ジーンズ離れのいまに聞く。<THE UNION>牧田耕平さんが思うデニムのエエとこ。
自分色になるのがエエところ。汚れてもそれが思い出になる。
最近、「若者のジーンズ離れ」がニュースになっていましたが、牧田さん的にそのニュースをみてどう思いました?
そりゃそうやろな、って思う。重たいし、堅いし、ゴワゴワするし、洗濯しづらいし、なんでこんなん履くの?って感じなんやろうな~。 特に、いいデニムってなると高いし。しかも、服好きの若い子たちからすると、デニムってウンチクにうるさい人が多いイメージで面倒臭いのもあるんちゃうかな?もちろん、デニムはデニムでいいねんけど、好きなもん履けばええと思う。でも、自分の場合は10代やったけど、絶対デニムが好きになるタイミングが来ると思うから、それがいつかっていう話で。
デニムって魅力がたくさんあると思うんですが、牧田さんが思う“デニムのいいところ”ってなんですか?
やっぱり“育てる”っていうところがポイントになるかな。僕はデニムから洋服を学ばせてもらってるんで、育て甲斐があるのが一番いいところやと思う。デニムに限ったことではないけど。経年変化っていうたらありきたりかも知れんけど、例えば作業してるときにペンキついたりオイルが付いたり、メシ食ってるときケチャップこぼしてもデニムやとそんな気にならへん、っていうか。
確かにデニムの汚れってほかの生地の服に比べると不思議とあまり気にならないですね。
そう、元々ワークウエアやから、言い方悪いけど雑に扱ってもそれがアジになるし。
何年か経ってからその汚れを見たときに「そや、これあのとき付いたやつや」みたいな(笑)。
汚れやダメージも自分のカラーになる、と。
デニム履いてタフに働いてるひとは特にそうやと思うし。
この(今履いてる)デニム触ってみて欲しいねんけど、表面トゥルトゥルやねん。この毛羽立ちがなくなったような肌触りがめっちゃ好きで。ここまでいくだけでも1年半くらいはかかるから、特に平日にデニム履かれへんような仕事の人たちからするとこの雰囲気はなかなか味わわれへんし、柔らかくならへんから面倒臭いと思う。そういう意味で、デニムが敬遠されるのも分かる気がします。
牧田さんが作るデニムはリジッド(生)がほとんどですよね。
ひとり一人体型も違うし、足の長さも膝の位置も違うから加工ではどうしても不自然になるし、そもそもリアルじゃないしね。<THE FABRIC>って名前でブランドやってる通り、自分は生地が大好きな人間やから、それを“痛めさせる”っていうのも正直ちょっとイヤで(笑)。だから“育てる”という意味でリジッドにこだわってますね。
よくデニムって洗ったほうがいいの?とか生のデニムは最初に糊を落とすべき、とか言われていますが、牧田さん的なデニムの扱い方を教えてもらえますか?
僕の場合は、まず最初に裏返して水洗いして糊を落とす。それから、自分の長さに丈上げして。で、太さにもよるけど1ヶ月半~3ヶ月履いて、座ったり立ったり普段通りのスタイルで。
その人ならではの、って言うんかな。股とか膝とか関節部分中心に同じ位置に生地が折れてくる、いわゆるアタリっていうねんけどそれが出てきたら洗っていい。一回アタリが出たら、洗っても同じとこが折れるから、そこから徐々に色も薄くなるし、体に馴染んできて。
洗濯の仕方もなんとなく難しいイメージで、デニム離れになっているかもしれないですね。
そうやなー。でも、現代のデニムに関しては普通に洗っても全然イケるけど、あまりにも洗わなさすぎて皮脂が定着するとどうしても生地が劣化してくるから、ある程度履いたら洗ったほうがええんちゃうかな。
でも、それも好みの問題で色落としたくない場合は洗い過ぎないほうがいいし。それも含めて“育てる”っていうことやと思いますね。
ただヴィンテージのデニム、特に50年代60年代のものになると生地も糸も劣化が激しいので、極力洗わないほうがいいかな。
最後に、牧田さん的デニム愛を一言でお願いします。
やっぱり、“自分色”に変化していくのがいい。色落ちだけじゃなくて。
牧田 耕平
1975年、大阪・東住吉区出身。製菓専門学校中退後、大阪のデニムメーカー<フルカウント>に入社。その後、東京のアパレルメーカーに勤め、1999年に<MOTIVE>をスタート。2010年より大阪へ戻り<THE UNION>を始動。2020年春より監修している<アニエスベー ジーンズ>をはじめ、様々なデニムブランドのディレクションも手がけている。