お笑い芸人・九条ジョーが描く<レ・ヴァン>の未来。知られざるコンビ結成の裏話と撮影を終えての感想を聞きました。
相方の真っ直ぐな性格に惹かれてコンビを結成。ここから新たにスタートして、自分の原点でもあるM-1グランプリで必ず優勝したいです。
新コンビの発表を控えているということで、そのお話を聞かせてください(※撮影は新コンビ発表の2日前)。
九条:新しい相方は、元<モンローズ>の宮本勇気さんです。以前いた事務所を退社して1年間フリーで活動した後、僕とコンビを組んで吉本に所属することになりました。芸歴は1年先輩で、年齢は3つ上くらいかな。関西の方はあまり知らないかもですが、とっても魅力的な方です。
どういう経緯でコンビを結成したんですか?
九条:ピンでの活動期間中、有楽町の劇場の支配人さんが気にかけてくれて、ありがたいことに時々東京で出番をいただいてたんです。そんな時、東京吉本の<ナイチンゲールダンス>のヤスっていう後輩が主催で「九条ジョー相方探しライブ」を開いてくれて。僕と面識のない先輩や後輩を集めて、即興のコンビを組んでネタを披露するライブをさせてもらったんです。宮本さんとはその時初めて出会いました。
そこで初めて出会ったんですか!そんなことあるんですね。
九条:当時は僕も本気で探してたっていうより、ピンで劇場に上がりたい気持ちの方が強くて。ライブの雰囲気優先で、もし本当にいい人がいたら考えようくらいの感覚でした。だけどお笑いをやるからには1度本気で相方を探したかったし、M-1決勝の舞台に立てずに終わるなんて、僕の人生においてはあり得ないことだと思っていたので。運よく波長の合う方がいて、それが宮本さんでした。
ちなみに宮本さんはどんな方なんですか?
九条:昭和の俳優みたいな二枚目感があってカッコいいです。
めっちゃカッコいいですね!衣装のテイストも変わって、これまでのイメージと全然違います。
九条:一瞬でもコウテイがよぎらないようにしたくて、本当は犬とかとコンビを組みたかったんです(笑)。アパレルの店員さんとか男女コンビとかね。でも宮本さんが隣にいると雰囲気も全然変わるし、前のコンビを越えられると確信しています。答え合わせはもう少し先になると思うけど、僕は絶対に越えていけると思います。
イーグル:組む時に重視したポイントはある?
九条:僕に無いものを持ってるって感じたからかな。イーグルは僕をよく理解していると思うけど、内向的な部分があったり変なトゲがあったり、かと思えば包み込むような部分があったり、結構特殊な性格なんです。対して、宮本さんは「おはようございま〜す!」って豪快に挨拶したり全力でボケたり、僕にはできない振る舞いを素でできる天真爛漫な人で。色んな芸人さんに愛されている、とにかく斜に構えない真っ直ぐなところに惹かれました。悪く言えば、チューニングのスイッチが1つしかない単純人間だけど(笑)、それが繊細な僕と真逆でいいなと思ったんです。
九条さんには無いものを持ってる方なんですね。真逆であることで、互いに足りない部分を補ったり双方の人間性をより引き立て合えたりすることができるのかもしれません。
九条:とはいえ組んだばかりで、まだ彼も迷いまくってる段階です。宣材写真も今までにない髪型にしようって言って、前髪を3本垂らして『ワンピース』のシャンクスみたいになっちゃってるし(シャンクスは顔に傷が3本)。コウテイの時も相方がツンツンの髪の毛に辿り着くまで4年かかったので、気長にやっていこうと思ってます。宮本さんの前髪3本、あれはかなり迷ってますよ(笑)
イーグル:……さっき誰も何も言わへんかったけど、僕はまともにあれをやってたら止めたと思う。みんなカッコいいって盛り上がってたから正直どうしようかと思ったわ。
普段からそれをカッコいいとしてる人やったら申し訳ないなと思って、あえて触れずにいきました。
九条:普段はベーシックな髪型なんで安心してください。僕が変なツッコミをするから、パッと見ただけでボケってわかる髪型にしようって言ってたら、いつの間にか前髪が3本垂れてまして(笑)。芸人ってインパクトがめっちゃ大事で、いかにお客さんに覚えてもらうかなんです。だから今まで見たことがない、インパクトのある髪型を突き詰めて行ったら、一旦シャンクスに落ち着きました。
宣材写真は同期の田津原理音に撮ってもらっていて、「めっちゃいい感じやん」ってみんなで宮本さんをおだてながら撮りました。最初は、本人でさえ「これ大丈夫?」って不安な顔をしてました。マジで今日の撮影中の僕と一緒ですよ(笑)。不思議なことに最近あの髪型を見慣れてきて、「カッコええやん」とさえ思えるようになりました。僕も“九条ジョー”という芸名を付けて、初めて九条ジョーとして振る舞えるようになったので、宮本さんもあの髪型で過ごしているとシャンクスっぽい動きができるようになるのかもしれません。
イーグル:スーツはダブルボタンで結構クラシックな感じやな。
九条:相方の顔が昭和の俳優みたいなので、スーツはクラシックな仕立てとカラーを選びました。ガムシャラな大阪感は残しつつ、カッコよさもあるスタイルにしています。
新コンビでも、九条さんは今まで通り“九条ジョー”としてやっていくんですか?
