レザーアイテムの新境地を開拓する<GOOD KARMA DEVELOPMENT>。橘さんが貫く服作りの真髄と、真紀さんとの今を楽しむ毎日について。


街で見かけたから追いかけて、ショップの中で偶然を装ってアタック。それから25年、一緒に歩み続けてきた真紀ちゃんは僕の一番の理解者であり、今を楽しみ合える存在。

ここからは真紀さんにも加わっていただき、2人のことについてもいろいろと聞かせてもらえればと思います。店を閉めてブランドを立ち上げてからの橘さんの変化を、真紀さんはどう感じますか?

真紀:やっぱり毎日楽しそう。店をしてる時もそうでしたけど、その時よりもさらにイキイキしてる感じはあります。会う人、会う人に、楽しそうですねって言われてるもんね?

:まぁ、そやなぁ。だって、ほんまに楽しいし(笑)

一番身近にいる人がそう感じてくれてるってことは、素敵ですよね。本人を前にしてアレですが、橘さんにとっての真紀さんの存在とは?

:そりゃ、すごく大切で重要な存在ですよ。アドバイスを求める時には、いつも的確に返してくれるし、僕のことをちゃんと理解してくれてるなって思います。このネルシャツを着て出かける時も「どう思う?」って聞いたら、はっきりと「ダサい!」って言うてくれますから(笑)

真紀:だって、ダサいもん(笑)

:このダサさがイイから、真紀ちゃんは正しいんです。

(笑)。変に気を使われるより、ええですよね。ちなみに2人は出会ってどれくらいなんですか?

真紀:出会って25年で、結婚して20年目ですね。

その馴れ初めの部分も聞きたいんですが、出会いのきっかけは?やっぱり橘さんからアタックしたんですか?

:僕からですね。当時、アメ村の『NYLON』で働いてて、そのビルの上階にある美容室で真紀ちゃんが働いてたんです。ずっと可愛いなぁと思ってたけど、会ったら「お疲れ様です!」と挨拶するくらいで、特に関係が進展するようなきっかけはありませんでした。でも、『NYLON』を辞めようと思った時に、このまま辞めてしまったら会えなくなる!ご飯に誘うしかない!当時はSNSもないし、挨拶しかしたことがないからどう誘うか悩んでたんですが、休憩中にタバコ吸ってたら歩いてる姿を見かけたから追いかけて、バレないように同じショップに入ったんです(笑)

このチャンスは逃すまいと(笑)

真紀:私はちょうど休みで、買い物してたところ。

:入ったのは『PANGO PANGO』っていうエスニック系のショップ。僕とは全くジャンルが違うんですが、真紀ちゃんが右から服を見てたので、僕は偶然を装って左から見て、「あ!お疲れ様です!」って感じで。

真紀:あの時はビックリしましたね。えっ、この人こっち系のショップにも来るんやって(笑)

:当然初めて入ったショップですよ。で、気合を入れて「今日はお休みですか?もしよかったら今度ご飯行きませんか?」って、誘いました。どういう返事が来るか緊張が走ったんですが、「はい、イイですよ」って感じで返ってきたんです。

それはガッツポーズですよね!真紀さんは当時のこと覚えてますか?

真紀:覚えてますよ。あー、チャラそうな人やなって(笑)。美容室の後輩たちとコンパした話も聞いてたので、別に悪い印象はないけど、遊んでそうやなと思ってましたね。

:まぁコンパはしたことあったけど、マジで遊ぶお金はなかったもん。一人暮らししてたし、生活もカツカツで、付き合ってからも真紀ちゃんにはよく服を買ってもらってました(笑)

真紀:だって、毎週同じ店に服を見に行って試着してるのに、買わないんですよ。私は当時店長してて、それなりの収入もあったので洋服をプレゼントしたり、ご飯代を出すことも多かったかな。

真紀さん、すごく有名な美容師でしたもんね。橘さんのアタックで付き合うことになり、そこから2人で『Boutique Hermitage』をスタートするまでは、どんな経緯があったんですか?

:ちょっと長くなるんですが、僕は『NYLON』を辞めてから東心斎橋の『サンスユニック』っていうセレクトショップで働き始めたんです。でも、結局1年くらいで店が閉店することになり、知り合いのメーカーさんが心配してくれて「橘君、うちに来る?」と誘ってもらえたので、そのつもりだったんですが…。働くことが前提で、念のため社長との顔合わせで軽い面談をしたら、落とされてしまって(笑)。

真紀:この人、面接では落とされるタイプなんです。

:マジか!?って感じで、次は求人雑誌で見つけた古着の卸屋さんに面接に行ったら、また落とされてしまって…。

前職の『NYLON』の面接に受かったのは、奇跡だったんですか?(笑)。喋りもおもしろいし、人当たりもイイと思うんですが…。

:これはね、傾向があるんですよ。髪が長めの時の面接は、100%落ちる。『NYLON』の時は、短髪やったんです(笑)

真紀:知り合いの紹介で落とされるとか、よっぽどですよね。当時、面接落ちそう顔って、よく言ってました(笑)

:面接落ちそう顔なんで、もう自分でやるしかないなと。ちょうどそのタイミングで、『NYLON』を辞めた先輩から連絡があり、アメリカに買い付けに行くってことで一緒に行かせてもらったんです。その時はボストンやニューヨークを回ってたんですが、まぁビックリするようなものといっぱい出会いましたね。イームズのサイドシェルのチェアが10脚も出てて、値段聞いたら5ドル!全部買うから値引きしてって言うと、30ドルになったり(笑)。リーバイスのBIG Eのジージャンが5ドルとかで転がってたり。アメリカやばいなと。

