好きなもの、抱いた想いを貫いて、自分らしさをレイヤード♡<Ray BEAMS>バイヤー・梶原千織さんの、“unique”なファッションとスタイルの秘密。
ずっと好きなものだけを着てきたけど、好きなものと似合うものは違う。自分の体型やいろんなことを理解すること、自分自身を知ることの大切さを、ビームスに入って気づけた。
ビームスに入社して最初に配属された店舗はどこだったんですか?
ルクア大阪の『ビームス 梅田』です。
いきなりメジャー店舗ですね。入社当時はどんな心境でした?
『ビームス 梅田』は学生時代からよく通ってた店舗なんですが、お客さんとしてもちょっと背伸びしたり、おしゃれして気合いを入れて行こうと思える場所だったんです。だから、初出勤の時は何を着るかめちゃくちゃ考えましたね。しかも接客してもらってた人たちが先輩になるし、同じチームになるわけなので、いろんなシーンを思い出しながら緊張してたのを覚えてます。
通ってた店舗だから親近感がありつつも、知ってるからこそ余計に緊張しちゃいますよね。スタッフの皆さんも根っからの服好きが集まってますし。
当時の先輩からは「お客様のお手本となる存在として、毎日違う服装を心がけよう!」と、アドバイスしてもらってました。私の場合は身長が低いので、自分の体型も考えた着こなしが必要だし、その着こなしがどう見られるか、どうすればバランスよく見てもらえるか、そんなことをいつも考えてましたね。でも、その環境だったからこそ、今の自分があるのかなと。
お客さんからすればスタッフさんの着こなしって、一番参考になるものですしね。
出版した本『unique』にも書いてるんですが、今までの私はずっと好きなものだけを着てきたんです。でも、好きなものと似合うものは違うから、自分の体型やいろんなことを理解すること、自分のことを知ることがまずは大切。自分を知らないと、着こなしだってまとまらない。そんな部分を入社して1年間はみっちりと叩き込んでもらいましたね。
それで梶原さんのスタイルも、より自分らしくなっていったと。そんな感じで自分らしさをもった人が集まってる環境って、すごく刺激的。
みんな個性的でファッションのテイストもバラバラだし、着こなしも全然違うけど、それがビームスの“らしさ”かなと。私が所属してるレーベル<Ray BEAMS>は特にその傾向が強くて、担当レーベルのものだけじゃなくてメンズアイテムもMIXしたりしてるのに、なぜか<Ray BEAMS>っぽく仕上がるんです。それはみんなの中で<Ray BEAMS>らしさを、共通認識として理解できてるからだと思いますね。
そして、“らしさ”の共通認識がどのレーベルにも存在して、最終的にビームスとしての“らしさ”になってる。
みんなバラバラだけど、“ビームスっぽい”という一体感があるのって、他の大きなショップにはないなと思いますね。それに服だけじゃなくて、いろんなことに造詣の深い人がめちゃ多いんです。分かりやすく言えば、おしゃれに気を使ってるオタク集団(笑)。迂闊な発言をしたら、怒涛のごとくしゃべり倒しますから。
好きなことには超貪欲というか、掘り下げ方がエグそう(笑)。梶原さんは現在バイヤーになってますが、当時から現職を志望してたんですか?
最初はプレスになりたかったんです。そのために会社にも「東京に行きたい!」とずっと言ってて、『ビームス 梅田』に1年半勤めた後、『ビームス 池袋』に異動させてもらいました。池袋ではVMDのサブを任してもらえることになり、忙しかったけど仕事にすごく打ち込めたんです。
それがきっかけでバイヤーを目指すことに?
そうですね。VMDは店舗のレイアウトやショーウィンドウの演出を担当する役目があるんですが、任してもらううちに「こうした方がもっといいかな」とか「ここにこんなものがあるともっと可愛くなるな」とか、ものに興味を示すようになっていって。私が目指すのは、アイテムを企画するバイヤーだって思うようになったんです。
バイヤーになるには社内で試験とかがあるんですか?
