「関西では勝てなかったから、東京に飛び込んだ」 丸尾丸一郎さんが、『Vol.M』大阪・和歌山公演に込めるもの。

関西学院大学在学中の2000年に『劇団鹿殺し』を旗揚げし、現在は東京を拠点に作家・演出家・俳優として幅広く活躍する丸尾丸一郎さん。『劇団鹿殺し』では、感情の昂りがそのまま音楽へと立ち上がる独自の音楽劇というスタイルを築き、ライブハウスや野外フェスなど、さまざまな場所で作品を発表してきました。また、秋元康プロデュース劇団4ドル50セントの作・演出をはじめ、映画やドラマの脚本を手がけるなど、劇団の枠を超えた活動も続けています。今回は、そんな丸尾さんがSOPHIAのボーカル・松岡充さんと立ち上げたユニット『Vol.M』を8年ぶりに再始動! 東京を皮切りに、大阪と和歌山でも公演を行うというニュースを聞きつけ、インタビューに向かいました。作品の見どころはもちろん、大阪を拠点に活動していた当時の思い出や、創作にまつわる話までたっぷりお聞きしています!
松岡さん(SOPHIA)は妥協を許さないし、すべての表現と向き合いながら作っていく方なので、生半可な気持ちではできない。

8年ぶりにSOPHIA 松岡充さんとのユニット『Vol.M』を再始動され、『UME -今昔不届者歌劇-』を上演するとのことですが、どんな経緯で再始動に至ったのか、お聞きしてもいいですか?
2012年に舞台で松岡さんと共演したときに、この人のもっと深いところ、闇の部分であるとか、僕にしか描けないものがあるんじゃないかと感じたんです。そこから、松岡さんとのユニット『Vol.M』を立ち上げ、2017年に『不届者』を上演しました。今回はその作品をベースにし、音楽劇として新たに進化させました。
今回、音楽劇という形にされたのはなぜでしょうか?
もともとこの作品を、音楽というツールを使って届けたいという気持ちはありました。ただ当時は、松岡さんに自分が歌詞を書いて歌ってもらうことに自信が持てなかったんです。でもそこからいろいろ経験させてもらって、今なら自分が歌詞を書いて、音楽を作って、それを松岡さんに表現してもらえるんじゃないかと思えるようになったんです。

では、満を持しての音楽劇なんですね。再始動は丸尾さんから?
そうですね。『不届者』をもう一回、音楽劇でやりましょうって。それまでもお互いの舞台を観に行って話す機会は何度もあったんですが、やりましょうって話したのはここ1年ぐらいです。
松岡さんの反応はどんな感じだったんですか?
この作品で何をしたいのか、なぜ今それをやるのか。そういうことを、すごく問われました。基本スタンスは「一緒にやろう」なんですけど、目指すところを確かめるような感じでしたね。海外にも通用する、日本発のオリジナル音楽劇をつくりたいっていう、その方向性を共有しました。
今回は街裏ぴんくさんが出演されるのがすごく気になったのですが、キャスティングもお二人で?
キャスティングも一緒にやってますね。ぴんくさんが演じる角田という役はすごく特殊で、松岡さん演じる梅本に復讐のシナリオを渡して、どんどん復讐させていくんです。得体の知れない人物だから、普通の居住まいじゃダメなんですよ。初演は僕が演じたんですが、僕は歌えないので、今回は違う表現ができる方を探したときに、ぴんくさんの名前がお互いに出てきて。

すごく大切なキーになるような役を、今回はぴんくさんが演じられるんですね。
そうなんです。ソロの歌もあるので、緊張しつつ、がんばってくれてます。
稽古場の雰囲気はどんな感じですか?
いま立ち稽古に入ったところなんですけど、毎回稽古が終わるたびに松岡さんとディスカッションしてます。この楽曲はこれでいいのか、この歌詞はもっと感覚的なほうがいいんじゃないかとか。すごく大変だけど、楽しいですね。歌詞も音楽も、物語も練り直し、ブラッシュアップしながらやってますが、きっと初日までこれを続けていくんだろうなと思ってます。
試行錯誤しながら作り上げていくスタイルは、『Vol.M』ならではですか?
かもしれないですね、僕と松岡さんだからできるスタイルなのかも。松岡さんは妥協を許さないし、すべての表現と向き合いながら作っていく方なので、生半可な気持ちではできない。僕も松岡さんから来たボールは絶対より面白く返してやろうと思ってるので、どこまでも一緒に作っていくつもりです。

なるほど。今から本当に楽しみですが、今回の作品の見どころはどんなところでしょうか?
三味線とパーカッションを入れた音楽構成や、『UME-今昔不届者歌劇-』と名付けたタイトルも含めて、今回は自分たちも分からない場所へ踏み込もうとしている感覚があります。これまでの手の内にない新しい表現を探ってるというか。どんな作品になるか、予測できないゾクゾク感があります。
ただ、絶対に今の松岡充と僕のすべてを出し切る作品になるはずなんです。そしてお客様には必ず何かを持ち帰ってもらえる作品になると思っているので、ぜひ、僕らのすべてを見届けてほしいという気持ちです。
地元である大阪、そして和歌山での公演について、何か特別な想いはありますか。
「劇団鹿殺し」を兵庫県西宮市で旗揚げして5年で東京に行ったんですけど、関西で人気が出たから行ったんじゃなくて、関西で勝てなくて東京に飛び出したんです。だから、より身が引き締まるというか。絶対いいものを見せてやる、見せなくちゃいけないっていう気持ちです。
和歌山は、物語に出てくる徳川吉宗の出身地なので、ぜひやりたくて。いま行政や企業の方と、和歌山公演をいかに盛り上げるかのリモート会議をやってます。
今回は芝居が始まる前から世界観を作りたいと思ってて、縁日をテーマに出店を出したりロビーの演出もいろいろ考えてます。そこも楽しみにしてもらえれば。

丸尾 丸一郎
大阪府出身。作家、演出家、俳優。2000年、劇団鹿殺しを旗揚げ。家族や仲間・夢と現実といった普遍的なテーマを、等身大の言葉と叙情的な歌詞を用いて、独特の世界観で描き出す。代表作である「スーパースター」は第55回岸田國士戯曲賞最終候補に選出された。作・演出として、OFFICE SHIKA×Cocco「ジルゼの事情」、秋元康プロデュース劇団4ドル50セント「新しき國」「ピエロになりたい」などを手がける。脚本家としては「下北沢ダイハード」(テレビ東京)、「マジムリ学園」(日本テレビ)、「福岡美人がゆく!」(NHK福岡)、などが挙げられる。また、脚本を手がけた映画「Gメン」(監督 瑠東東一郎/主演 岸優太)が、2023年 第97回キネマ旬報ベスト・テン 読者選出日本映画賞で1位に選ばれる。