九条:変えられなかったですね。本名で芸人をやることは絶対ないし、結成のタイミングで改名も少し考えたけど、すでに九条ジョーで世に出てしまったっていうのもあって。僕自身も“九条ジョー”に助けられて生きてきたので、このままやっていきたいと思ったんです。
むしろピンで活動してからの方が、九条ジョーとしての濃度が増していってるように思います。
九条:それはファンの方にも言われます。「ピンの方が好きです」って言ってくださる方もいたりして。相方を解さないぶん僕の脳みそがそのまま投影されているので、“らしさ”は強くなっているのかなと。次は新しい相方と、新しい漫才で、九条ジョーの要素を盛り込みつつ<レ・ヴァン>ならではのスタイルを確立しないといけない。それはすごく難しくて大切な作業だなと思います。
コンビの世界観を作りつつ、自分は九条ジョーでいないといけない。すごく難しいですね。ちなみに<レ・ヴァン>というコンビ名は、どうやって考えたんですか?
九条:相方に候補のコンビ名を言ってもらって、1番しっくりきたものを選びました。途中で崩しすぎて、<ストレンジサンダーマウンテンファイヤー>とかも候補に上がりましたけど、それは選ばれなかったですね。
どちらが候補を出したんですか?
九条:相方ですね。コウテイの時も相方だったんですよ。ネタとかプロデュース、世界観作りは全部僕が担当してるけど、コンビ名だけはなぜか相方が考えてますね。
ちなみに何か意味はあるんですか?
九条:実はめちゃくちゃ意味があるけどまだ伏せておこうかな。いつか言うかもしれないですけど。
いつか教えてくださるのを楽しみにしています。
イーグル:カッコいい名前っすね。
九条:なんや。1つだけコメント差し込みやがって。靴履いてないクセに(笑)
(笑)。話を聞いていると、九条さんはコンビのこだわりというか、漫才へのこだわりがすごく強いんですね。
九条:僕はピン芸人をやるためにお笑い芸人になったのではないので。もちろん解散してピンで結果を残したいと本気で思ったから、ピンの期間も全力を尽くしました。だけど、そもそも僕が芸人を目指したのは、幼少期から見ていた漫才が好きだったことが原点で。引きこもり状態だった高校生の頃、当時のM-1で観た千鳥さんと笑い飯さんの漫才に感銘を受けたんです。それが僕のルーツであり、辿り着く先なのかなと思っていて。そこから派生する物語もたくさんあると思うけど、自分の思いに決着をつけるためにも、全力で漫才をやりたいと考えています。
2人がどんな世界観でどんな漫才をされるのか本当に楽しみです。
九条:<レ・ヴァン>のお披露目単独として、東名阪でツアーをやるんです。5月28日に東京の幕張イオンモール劇場、6月1日に大阪のSPACE14(※共に終了)、6月22日に名古屋の大須演芸場で実施する予定です。コンビを組んですぐ単独ライブを打つなんて前代未聞だと思うけど、興味があれば足を運んでください。
ネタ作りは九条さんが担当されるんですか?
九条:もちろん前のコンビと同様僕が書きますよ。だけど今までと大きく違うところは、ネタを作る場所にずっとおってくれることですかね。メモを眺めて「うんうん、そのボケいいねぇ!」とか言ってくれるんです。ほんと熱くておバカでしょ(笑)。「今のいいねぇ〜」とか合いの手を入れてくれるから、楽しくネタ作りができています。積極的にネタ作りの場に来てくれて、今までとは全然違う雰囲気でやれているなと感じます。
<レ・ヴァン>として今後の展望を教えてください。
九条:M-1優勝1本です。決勝の舞台じゃない、僕は優勝したい。それだけですね。<レ・ヴァン>はそれを可能にするコンビだって信じています。
九条ジョー個人としてはいかがですか?
九条:前回のインタビューでも話しましたが、個人としてはイーグルとファッションブランドを立ち上げたいです。今はちょうどその構想を練っている段階ですね。先日個人のファンクラブでポップアップをしたんですが、その時イーグルに協力してもらってTシャツを作ったんです。少しだけブランド化の実現に近づいたのかなと。いつか2人で服を作って、そのモデルを一緒にやれたら最高ですね。……これ全然ボケなかったけど大丈夫ですか?
大丈夫です、むしろありがとうございます(笑)。最後に、東京だからこそやりたいことは?
九条:根詰めでお芝居しかしてなかったから全然遊べてなくて、近々大遊びしたいです。
イーグル:1回僕も日程合わせて東京行くから、大遊びしようぜ。
九条:それいいね。
イーグル:でも我々の大遊びってどんなんやろうな。
九条:絶対小遊びですよ。我々の遊びなんて。
キャバクラとか、そういうお店は興味ないんですか?
九条:2人とも内向的やからなぁ。人見知りしちゃって、よそよそしい顔でモジモジしてそうですね。大阪にしか馴染みの古着屋さんがないから、イーグルと遊ぶなら高円寺とか下北沢の古着屋を一緒に回りたいな。東京でいい古着屋を見つけたいっすね。
九条ジョー
NSC大阪35期、今年2月に東京へ拠点を移したお笑い芸人。コンビ解散、ピンでの活動を経て5月2日に新コンビ<レ・ヴァン>の結成を発表。芸人としてはもちろん、俳優やモデル、作家としても活躍。自身が運営する公式ファンクラブ「ボクノ終脳室」も要チェック。
公式ファンクラブ:https://www.kujo-jo.com/
イーグル野村
石川県出身。端正な顔立ちが特徴の<THE モンゴリアンチョップス>看板スタッフ。「NGなし」を合言葉に、どんな時も身体を張れる貴重な人材。九条ジョーとは2018年に知り合い意気投合。九条のメディア出演時のスタイリングやグッズ制作を担当するなど、活躍の場を広げている。