【私的録-MY PRIVATE SIDE】 キーワードはCLASSIC ALWAYS!地元・堺の思い出の地を巡りながら聞いた、『IMA:ZINE』TANY/谷篤人さんの、今。
『IMA:ZINE』は“今を残していく”という意味がある。だから、僕自身もまた新しいことに挑戦して、自分にできる“今”を残していきたい。

『IMA:ZINE』にジョインされてからの7年で、肩書きや内面、業務的な部分も含めてたくさんの変化があったことを伺いました。そのどれもが谷さん自身を進化させてきたものであり、挑戦でもあるのかなと。ちょっと青臭い言葉ですが、挑戦に対する谷さんの話も聞かせてもらいたいです。
昔、買いたくても買えなかった裏原ブランドやスニーカーがあって。もちろん、オンラインでものが買えない時代のことですが、ひねくれの美学でアウトレットでB級ブランドの靴を買って「それなんのモデル?」的なハズし方や、デカ履きしたり。ジャストサイズのヴィンテージデニムを買えなかったから、安い38インチの505を手に入れて、ジャイアントデニムの履き方をしたり。これはすべて、買いたいもの、表現したいものが手に入らなかったからなんです。ネガティブに見えるかもしれないけど、それでしかできないファッションではないかって、ポジティブに考えていました。“流行りものが定規とすれば、天邪鬼は分度器”みたいな。そんな点から見ても、雑誌『カジカジ』の街の眼は、その時代を表していたように思います。
ひねくれの美学と言ってますけど、自己流でファッションを楽しんでたと。
思い返せば、中学の時はスポーツで挫折してからちょっとグレ始め、制服をいじり出したり、学校にも適当に行くようになって…。高校の時は日本人が誰もいない海外に行って、様々な国籍の人、食、遊びを経験して自分なりの表現を見つけようとしていていました。自分はやりたいことをやらないと気が済まないタイプで、アンダーグランドの世界も見てみたいと思い、海外から帰ってきてそっちの世界を経験したんです。でも、人生で1番大きな経験と失敗をして…。僕はどんなこともやりたい、会いたいって思ったらそれができるまで喰らいつくくらい、ある意味でガメツイ。だから、人生最大の失敗をした時に、無謀で、当時では到底叶わないであろう夢を決めたんです。それは大好きなShawn Stussyと仕事をすること。昔思っていた、雑誌に載ることは恥ずかしいことっていう考えも捨てて、一気にオーバーグラウンドで活躍してやろうって。関西で誰よりも雑誌のカバーになること、オーバーグラウンドで目立つことを目指していました。なぜその夢が全て叶ったかというと、失敗したところでやめてしまうから“失敗”になるわけで。成功するところまで続ければ、それは“成功”になる。これが、僕が何度失敗をしても諦めなかった言葉ですね。
谷さんの根っこには、その言葉と反骨精神があると。
BEAMSで働き始める時も、その言葉と反骨精神をプラスに作用させるというか、「ここで一番目立つ存在になる」「ここで有名になる」と覚悟を決めて、突き進んできました。『IMA:ZINE』にジョインしてからも自分の根っこの部分にはそれらがありましたし、それが挑戦というカタチでいろんなアウトプットに繋がってるとは思います。でも、反骨精神の矛先が変わる転機が2年前にあったんです。

矛先ですか?
一般的な反骨精神って、世の中や外部に対してのもので、パンクと呼ばれるものかもしれないけど、自分に対しての反骨って何かなと考えてる時があったんです。その時に、あるデザイナーさんからいただいた言葉が、“ゴス”。ゴスロリとかで使われてる言葉ですが、自分に対しての闘争心を燃やすとか、自分への戦いという意味があるんです。反骨精神でもパンクと“ゴス”では矛先が違うし、今は世の中や他人ではなく、自分を奮い立たせるための行動を起こさないといけないなと気づかされました。だからこそ、周りの人たち対自分をより意識するようにもなりましたし、スローダウンして一度戻ってみたり、店頭立ちをしたりというのも、自分への戦いを挑んでるってことなんです。
“ゴス”の意味を初めて知りました。外ではなく内に向けて戦いを挑む、今の谷さんの背景にはそんな想いもあったんですね。こうやって話を聞いてると、常に思考を巡らせてるというか、谷さんの内と外で思考が旅してるんだなって感じます。
同じ毎日じゃつまらないし、ちょっとした違和感がないと刺激もないじゃないですか。精神的に何かを変えたいわけではなく、違和感に気づくことで新しく見えてくるものもありますからね。40代50代は守りに入ることが多くなる歳だけど、スタッフと一緒に店頭に立ってる日々にはいろんな発見があるんですよ。わが子でもおかしくない歳のお客さんと話すことも多いし、自分が昔してたファッションが今またリアルに周回してきてるから、なおさらおもしろいなと。昔話をするんじゃなくて、今を大切にできる話をして、「いつか困ったり悩んだ時は、自分の好きな場所を見つめ直したら、心も整理できるようになるかもね」って伝えたり。自分が今できることには、こういうこともあるのかなと。

そういう対話、めちゃくちゃ素敵やなと。谷さんに憧れてる人は多いし、言葉として残るのが良いですよね。例えば何年か経って、その時着てた服や購入したアイテムを見て言葉を思い出したりもするだろうし。
何か聞かれたり質問された時は、自分なりの言葉で返したいんですよ。ありきたりなものじゃなくて。それはスタッフにもお客さんにも同様で、今の子たちが生きる線路の中で、また違う線路を見つけたり、作ったりするきっかけにもなればと思うし。
谷さんの中に、また新たな役目ができてるってことですね。
自分が今までやってきたことを他のスタッフも楽しめる状況になってきてますし、代表の岩井さんも『City Lights:Donuts』という新しい挑戦を始めました。『IMA:ZINE』は“今を残していく”という意味があるので、僕自身もまた新しいことに挑戦して、自分にできる“今”を残していきたい。

これまでがあって、これからの今がある。“CLASSIC ALWAYS”な谷さんの新しい挑戦、僕らもめちゃ楽しみにしてます!
ここ数年の僕にとっては、戻ることが新しいことだったし、反骨精神の矛先を変えたのもそう。言葉から体現が生まれ、その体現がまた新しい言葉にもなっていくだろうし、意味のある深いコミュニケーションができるようになっていくと思うんです。僕はこれからの新たな挑戦を通じて、そういった部分も大切にしながら、言語化して今の子に伝えていきたいと思ってます。そして、谷はいつも好きなカッコをしてるなって。若い子が見ても、楽しく生きてるなって感じてもらうことも、僕の役目ですね。

谷 篤人
1978年生まれ、堺市出身。25歳の時にBEAMSでアルバイトを始め、関西プレスを経て東京に異動し、バイヤーを担当。名物バイヤーとして、数々のプロジェクトを手がける。2017年に退社し、大阪・中津のエディトリアルストア『IMA:ZINE』の立ち上げメンバーとしてジョイン。ファッションへの愛と自身の哲学、想いを込めた唯一無二のプロダクトを生み出し続ける、関西ファッションシーンのキーマン。
IMA:ZINE IG : @imazine_osk