新しいカルチャーを確立したい。「泊まれる演劇」の発起人・花岡直弥さんに聞く、その魅力と楽しみ方、これからのこと。


― 気になる公演中の館内をチラ見せ! ―

それぞれのキャラクターのカラーを反映した客室。あちこちに事件解決へのヒントが隠されているそう。

演劇初心者ながら、ふと思い付いたキャッチコピーからプロジェクトにチャレンジ!Twitterドリームを噛み締めています。

そもそも企画を発案して、スタートしたのはいつだったのでしょうか?

もともと東京で広告の仕事をしていて、2018年の6月に「HOTEL SHE,」を運営している「SUISEI,inc」に入社しました。うちは、もともとホテルでイベントをやったりコンセプトルームを作ったり、ホテルという空間をおもしろく使うカルチャーがある会社で。僕は企画などをする際キャッチコピーから先に考えるのですが、何かやりたいなぁと思っている時に「泊まれる演劇」という言葉がポンっと出てきて。語呂もいいし企画の広がりもありそうだったので、やってみることにしたんです。もともと演劇が好きとかではなかったのですが、学生時代にテーマパークでアルバイトをしていたこともあり、体験型のエンタメにかなり興味があって。「泊まれる演劇」というワードを軸に、一つひとつどんな演出があればおもしろくなるんだろうと考えて。ホテルを使って座って観るのも案としてはあったのですが、もっとインタラクティブな方がおもしろいかなとか。一つひとつ要素を肉付けするような形で、現在の「泊まれる演劇」を作っていきました。

これまでオンラインも活用して公演もしていましたよね。何か棲み分けをされていたのでしょうか?

今回の作品「MIDNIGHT MOTEL」は、本来20年の6月が初演の予定でした。だけどコロナの関係で延期になってしまい、その振替公演を21年にやることになったんです。それまでの期間で僕らには一体何ができるかと考えた時、21年の公演がお客さまにとってよりおもしろいものにするための物語を作ろうということになって。前日譚的な意味合いを込めて、各キャラクターの物語をオンラインで上演することにしました。そうすれば21年の本公演で出合うキャラクターが“初めて”じゃなくなって、より没入度が高まるのかなと。画面上ではありますが、「この子見たことある!」というキャラクターが大集合するのって、すごくおもしろそうだと考えたんです。それがオンライン公演を始めるきっかけでした。リアルに観る本公演がよりおもしろくなるもの、お客さまにとってよりエモーショナルになるものをオンラインでやっていきたくて。今回上演した作品は、21年の6月にあった本公演の再演という形になります。

花岡さんは19年の6月に入社して、その半年後には「泊まれる演劇」をスタートさせたと。入社半年でそんなに大きなプロジェクトを任せてもらえるって、めちゃくちゃすごいことですね。

正直フロント業務があんまり得意じゃなくて(笑)。自分が生きる場所を何か見つけなきゃって思っていたので、一生懸命取り組みました。

「泊まれる演劇」を思い付いた後は、どんな風に形にしていったのでしょうか?

「泊まれる演劇」という言葉だけ先に思い付いたんですが、まず演劇を観たことも作ったこともなかったので、どこから手を付ければいいのかわからないし、どういう役割をする人が必要なのかもわからない。脚本家さんと演出家さんの違いもわからないし、もちろん役者さんの知り合いもいなくて、本当にどうしようもなくて。一旦「『泊まれる演劇』がやりたい」とTwitterで呟いてみたんです。そうすると、今実際に舞台美術を担当している方やキャストさんが「一緒にやりたいです!」と連絡をくれて、これだったらできるかもって思ったんです。その方の知り合いのツテを辿ったり、必要な人材を教えてらったりしてなんとか進めていきました。

Twitterってすごいんですね。夢があります。

いいアイデアはTwitterで呟けば何とかなる。いわゆるTwitterドリームですね(笑)

準備を進める中で、どのような苦労がありましたか?

もともと「泊まれる演劇」のプロジェクトメンバーは、僕1人だったんです。先日正式に仲間入りしてくれた方が1人いますが、それまでは僕だけで運営をしていて。スケジュールを組んでチケットを売って、コンテンツを作って……と、脚本や美術といった専門領域以外はすべて1人でやっていました。演劇に関わったことがなかったのでわからないことも多かったですが、とにかくやらなきゃいけなかったので。それが結構キツかったですね。

公式サイトも手が混んでいて素敵でした。

もともとWEB広告やSNSに強い会社に勤めていたので、サイトに関してはそこまで大変ではなかったです。そのぶんダサいものは絶対作りたくなくて、デザインや映像、バナーなど、クリエイティブにはめちゃくちゃこだわっています。僕らは「泊まれる演劇」の企画を考える時、物語ではなく売り方から考えるんです。チケットの売り方やWEBサイトの構成を考えて、まずこの作品は絶対に売れるというコンセプトを決める。そこから各専門家に相談します。“売れる”ためにこういう要素が必要だっていうのを洗い出して、それをグッズや飲食物にも落とし込んでいます。基準は完全に売れるかどうか、ちゃんとお客さまに届くかどうか。お客さまに届かなければおもしろいものを作っても意味がないので、間違いなくお客さんに魅力的に映るものから逆算して、じゃあこれに合う物語はこうだよねって。パッケージはとことんクリエイティブですが、一方でビジネスマン的な一面もしっかりあると思います。

同じもの作りやコンテンツ作りに携わる人間として、自然とそういう考え方ができるのはすごいと思います。

それは恐らく前職のおかげかな。学生時代は学園祭の実行委員とテーマパークのアルバイトをめちゃくちゃ頑張っていて。そう考えると、その時の経験も生きてるのかなと思います。

文化史に刻まれるようなカルチャーを形成するのが夢。新しいエンタメの1つとして、「泊まれる演劇」を広めていきたい。
123
Profile

花岡 直弥

1993年生まれ、奈良県出身。大学進学を機に上京し、学生時代はテーマパークのアルバイトや学園祭の実行委員に打ち込む。卒業後は広告関係の会社に勤め、2019年6月に「SUISEI,inc」に入社。現在は「泊まれる演劇」のクリエイティブディレクター、プランナーを務める。

Shop Data

HOTEL SHE, KYOTO

京都市南区東九条南烏丸町16
TEL/075-634-8340

https://www.hotelshekyoto.com/

CATEGORY
MONTHLY
RANKING
MONTHLY RANKING

MARZELでは関西の様々な情報や
プレスリリースを受け付けています。
情報のご提供はこちら

TWITTER
FACEBOOK
LINE