かわいくて、懐かしくて、どこか切ない。竹内みかさんがメロディペットに見出したのは、儚き「無常観」。
実は、本体も所有してるんです。首が長い系のメロディペットと、サファリペットと。

竹内さんはグラフィックデザイナーを経験された後、メロディペットとの出会いによってイラストレーターではなく、アーティストの道を歩み出したわけですよね。ご自分ではそんな未来を想像されていましたか?
イラスト教室に通い始めたときは、本当にただの趣味で。時間もできたし、絵を描くのも好きだし、通ってみようかなって軽い気持ちでした。
絵を描くことはもともとお好きでしたか?
物心ついたころからずっと描いてました。実家が自営業で飲食店をしてるんですけど、お客さんが帰るまで裏でじっと待ってないといけなくて。時間つぶしに、おちょことか、キリンビールのロゴとか、そういうものを描いてたんです。写実とかデッサンとかそういう言葉も知らない幼少期から、見えるものを見えたとおりに描くってことをずっと毎日繰り返しやってました。

大学では絵画ではなくグラフィックを選択されたのはなぜですか?
絵を仕事にして生活が成り立つと思えなかったんです。それだけの勇気もなかったし、絶対無理だと思ってたので。
では、会社を辞めてイラストレーターを目指すという決断をされた際は、けっこう葛藤があったのではないですか?
会社を辞めてイラストレーターになろうかな…と思ってから、実際に辞表を出すまで2日ぐらいでした。めっちゃ早いですよね(笑)。あんまり悩みませんでした。イラスト教室で知り合った友達が、どんどんイラストレーターになっていくんですよ。自分の描いた絵が仕事になるって夢じゃないんだと思って。やるなら今だって思いました。
イラストレーターとしてのお仕事はどうでした?
会社を辞めてからまた1年イラスト教室に通ったので、実質あまりしていないんです。その1年でメロディペットという自分が描くものに出会ってしまったので。でも、本当になりたかったのか自問自答してみると、そうでもなかったのかもしれない。イラストレーターの仕事も素敵ですけど、私は自分の表現したいものを描いたり、購入してもらったりっていうほうが喜びなのかなって気付きました。

竹内さんは絵画だけでなく、インスタレーションの作品も発表されているんですよね?
六甲ミーツアートに出展するときに、初めて大がかりなインスタレーションをさせていただいて。いろいろな遊園地さんにご協力いただいて、もう使われないガワの部分を集めて制作しました。
ガワというのは?
メロディペットの外側の側ですね、毛皮の部分。中にはするっとした本体があって、そこに毛皮を着せ替え人形的な感じでかぶせるようになってます。本体は首が短いのと長いの、2タイプあります。
ガワっていう言い方が面白いですね(笑)
家に20体分ぐらい持っていて、圧縮袋に入れて保管してます。ガワだけじゃなくて、実は本体も所有してるんです。首が長い系のメロディペットと、サファリペットと。

マイメロディペットをお持ちなんですか!?そして、サファリペットというのは…?
メロディペットと同じタイプの遊具なんですけど、メロディペットよりちょっと大きいんです。遊園地のスタッフさんに聞いたところ、歴史はサファリペットのほうが古くて、新潟の会社で製造されていたみたいです。でも、私が知っている限りでは、サファリペットはもう全国的にひとつも動いているところがなくて。

そのサファリペットを、竹内さんは所有しておられると。めちゃくちゃ貴重ですね。ちなみに、ちゃんと動きますか?
もちろん動きます。本当にすごいものを譲っていただいたので、なかなか維持費も大変なんですけど、これからも大切にメンテナンスしていきたいなと思ってます。倉庫に置いているだけではもったいないから、もっと活用できたらいいですよね。

竹内 みか
神戸市出身、在住。大阪芸術大学短期大学部デザイン美術学科卒。広告代理店勤務のグラフィックデザイナーを経て、神戸元町にあるギャラリーVie主催の「絵話塾」で学ぶ。2010年から制作を始め、主にメロディペットと呼ばれる動物型遊具をモチーフに作品を発表。これまで国内外約80カ所の遊園地でフィールドワークを行なう。「六甲ミーツ・アート芸術散歩2020」オーディエンス大賞グランプリ、「Independent Tokyo 2024」準グランプリなどを受賞。