別に試験があるわけじゃないので、とにかく全方位にアピールしてましたね。ビームスではオンラインサイト上にスタッフスタイリングをまとめたページがあって、そこに毎日のスタイリングをアップしたり、アイテムの企画書を作って提出したり、ミーティングでは積極的に発言したり、覚えてもらうためのアピールを続けてたんです(笑)。もちろん、店舗での仕事にも全力で打ち込む。バイヤーはものづくりだけが仕事ではなく、取引先とのお付き合いも増えるため、周りからの信頼も求められる職種です。バイヤーになりたいという想いも重要ですが、仕事への向き合い方、店舗での取り組み、知識を深めるための勉強など、日々の積み重ねがホンマに大切だったと実感してますね。
想いと行動が比例してたからこそですね。『ビームス 池袋』ではどれくらい勤めてからバイヤーに?
1年半勤めた後、<Ray BEAMS>のバイヤーチームに入りました。私はバッグとシューズを担当していて、レーベルのディレクターが決めたシーズンの方針を汲み取ってオリジナルアイテムを企画したり、バイイングしたりしてます。
バイヤーになったことで、梶原さん自身に変化はありましたか?例えば、販売員時代とはまた違ったものの見方、捉え方が生まれたとか。
基本的には好きなものを貫いたらいいとは思ってますが、バイヤーになったことで視点は変わったかもしれません。『ビームス 梅田』などの駅から直結する施設に入ってる店舗なら、フラッと来たお客様にどうすれば目を留めてもらえるか、いいと思ったものをどうすれば手に取ってもらえるか。ただ可愛いだけじゃなくて、他者目線をこれまで以上に意識するようになりましたね。そして、商品を企画する上では感覚も大切ですが、使い心地や履き心地にはとことんこだわるようにもなりました。
一目惚れや気になってもらう。そして、愛着をもって使ってもらう。言葉にすると簡単になっちゃいますが、お客さんの興味や行動を起こすことってすごく難しいし、世の中にはいろんなアイテムがあるじゃないですか。商品を企画する仕事って、楽しさと同等かそれ以上の産みの苦しみもあるのかなって思います。
アイテム一つ一つのディテールに至るまで、どこをどうすればいいか毎日悩んで、毎日壁にぶち当たって乗り越えての繰り返しですね。私は手が小さいので、例えばバッグのつまみ部分を考えるにしても、自分基準じゃダメ。バイヤーチームだけじゃなくて、プレスやいろんな部署の人にヒアリングしながら作ってます。
そうやって聞くと、アイテム一つ一つがこだわりの結晶ですよね。ファッションが好きだからこそ突き詰めていけるんだと思うんですが、そのプロセスの中にあるバイヤーの醍醐味って何でしょう?
先ほどお話ししたものに対する視点もそうで、あらゆる角度から見れるようになったこと。ものがどのように作られているのか、プロセスだけじゃなくて背景まで知れること。そして、いろんな素材と出会えて、たくさんの取引先を通じて自分の知らなかった世界を知れること。知識はどんどん蓄積されていきますし、ホンマに特別な場所で仕事ができてるなって思いますね。
いい意味で、さらに深みにハマれますよね。
それに、『unique』という本を出版させてもらえたのも、この仕事があったからこそ。人との出会いはもちろんだし、地元の関西で『BE MY Guest at CHIORI’S unique room』というイベントができたのもそう。バイヤーになって4年が経ちますが、楽しさはこれからもさらに広がっていくんじゃないかなって感じてます。
梶原 千織
大阪府寝屋川市出身。大学卒業後、『ビームス 梅田』、『ビームス 池袋』を経て、現在は<Ray BEAMS>のバイヤーとして、バッグやシューズの企画、バイイングを担当。レイヤードやMIXスタイルを得意とし、その着こなしは多くの女性から支持を集めている。ポストカードが大好きで、海外での旅先や美術館などで収集しており、中でも“ハッピーバースデイ”や“クリスマス”をモチーフにしたものには目がないそう。