。何人来ても関係ないので。僕がすることは、入店されたときに人数と時間をつけるだけ。何人来ても同じです。だから、ふつう以上に原価をかけてもいけるんですよ。

すごいビジネスモデルですね。

ありがたいですね、サボりたい一心でここまできました。

でも、羊の串は最近復活されたんですよね?

そうなんですよ。めんどくさいから出してなかったんですけど、あれないんですか?って言われることはちょくちょくあって。そのたびに、まだ時期尚早やなとか言うて適当に逃げてたんですけど、常連さんがある日、「尾儀さんにとってあの串を出すにあたって、どの部分が一番嫌ですか?」って聞いてきたんですよ。

おお!どこがボトルネックかを聞いてこられたんですね。

で、僕はなんせ串打ちやと。あんなもん100本も200本もやってられへんって答えたんですね。そしたら彼が、「焼くのは大丈夫なんですね?」って聞くから、まあ焼くのはそんなに大変じゃないなって答えたら、「じゃあみんなが串打ちやればいいんじゃないですか?」って言うたんです。天才か、君は!って。

すごいですね。

僕のやりたくないことはやらずに済んで、みんなの願いを叶えられる、完璧なアイデアやと、そういうことになったんです。それをTwitterとインスタにあげて、「やりたくないからみんなでやって」って書いたらわーっとバズりました。

店名になっているにも関わらず、長らく幻の存在だった羊肉串。柔らかくてスパイスが効いていて、めちゃくちゃ美味です。

Twitter見ました!本当にお客さんがやらないといけないんですね?

やってもらってますね。一本だけ僕がレクチャーするんですけど、あとは自力で。ちゃんと打ててないと、これはあかんわ、焼かれへんって突き返します。

常連さんを見よう見まねで、私も串打ちに挑戦。全然うまく刺せずに、2回ほど突き返されました。

厳しいですね!羊肉串は勝手に出てくるシステムではないんですね?

一声かけてもらってますね。以前来られた方で、やりたそうにされてたんですけど、何も言わなかったので出さなかったんです。その後に来られたお客さんがやりたい!って言うたので出したら、一緒に串打ちしてはりました。

誰かの注文に便乗するのは有りなんですね?

全然有りですね。みんなでやってもらったら、僕も説明が一回で済むので。

わかってもらえない人がくると、すごく場を保つのが難しくなるんです。だから、仲良くなれそうにない人には、いかにきっちり嫌われるかが大事やと思ってます。
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Profile

尾儀 洋平

中華料理店に勤務し、中華料理店を経営した後、ビル管理会社を経て2019年大阪・梅田に『梅田羊肉串』をオープン。「働きたくない店主の店」を標榜し、ドリンクはセルフ、料理は勝手に提供という独自のスタイルで営業。ひっそりフェードアウトさせていた羊肉串は「お客自身が串を打つ」ことで復活、そのことを告知したツイートが大バズりし話題を呼ぶ。現在唯一情熱を傾けているものはスマブラで、スマブラオフ会等も開催。

Shop Data

梅田羊肉串

料金システム:飲み放題1,000円/1時間、永久に出てくる料理1,000円/営業時間
営業時間:店主の興が乗ってきたら~労働意欲がなくなるまで (ツイートで告知)
定休日:日曜・祝日

入店にはTwitterかInstagramのフォローが必須。

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