それは、お宝がざっくざく状態ですね。

:2000年代初頭の頃で、僕らが回ってたエリアやフリマには日本人バイヤーがいなかったんですよ。まぁ、イームズのチェアを安く仕入れても輸送費がかかってしまって、そこまで大きな利益はなかったですが、この経験をきっかけに買い付けで生計を立てるようになりました。スリフトやフリマ、ディスカウントショップを巡って買い付けたアイテムを、中古のパソコンを買ってネット販売してたんです。その頃からちゃんと稼げるようになったので、真紀ちゃんにも恩返ししてましたね(笑)

真紀:今までとは立場が逆転です。とにかく家具とか古着とか、すごい買い付けてましたよ。

ってことは、その流れで店を始める感じに?

真紀:美容師を辞めて服屋さんで働きたいから、早く店をしてほしいってずっとお願いしてたんです(笑)

:早く!早く!っていうプレッシャーもありつつ(笑)、自分の中でもイイものを仕入れることができてる実感があったので、これならええ店ができるなと。それで2005年にオープンしたのが『Boutique Hermitage』なんです。当時はアメリカの古着やハイブランドで構成しつつ、<HEALTH>や<sisii>、<ink>といった国内ブランドにも力を入れるようになり、店のスタイルが出来上がっていきました。

なるほど、そういう流れがあったんですね!橘さんは現在<GOOD KARMA DEVELOPMENT>の活動に取り組んでいらっしゃいますが、真紀さんはどのような関わりを?

:経理関係をお願いしたり、あとは「これ、どう思う?」的な感じで意見を求める時に登場してもらってます。

真紀:だから、基本的には何もしてません(笑)。16歳から美容師を始めて、エルミタージュ時代までずっと働いてたので、今はのんびりと過ごしてるんです。

:でも、ずっと忙しいって言うてるよな。

真紀:やることはあるんよ。家にいてもじっとできないタイプだから、時間があったら手間のかかる料理をしてしまうし、最近は米粉でお菓子作ったりもしてて、忙しいんです(笑)

それは美容室時代の名残もあるんですかね。常に動き続けちゃうみたいな。

真紀:その時よりかはゆっくりしてますけど、早起きして朝から愛犬マルコの散歩に行ったり、いろいろあるんですよね。

ちなみに、真紀さんが作る料理の中で橘さんが好きなものは?

:何作っても美味しいんですよ。結婚するまでは何もしてなくて、それこそ料理もしてなかった。どちらかと言えば、お米も洗剤で洗うようなタイプやったやんな?

真紀:さすがにそれはないけど、結婚するまでは全く料理したことがなかったんです。美容師の仕事が忙しすぎて、帰ったら何もできなくて…。だから、結婚してから本を買って料理を勉強しましたね。でも、食べたいものを聞いても、「何でもいい」っていう一番困る返答ばかりなのはやめてほしい!

:どれも美味しいからさぁ。やっぱり料理もセンスなんでしょうね。知り合いにおすすめの店を教えてもらって行っても、これは真紀ちゃんの方が美味しいやん!ってこともよくあるし。ちなみに僕は、全く料理はできないので、食べる専門です(笑)

なんか微笑ましいですね。熱々エピソードはまだまだありそうですが、これからのことについても聞かせてください。2人でどんな人生にしていきたいとか、理想のカタチって何かありますか?

:マイペースというか、お互い今のペースでずっと過ごしていけたらイイなと思います。さっきも言いましたが、やっぱり今を楽しんでいくのが一番だから、そのためにもイイものを作り続けていきたいなと。

真紀:私もね、今が一番楽しいんです。話を全然聞いてなくて怒っちゃう時もあるけど、彼の服作りの姿勢やこだわり、センスは本当に尊敬してるので、これからも楽しんで続けてもらえればと思います。

:よく怒られてるから、気をつけます(笑)

<橘さんのお気に入りの場所>

靱公園(大阪市西区靱本町)
愛犬マルコの散歩でよく行ってる公園です。事務所からも公園が見えてて、やっぱり緑を近くに感じられるのは気持ちいいし、朝夕の散歩はリフレッシュにもなってます。

123
Profile

橘 徹

南船場のカリスマ的ショップ『Boutique Hermitage』の幕を下ろした後、レザーアイテムを軸に展開する<GOOD KARMA DEVELOPMENT>を立ち上げる。妥協のないこだわりと、長年培ってきた見識から作られるアイテムは、リリースする度に即完するほどの人気ぶり。趣味はサーフィンで、現在はタイミングを見つけてマイペースに続けているが、ひどい時は睡眠時間を削って週4も出かけていたそう。1年の半分以上はサンダルで過ごし、橘さんが靴を履くといよいよ寒い季節になってきたと巷では言われている。

GOODKARMA DEVELOPMENT

Profile

橘 真紀

アメ村の人気美容室で長年に渡ってトップスタイリストを務め、結婚を機に退職。徹さんが『Boutique Hermitage』をスタートしてからは共に店頭に立ち、店の成長をサポート。現在は「何もしてない」とは言いつつも、徹さんを支えながら要所で大切な役割を担う。最近は米粉でのお菓子作りにハマり中。もちろん徹さんのヘアカットも行い、名実ともに人生のスタイリストでもある。

CATEGORY
MONTHLY
RANKING
MONTHLY RANKING

MARZELでは関西の様々な情報や
プレスリリースを受け付けています。
情報のご提供はこちら

TWITTER
FACEBOOK
LINE