ファサードには枯山水!メイドインジャパンのモノづくりを愛する『DENCHU』田中宏章さんが魅了される、モノと人、そしてそこにある物語。


入り口に枯山水があるんですけど、最初からあれがすごいやりたかったんですよ。だからファサードがでかいところがいいなと思って探してたんです。

アパレルの会社に勤めるのと、自分でセレクトしたものを扱うお店をするのって、全然違いますよね。それってすごい変化だと思うんですけど、仕事を辞めるのに不安とかはなかったですか?

16年ぐらいその会社に勤めてて、辞めたのが38ぐらいなんですけど、40代の未来が見えたんです。このまま同じようにずっと続いていくんやろうなと思ったら、急に「おもんな」ってなって(笑)

たしかに!

おもんなって思って、「お店やろ」ってなりましたね。多分飽きてたんでしょうね、単純に。

ということは、踏ん切りをつけるのにすごく勇気がいったとかではなくて?

もう、全然。

全然なんですね(笑)!どんなお店にするかは、日本一周から帰って固めていった感じですか?

行く前から、やるなら日本製にフォーカスしたお店にしたいというのはあって。でも物件とかはまだ全然。大阪っていうことくらいしか決まってなかったですね。

大阪でやることは決めておられたと。なぜ大阪だったんですか?

大阪の人がいちばん好きやなって。フラットやから。僕、地元も家も神戸なんですよ。神戸でやったらいいのにって結構言われたんですけど、「絶対大阪!」って。大阪で仕事してた期間が長いっていうのもあるんですけど、人がフラットでいちばん心地いいなって思えたんで、大阪で探しましたね。

そうなんですね。堀江のこの場所はどうやって?

入り口に枯山水があるんですけど、最初からあれがすごいやりたかったんですよ。だからファサードがでかいところがいいなと思って探してたんです。さらにスケルトンでっていう条件に合致したのがこの物件で。あと、昔2年くらい働いていたアパレル会社がここの2軒ぐらい隣にあったんです。当時から近くのメガネ屋さんも通ってたし、家をリノベーションしてもらった会社も向かいやし、割とええやんっていう感じで。

なんとなくご縁があった場所なんですね。枯山水はどうして作りたいと思ったんですか?

外から見た時に、入り口で和っぽい要素を作りたいなと思って。内装は和に寄せすぎた感じにはしたくなかったんです。だから、入り口の枯山水だけは作りたくて。
あれは香川県の庵治石っていう石なんですけど、<AJI PROJECT>っていう石のブランドも扱いたいと思ってたんです。もし、その庵治石で枯山水が作れたら最高って何となく思ってて。

<AJI PROJECT>は、最初から取り扱いしようって決めてらっしゃったんですか。

決めてました。物件が決まってない時に香川まで行って、「お店やろうと思ってます、こういうコンセプトのお店で、ぜひ置かせてもらいたいんですけど」って言ったら、ぜひ!って言ってくれて。

物件も決まってない状態で!

そうなんです。<AJI PROJECT>はどこかのお店で見てからずっと気になってて、関西ではあんまりバリエーションが見れるところもなかったので、ぜひ扱いたいなって。

すごい熱意ですね。

日本一周してた時に、札幌のモエレ沼公園に行ったんです。そこは、イサム・ノグチが最後に手がけた公園なんですよ。そこをやってる最中に亡くなっちゃったんですけど。イサム・ノグチはもともと彫刻家でニューヨークに住んでたんですけど、日本に来た時に庵治石をすごく気に入って、香川にアトリエを構えたんですよ。庵治石の産地の庵治町には、イサム・ノグチ庭園美術館っていうのもあるんですけど。日本一周でモエレ沼公園に行ったときに、やっぱりつながるなあってなって。それで、庵治石で枯山水やりたいなって思いましたね。

旅の途中の北海道で、庵治石に縁のあるイサム・ノグチが手がけた公園に出合ってしまったと。

そうそう、なんかつながるなって。

香川県高松市で採れる庵治石を使ったプロダクトブランド<AJI PROJECT>。庵治石はきめ細かい結晶の美しさから「花崗岩のダイヤモンド」とも呼ばれているそう。

ということは、めちゃくちゃ思い入れのある枯山水なんですね。

物件が決まってから、<AJI PROJECT>を手掛ける会社の社長に連絡して、すぐ石を取りに行かせてもらいました。

枯山水の石も、現地で自らセレクトされたんですか?

山の採石場に連れて行ってもらって、その山の中から選びました。普段はなかなか関わる機会のない石の現場の方がいる中で、「あれ」って選ぶのめっちゃアツかったです。「これ、いや、ちょっと待ってください、やっぱりあっち」って。2時間ぐらいやりましたね。

長い(笑)!

選んだ石をカットして、極限まで磨いてもらって。めっちゃピカピカになるんです、密度が高い石なので。

枯山水の上に吊るしているライトは、田中さんが自宅でも愛用している富山のガラス作家ピーター・アイビーさんの作品。

『DENCHU』の枯山水は、何かをモチーフにされてるんですか?京都のお寺とか。

いや、そんなすごいものじゃなくて、枯山水の画像を見て、この感じやったらいけるかなって(笑)

なるほど!気持ちの部分で好きっていう。

そうです。なにかの意味がありますか?って言われたら、ありますとは言い難い(笑)。好きだから作りましたっていう。

良いなと思える見た目をしていて、さらに深掘りしてストーリーが魅力的だったり、プロダクトとして面白ければ、なお良しです。
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Profile

田中 宏章

神戸市出身。岡山県の児島に本社を構えるアパレルメーカーに約16年勤務した後、「made in Japanがある暮らし」をコンセプトにしたライフスタイルショップ『DENCHU』を大阪・北堀江にオープン。カトラリーやグラスなどのテーブルウエアのほか、インテリア、日用品、食品など、自らがセレクトしたアイテムを取り扱う。コーヒーや国産ワインが楽しめるカフェも併設。

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