かわいくて、懐かしくて、どこか切ない。竹内みかさんがメロディペットに見出したのは、儚き「無常観」。
絶滅危惧種みたいな存在になりつつあるメロディペットたちを、作品として残してあげられたら。

13年間見つめ続けてきたことで、メロディペットをとりまく環境や、メロディペットに対する想いに変化はありましたか?
13年前に比べて、明らかに遊園地が減っています。ハーバーランドの遊園地も、私がメロディペットに出会った半年後くらいに閉園しちゃったんですよ。遊園地が減っているからメロディペットたちも減っていて、もう絶滅危惧種みたいな存在になりつつあって。みんなをちょっとでも残してあげたい、作品として残してあげられたらいいなって思ってます。

たしかに、最近あまり見ないような気はします。でも、ずっと同じモチーフをテーマにしていて、飽きたりとかはないですか?
ないんですよ、私めちゃくちゃ飽き性で何をしても続かないんですけど、メロディペットだけはずっと興味が尽きないです。でも一度、スランプに陥ったことがありました。六甲ミーツアートのインスタレーションやニューヨークでの展示を終えて、燃え尽き症候群みたいになってしまって。描くべきものもわかっていて、描きたいのに描けない。そのときにSNSで、今はもうなくなってしまった宝塚ファミリーランドの思い出を募集したんです。3人の方が写真とエピソードを送ってくださって、それをコラージュ風の作品にしたことで、スランプを抜け出せました。
誰かの思い出や記憶をインプットすることで、また新たなアウトプットが可能になったのかもしれないですね。例えば、ほかの表現方法に挑戦してみたい、みたいなことはありますか?
それはすごくあります。今の表現がベストかどうか、まだわからないと思っていて。メロディペット以上に、もっと私がテーマとしていることを表現できるモチーフがあるかもしれないっていう思いもあって。だから、メロディペットを描きながら、引き続きモチーフ探しもしていきたいなと思っています。

これから新しいモチーフと出会ったり、表現手法が変わったりするかもしれないけれど、根底にあるのは「すべてのものはいつかなくなってしまう」というテーマなんですね。
そうですね。形のあるものはいつかなくなってしまうからこそ、今あるものを大切にしてもらいたいなと思います。物であれ、人であれ、場所であれ。そういうことを、メロディペットから教わりました。私は古いものが好きですけど、懐古主義というわけではなくて。だた、街のあり方でもそうですけど、古いものを壊して新しいものを作るだけではなくて、今あるものの価値を、もう少し見直すことができるんじゃないのかなって思うんです。なくなってしまってから、その価値に気づくってことはよくありますけど、あるうちにその存在にもう少し意識を向けるというか。
たしかに、なくなってから、もっと大切にしておけばよかった!っていうのはありますね。
あとは、メロディペット探しの旅がまだまだ終わっていないので。日本でもあと10か所以上回れていないところがあるので、ちゃんと制覇したいなと思ってます。海外にも似たような遊具があって、いろんな人から情報をいただくんですよ。「ここに、こんなのがいました!」って。台湾にもいたんですけど、日本よりちょっとスピードが速いんです(笑)。つい最近、トルコにいるらしいっていう話も聞いて。ちょっと遠いんですけど、ぜひ会いに行きたいなと思ってます。

竹内さんのSNSには、各国のメロディペット情報が集まってくるんですね。
メロディペット情報とともに、思い出のエピソードも送られてきたりします。あとは、メロディペットに乗りたいけど、どこに行ったらありますか?とかの質問も。
たしかに竹内さんは、日本でいちばんメロディペットに詳しい人かもしれません。まだまだこれからも、メロディペットを訪ねる旅は続きそうですね。
そうなんです。ただ、ずっといてくれるものではないから、急がないといけないなと思ってます。
<竹内みかさんお気に入りの場所>
東山商店街(神戸市兵庫区東山町)
「神戸の台所」といわれている、地元にある商店街。ぜひここで、ミックスジュースを飲んで串カツを食べてほしいです。それから商店街から足を延ばして、野球カステラを買って帰ってほしいです!野球カステラは神戸市民みんなのおやつなんですけど、多分もうやってらっしゃるお店も少なくなってきてるので、今のうちにぜひ!
(撮影協力)
生駒山上遊園地
https://www.ikomasanjou.com/

竹内 みか
神戸市出身、在住。大阪芸術大学短期大学部デザイン美術学科卒。広告代理店勤務のグラフィックデザイナーを経て、神戸元町にあるギャラリーVie主催の「絵話塾」で学ぶ。2010年から制作を始め、主にメロディペットと呼ばれる動物型遊具をモチーフに作品を発表。これまで国内外約80カ所の遊園地でフィールドワークを行なう。「六甲ミーツ・アート芸術散歩2020」オーディエンス大賞グランプリ、「Independent Tokyo 2024」準グランプリなどを受賞。