古着を生まれ変わらせて、新たな世界観を広げていくブランド<Chinatsu Aoyama>。デザイナーの青山千夏さんのもとから旅立つ、1点ものたちが見せてくれる景色とは。
年代や状態によってはびっくりするくらい高値のアイテムがあったり、90年代以降のレギュラーものがフォーカスされるようになったり、人それぞれの好みや見方でコーデに取り入れられている古着。ファッションのトレンドが移り変わってもずっと支持されてるし、ここ数年でさらに再燃したというか、古着のリメイクアイテムもどんどん登場してます。そんな中でも、独自の存在感を示してるのが、アップサイクルブランドの<Chinatsu Aoyama>です。うねうねしたメロウ加工がポイントで、それだけでも圧倒的に可愛いんですが、ディテールやシルエットも含めると、古着にも新たな世界観がやってきたなという感じ。「その古着の個性を生かしながら、生まれ変わらせたい!」と語るデザイナーの青山千夏さんに、ブランドのこと、大切にしてること、夢のことなどについてインタビューしてきました。古着と向き合いながら1点、1点作り上げていくアイテムを手に取って、いろんな感情と出会ってもらえたら最高だし、そのアイテムだって喜ぶのかなと。彼女のパーソナルな部分も知ってから、<Chinatsu Aoyama>の世界観をみんなにも楽しんでもらえたらと思います。
同じ型での量産はしない。1点、1点、ニュアンスやデザインを変えてるのも、古着とリメイクならではの楽しさを感じてもらいたいから。
<Chinatsu Aoyama>は、ほんとにすごい人気ですよね。アップサイクルブランドとして誕生した経緯って、どんな感じだったんですか?
自社の古着屋『森』が大阪の中崎町(現在は京都の河原町に移転)にあった時、私は販売員をしてたんです。いろんなアイテムがある中で、色とか柄はめちゃ可愛いのに売れ残ってしまうニットがあって…。そのままセールになるのも惜しいし、誰の手にも取られないのがかわいそうに思ってしまったんです。そんなニットをどうにかできないかと考え、試しにうねうねしたディテールのメロウ加工を施して販売してみたら、すぐに完売!そこから少しずつ作るようになっていきました。
これまで手に取られなかったニットが、生まれ変わったんですね。
「手に取ってもらえたらいいな!」と思ってましたけど、売れた時はびっくりの気持ちとうれしさが入り混じったような感覚でしたね。会社としてもトライしていいよということで、そのまま2020年の秋くらいから気になったアイテムをリメイクして、店頭に並べてを繰り返しながら、2021年5月に正式に<Chinatsu Aoyama>としてブランド化できました。
これまでデザインとかリメイクの経験もあったんですか?
全然ないです(笑)。デザインやリメイクがしたいっていう気持ちも別になかったんですけど、アイテムを見ながら「どんなものを作ろうかな」って考えてるうちに、ワクワクが止まらなくなっちゃって。どんどんのめり込んでいくようになったんです。デザインは私が考えて、実際のリメイク作業は併設してるリサークルスタジオの縫製の方にお願いしてます。最初の頃は販売サイクルも3点ずつとかだから縫製の方も1人でしたが、今は毎月60点くらい作ってるので3人体制になりました。
毎月60点も!しかも1点ずつ手作業ですよね?
そうですね。<Chinatsu Aoyama>はメロウ加工がポイントのブランドなので、どのアイテムにも施してますし、全く同じデザインのアイテムはないんです。古着ってそもそも1点ものだから、それぞれの個性を生かしつつ、他にはない新しいデザインに生まれ変わらせることが私の中でのこだわり。なので、同じ型での量産はしないですし、例えば同じデザインでスウェットを10枚作るとかもないんです。微妙にニュアンスやデザインを変えて、古着とリメイクならではの楽しさを感じてもらえればと思ってます。
完全な1点ものですね、それは。デザインを考える時は、どうしてるんですか?何かノートにスケッチしてたり、パソコンでやってるとか。
デザインのイメージは完全に手描きしてます。絵がめちゃ下手くそなんであんまり見せたくないんですが、こんな感じです…。
えっ!?ハガキサイズくらいの紙に描いてるんですね!
