「関西では勝てなかったから、東京に飛び込んだ」 丸尾丸一郎さんが、『Vol.M』大阪・和歌山公演に込めるもの。
ダメで止めるのではなくて、こうすればいいんじゃない?って広げていかないと、表現の幅がどんどん狭くなって、どれも同じになってしまう。

2000年の旗揚げから今年で26年目になりますが、これほど長く活動を続けられた理由は、どこにあると思いますか?
劇団に関してはチョビですね。チョビが劇団という形にこだわりがあるので。僕だけだと、ここまでやってないと思います。ただ、コロナ以降は事務所に集まってごはん食べたりとかの機会も減ってるし、ハラスメントとかの感覚もあるからどこまで言っていいのかみたいなのもあるし。劇団の公演と外部の公演の違いは果たして何なのだろうっていう。だから今、劇団っていう集団である理由ってすごく難しいなと思います。
劇団の在り方も変わりつつあるというか。
もともと劇団って経済ではなくて、意図とか目標でつながってる集団じゃないですか。これって今の時代には引っ掛かる感覚なんですよ。お金じゃないってことが、いろんな言い訳になってしまう。若い人たちは、それを受け入れにくいと思うんです。

劇団というものが成り立ちにくくもなっているんですね。
と思いますね。
それこそコンプライアンス的なところとか、表現の部分でも変化はありますか?
あると思います。2年ほど前に『YAMA-INU』という作品でインド人のコックを演じるのに、少し濃いめのドーランを塗ったんです。そこに対して、問合せが来ました。

受け取られ方が変わってきているんですね。
そこは気を付けなくちゃいけないんだなと思いました。でも、昨年の夏に出演したエディンバラの芸術祭は、もう本当に何でもありだったんですよ。エディンバラは映画『トレインスポッティング』の舞台になった街で、ちょうどその舞台版が上演されていたので観に行ったんです。そしたら会場はクラブ音楽が流れていて、演者がお客さんのお酒を勝手に飲んだりしてるし、芝居が始まってからも、もちろん偽物ですけど舞台からうんこを投げてくるし、下半身も出しまくりで。
めちゃくちゃじゃないですか!
そうなんですよ。日本では絶対にできない(笑)。でもこれ、難しいんですけど、ずいぶん前に上岡龍太郎さんが「ダメだと言われて表現を縮めていくと、テレビはどんどん小さくなってしまう」って言ってて。演劇も同じで、ダメで止めるのではなくて、こうすればいいんじゃない?って広げていかないと、表現の幅がどんどん狭くなって、どれも同じになってしまう。

たしかに、どんどん萎縮してしまいますね。
漫画やアニメの舞台化が増えてるのも、そういう背景があると思うんです。リスクも少ないし、原作のファンもいるし、悪いところがないんですよね。
そんな中では、エディンバラでも上演された『ショルダーパッズ(※)』なんて、すごく挑戦的な表現なのかなと思いますが、丸尾さんが今後挑戦したみたいことがあれば、教えてください。
今年も『ショルダーパッズ』は海外でもたくさんチャレンジしようと思ってます。もう少し長い目で見ると、商業的な作品ではなくて、自分の頭の中にあるものを映像化した作品をいつかやってみたいという気持ちがあります。演劇では、2人とか3人で、ものすごく削ぎ落した作品を作って、いろんなところに持っていきたいというのはありますね。
※男性の衣装は2枚のショルダーパッドのみ。装飾をそぎ落とした身体と想像力で、演者と観客の世界を広げる表現。

『UME -今昔不届者歌劇-』の関西での上演も、楽しみにしています!
東京公演から始まって、よりスケールアップして関西に持って来ようと思ってます。和歌山公演ではスペシャルなカーテンコールも予定してますので、ぜひ楽しみに来てください!
<丸尾丸一郎さんのお気に入りスポット>
阪急宝塚線
昔は庄内に住んでて、小学生の頃から大学時代まで、ずっと阪急電車で通ってました。今も大阪に帰ってきたら阪急には必ず乗ります。マルーンの車体、オリーブ色のやわらかいシート、梅田駅のピカピカの床も好き。就職試験も受けたんですけど、阪急愛を熱く語り過ぎたのか、最終面接で落ちました。
阪急百貨店9階の時計(大阪市北区角田町)
阪急百貨店の9階の広場に時計があるんですけど、あれは昔1階にあったんですよ。亡くなったおばあちゃんと初めて梅田で待ち合わせしたときの場所が、あの時計の下だったんです。不安になりながら向かってたら、時計の下におばあちゃんが立ってて。その光景がすごく記憶に残ってるんですよね。改装でなくなってしまったなと思ってたら、9階にあの時計があって。ひと目見た瞬間に「うわ、あの時計や!」って一気に当時の記憶がよみがえりました。
<INFORMATION>

Vol.M 『UME -今昔不届者歌劇-』
大阪公演
日時: 2月27日(金) 18:30~ / 2月28日(土) 13:00~、18:00~ / 3月1日(日) 11:30~、16:00~
会場: COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
金額: S席 ¥9,500(全席指定、未就学児入場不可)
和歌山公演
日時: 3月7日(土) 12:00~、16:30~ (大千穐楽スペシャルカーテンコール)
会場: 紀南文化会館第ホール
金額: S席 ¥9,500(全席指定、未就学児入場不可)
脚本・演出: 丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)
振付: 辻󠄀本知彦
出演: 松岡充 / 街裏ぴんく / 阪本奨悟 / 雷太 / Beverly / ⼤平峻也 / 山田ジェームス武 / 藍染カレン / 橘輝 / 仲⽥博喜 / 丸尾丸⼀郎

丸尾 丸一郎
大阪府出身。作家、演出家、俳優。2000年、劇団鹿殺しを旗揚げ。家族や仲間・夢と現実といった普遍的なテーマを、等身大の言葉と叙情的な歌詞を用いて、独特の世界観で描き出す。代表作である「スーパースター」は第55回岸田國士戯曲賞最終候補に選出された。作・演出として、OFFICE SHIKA×Cocco「ジルゼの事情」、秋元康プロデュース劇団4ドル50セント「新しき國」「ピエロになりたい」などを手がける。脚本家としては「下北沢ダイハード」(テレビ東京)、「マジムリ学園」(日本テレビ)、「福岡美人がゆく!」(NHK福岡)、などが挙げられる。また、脚本を手がけた映画「Gメン」(監督 瑠東東一郎/主演 岸優太)が、2023年 第97回キネマ旬報ベスト・テン 読者選出日本映画賞で1位に選ばれる。