広く、浅くのお付き合い。日替わり店主のカフェバー『週間マガリ』の小西亮さんは、どのクラスタにも属せない<はざまの人>。
天神橋筋商店街を南に抜けたところにある、ポップな看板が目印の『週間マガリ』。ここは、ある時は「オカルト怪談BAR」、またある時は「熟女スナックひととき」、そしてまたある時は「大人の保健室」と、店長によってテーマが変わる「日替わり店長」形式のカフェバーです。この店のオーナー(兼アルバイト)の小西亮さんが、これまでマガリを通じて出会った人は延べ3万人。33歳にして早くも、普通の人が一生に出会う人数に達してしまっています。テーマによって異なる属性のお客さんを華麗にさばきつつ、コロナ前には自身が主催したイベントで約2000人を動員、さらに編集者・箕輪厚介の対談相手に指名されるなど、多方面で活躍する小西さんとはいったい何者なのか。その正体に迫ってみました。
就活で150社ぐらい受けて、内定がひとつももらえなかったんです。それで、就職を諦めて、自営の道を選びました。
まず、『週間マガリ』がどういうお店か、教えてもらってもいいですか?
「ヘンな出会いがきっとある」をコンセプトにした、毎日違う人が店長を務めるカフェバーです。店で提供するのはドリンクのみで、店長のテーマによって料理が出る場合もあります。普通のカフェバーとしても営業しているので、全然テーマに関係なく、飲みに来ていただいても大丈夫です。
なぜ小西さんが『週間マガリ』を始めたのか、きっかけを聞かせてください。
就活に失敗したんです。150社ぐらい受けて、ひとつも内定が出ませんでした。就職が決まらなかったのでもう1年大学に残ったんですけど、次の年もうまくいかなくて。そこで、どうも自分には就職は無理そうだと思って、自営も考え始めたんです。
2年就活して結果が出ないというのは、なかなかですね……。それで、違う道を考えようと思われたんですね。
当時、2013年頃はコミュニティスペースとか、シェアスペースがすごく流行ってたんですよ。コミュニティデザインみたいな言葉が出てきた時期で。僕も漠然とそういうスペース運営みたいなのをやりたいなと思って、就活と並行していろんな場所を見に行ってたんです。その中で、当時すでに日替わり店主のスタイルで営業されていた中崎町の<common cafe>の存在を知って、めっちゃ面白いやん!って思ったんです。それと同時期に、友達に誘われて、天満にある日替わり店主の店の月曜枠を担当することにもなって。もう就職も決まらないし、これはもう店をやる流れかなと思って、大学5年の途中から開業の準備を始めました。
新卒で開業っていうのも、なかなか勇気がいる気がします。
僕1人ではなくて、就活で知り合った友達と一緒に始めようって話になってたんです。でもその頃はなんせ無知なので、友達と2人合わせて30万円ぐらいあったら店が出せると思ってたんですよ。当たり前ですけど、不動産屋に行ったらそれじゃぜんぜん無理ですって断られて。仕方がないから、お金を貯めるために就職することにしたんです。
ここでまた就活に戻るわけですね。
でも長く勤めるつもりじゃなくて、お金を貯めるためだけなので、<common cafe>の向かいのビルにある会社に入社しました。そこなら、毎日<common cafe>に行けるかなと思って。当初は1年ぐらい働いてから辞める予定だったんですけど、思ってたより会社員が向いてなくて、2ヵ月しかもたなかったんです。育ててもらうのが会社にも申し訳なくて、扇町公園で土下座して、辞めさせてもらいました。
なんとなく、内定が出なかった理由がわかる気がします……。
人とチームを組んで何かをするのが本当に無理でしたね。でも親にはせっかく入った会社を辞めたとは言えないので、会社に行くふりをして服部緑地公園で時間を潰してたんです。そしたらプール監視員募集のビラが飛んできたので、すぐ応募して。さすがにバイトが決まったら親にも黙ってられないので、会社は辞めたけど、でも日替わり店長の店をやる構想はあるねん!っていうのを必死でプレゼンして、許してもらいました。
許してくださったんですか。すごい、いいご両親ですね。
日替わり店長の店とか、何を言うてるねんって思ったでしょうけどね。それで、僕がバイトで貯めた80万と友達の20万の100万円で物件を借りて、2013年の12月に『週間マガリ』をオープンしました。
小西 亮
『週間マガリ』オーナー兼アルバイト。大阪府豊中市出身。甲南大学卒業。ゆらゆら帝国が大好きな文系サブカル男子でありながら、中高時代は水泳部に所属。2013年に24歳で、一日店長が日ごとに店を「間借り」するカフェバー『週間マガリ』を開業。
週間マガリ
「ヘンな出会いがきっとある」がコンセプト。1000職種の日替わりマスターが様々なテーマを持ち寄り、バーやカフェやイベントを開催。テーマに関係なく、通常の喫茶バーとしても楽しめる。
大阪市北区天神橋1丁目11−13 2階
水~金 19:00~24:00/土・日 17:00~24:00(月・火 定休)
入館料チャージ ¥500(茶菓子付き・本も読み放題)+別途ドリンク代
※フードのご用意はありません。