はい(笑)。iPadを使いたいなとは思いつつも、リメイク始めた頃から変わらずで…。頭の中のイメージを絵にして、サイズ感やメロウ加工で使う糸の色とかも記して縫製の方に細かく伝えてます。
なるほどー!あの可愛いアイテムはここから生まれてるんですね。でも、手描きの方が微妙なシルエットとかニュアンス的な可愛さが伝わりそう。iPadでペンタブを使うと便利かもしれないですが、線がキレイになり過ぎる気もしますし。<Chinatsu Aoyama>は、アイテム1つひとつに世界観が生まれてるブランドだと感じてて、縫製の方々とその感覚を共有するのは大変な時もあったんじゃないですか?
今はすごく理解していただいてて、私がイメージしてる以上の仕上がりになることも多いんですが、最初は大変でしたね。サイズ感をすごく大切にしてるので、アイテムによく取り入れてるパフスリーブも、微妙にサイズ感が違うとシルエットや仕上がりも全然変わってしまう。ほんとに微妙な差だけど、そのこだわりは絶対に譲れない。やっぱり一番可愛い状態で手に取ってもらいたいから、作り直してもらうことも最初の頃はありました。
こだわりの積み重ねで、あの世界観が生まれてるんですね!アイテムの購入方法も特徴的だなと思うんですが、その話も聞かせてもらえれば。
<Chinatsu Aoyama>のアイテムは、東京・名古屋・大阪・福岡を巡回しながら行う毎月2回のポップアップと、年2回のソロエキシビジョン、オンラインで購入していただくカタチになってます。
あえて店頭に常時並べないのには、何か理由があるんですか?
おかげさまでオンラインはリリースすると1日経たずに完売してしまいますし、ポップアップ形式で各地のお客さんと対面で接客しながら販売もしたいので、店頭分まで商品点数が追いつかないんです…。いつもの60点に加えて、ソロエキシビジョンの時になるとトータルで毎月200点くらい作るので、めちゃ大変で(笑)
同じデザインもないし、そりゃ店頭分まで作れないですよね…。そもそもブランドとしても大量生産志向じゃないですし。だからこそ、お客さんも1点ものとの巡り逢いを楽しんでる気がします。
ポップアップやソロエキシビジョンを目掛けてお客さんに来ていただけるのが私のやりがいにもなってますし、そのためにも頑張らないと!って感じです。お客さんはほぼ女性で、私は今25歳なんですが、同世代の20代を中心に最近は10代の子も来てくれてます。「お金貯めて買いに来ました!」みたいな声も聞くと、もううれしさが止まらなくなっちゃいますね。
25歳!服を作り始めて3年と少しで、これだけたくさんの人に共感してもらえるブランドに育っていってるのはすごい。最初に作ったアイテムから完売続きでしたけど、ブランドとして跳ねたきっかけって何かあったんですか?
ブランドとしては徐々に浸透してて売れ続けてたんですが、インスタが急にバズったんです。私の投稿したものがある日、1万5000いいねがついてて…。おすすめに取り上げられて一気にバズった感じで、そこからの投稿もバズり続け、フォロワーさんが1年で約2万人も増えました。
それだけの共感を生めるポテンシャルが、青山さん自身にもブランドにもあったってことですね。
通知が止まらなくて、ほんとびっくりでした。「1週間で150万リーチがありました」っていう通知も来たりして(笑)。実は2023年4月の会社の総会で、「今期の目標はフォロワー3万人です!」と発表してたんです。ブランドのアカウントはもう達成し、私個人の方ももう少しで達成できそうだなと。数字的なものが全てじゃないですが、コツコツやってきたことがたくさんの人に共感されてる証でもあるので、素直にうれしいし、<Chinatsu Aoyama>というブランドをもっともっと大切に育てていきたいなと思ってます。
青山 千夏
アップサイクルブランド<Chinatsu Aoyama>のディレクター&デザイナー。『THE TINY SHOP by MORI』の買い付けやオリジナルアイテムの企画・デザインなども担当。高校卒業後、幼い頃から憧れていた『SUPER SPINNS』で販売員のキャリアをスタートさせ、『森』を経て現職に。メロウ加工を施した愛らしい世界観の<Chinatsu Aoyama>は、同世代の女性を中心に圧倒的な支持を集め、ブランドコラボやロサンゼルスの『フレッド・シーガル』でも展開されている。パーソナルカラーは、推しの色でもある青。
Instagram:@chinatsu_aoyama/
Instagram:@the.tiny.shop.bymori
https://mori-store.net/