4人のローカルスケーターが動き、長居公園に誕生させたスケートボードパーク。その裏側にあるいろんなストーリーと、パークに込めまくった想いとは。
僕ら、こだわりがオタクなんです(笑)。だから、持ってる知識や滑って気持ちいい感覚を全てブチ込んで完成したのが、このパーク。
では、皆さんそれぞれのプロジェクトの関わり方を教えていただければ。
武田:僕と山下君で『わくわくパーククリエイト』さんとのやりとりを行い、プロジェクト全体を見つつ、基本的な運営方法とかを考えました。
石川:僕は、知定君からパークの図面を書いてほしいと頼まれたので、基本の図面設計を担当。丸居君は、現場監督ですね。現場の視察をめちゃくちゃしてくれて、細かいところまでチェックしてくれました。
丸居:平日の仕事終わりとかに現場に顔出して、施工をめちゃ確認してましたね。ナイターの照明角度を調整したり、テストランして滑り心地を確かめたり。
石川:それぞれの役割があったし、マジで『わくわくパーククリエイト』さんと僕ら4人じゃなければできてなかったかも。
丸居:それは間違いない!
武田:トリックを決めたりするセクションを売ってる会社もあるので、その類のものを置くとどうしても似てしまうし、他と同じようなパークになってたかもしれないし。
営利目的のパークじゃなく、スケーターがほんとに楽しめる場所にしたかったと。もちろん、長居公園にあふれてたスケーター問題の抑制がスタートラインではありますけど。
武田:そうですね。打ち合わせに来る時とかにスケーターを見かけたら、「今パーク作ってるから、ごめんやけどガマンしてな!」って言うてました。
丸居:長居公園で散々滑り倒してきた僕らが言える立場じゃないですけどね。「もうちょっとやから!ガマンして!」って。
石川:打ち合わせに来るたびに、どんどん減っていきましたからね。「友だちにも言うといて!」と頼んでたから、広まっていったのかなと。
山下:大哲君に言われたら、みんな怖がるもんな(笑)
石川:やめてや、怖くない怖くない(笑)
でも、ローカルの子たちからすると先輩スケーターがこうやって動いてくれてることに希望を感じてたでしょうね。いろいろトントン拍子に進んでたそうですが、大変なことや苦労したことはなかったんですか?
山下:プロジェクトが進み出した当初は、不確定要素がありすぎて大変でしたね。実際、本当にできるのかどうかも分からなかったし、不安もありました。
武田:いろんな意味で注目度が高かったし、意見の集約が悩ましい所でした。
山下:知定君は長居公園歴も古いし、多かれ少なかれしがらみはあったと思いますね。要望とかもたくさんあったやろうし。
丸居:ほんとオリンピックで大注目されたからね。僕らはご縁に恵まれて携わらせてもらえたけど、やっぱりマネタイズより優先すべきなのは一般のスケーターが気軽に練習できる場所の整備でした。そこは『わくわくパーククリエイト』さん含めて、僕たち全員の共通認識であったと思いますね。
武田:あと、苦労したと言えば、まず僕らの言葉や認識が通じないこと。
山下:スケーターでは当たり前のことなんですけど、知識のない人からしたら分からないですよね。
武田:大哲君の基本設計をもとに設計会社に図面を起こしてもらったんですけど、レッジ(縁石)の高さが15cmやったんです。「なんやこの低さは!」と思ったんですけど、スケーターじゃないとその用途すら分からないのも当然やなと。だから、ほんと細かい部分まで伝えないといけませんでした。「レールのパイは何cmで、高さは何cmで」という感じで。
石川:逆に僕らはスケートボードのことは熟知してるけど、設計においては素人。そこの認識のすり合わせは大変でしたね。
丸居:具体的な数字で示すことに慣れてなかったからね。例えば、「レールの高さは地面から37cmでお願いします」と伝えてたけど、設計側は高さのTOP部分をパイの真ん中に合わせるのが基準だったんです。すると、パイの直径が6cmだから、必然的に高さは40cmになりますよね。実際、着工されて現場で見ると、僕らも目が肥えてるから見た瞬間に「何かちゃうな。ちょっと高いんちゃう?」って。で、聞いてみたらTOPの測り方が違ってたので、たかが3cmだけどやり直してもらいました。
その3cmの差は、スケーターにとってはもっと大きな差だったんですね。
石川:他にも、初心者向けに設定してたカーブの段差は30cmだったんですが、37cmで伝わってたからやり直してもらったり…。
丸居:「ここは初心者向けだから、お願いします!すいません!」って。オープンギリギリのタイミングで変更してもらいました。
「まぁ、しょうがないか。まぁ、いいか」とはならず、徹底的にこだわったんですね。『わくわくパーククリエイト』さんもそうですが、設計や施工会社さんもちゃんと納得させた皆さんの想いがやっぱすごい。
石川:妥協したら終わりですもん!
武田:レールも全て一回抜いて、やり直してもらってますから(笑)
石川:レールって横と縦の太さが同じだと、トリックする時にスケートボードのウィールが引っかかりやすいです。だから、縦の差し込みの部分を細くして埋め直してもらいました。
丸居:僕ら、こだわりがオタクなんです(笑)。だから、持ってる知識や滑って気持ちいい感覚を全てブチ込んだのが、このパーク。
皆さんの想いの結晶ですね。他にはどんな部分にこだわりが?
山下:長居公園と言えば路面がいいので、まずはこのコンクリートの床面。当初は大理石で見積もりしてたんですけどね。
石川:スタジアム側の路面と同じ石を使いたくて。
山下:でも、えげつない金額になってしまって(笑)。さすがにこれは無理やなと。
丸居:それでコンクリートにしたんですが、通常のスケートパークを作る時には導入できないようなすごい機械を使ってフラットにしてもらいました。日本の建築では勾配をつけるのが一般的だけど、あえてのフラットです。「雨水が流れない!」と散々言われましたが(笑)
石川:断固して、「勾配はゼロです!」と。
丸居:「ほんのちょっとでも勾配はつけた方がいい。雨が降った後は大変ですよ!」と言われ続けましたが、「水かきは僕らでやります!」って感じで譲りませんでした。勾配はない方が滑りやすいし、やっぱり楽しい。他のパークだと、ボールがコロコロ転がるくらい勾配がついてるところもありますからね。で、今朝も雨上がりだったんで水かきしてたんですが、大哲君だけ寝坊しました(笑)
石川:すいません…。社長出勤しちゃいました(笑)
武田:他には丸居君こだわりの床面のカッター(溝)ですね。
丸居:基本的に導線は縦向きで、長く広く使えるようにレイアウトしていて、レールやカーブも縦向きです。コンクリートのひび割れ防止のためにカッターを入れる必要があるんですが、導線に対して斜めにカッターを入れることでスケートボードが引っかからないようにしています。そして、レールやカーブ周辺のトリックを踏み切るところにはカッターを入れず、トリックしやすいようにしているんです。カッターのくぼみもなるべく極細の2mmにしてるので、他のパークよりも細いんじゃないかなと。
ほんとオタク領域のこだわりですね。
丸居:挙げればまだまだありますよ。初心者でも入りやすい、人数もたくさん収容できる、街中のストリートみたいなレイアウトもそう。それに、全長6mのレールは端の棒から50cm(4mのレールは30cm)はみ出すようにすることで、トリックしやすくしてます。市販のレールは端が角状になってるので、使いづらいしトリックする時に恐怖心が出てしまうんです。レールやカーブに塗ってる塗料も高価なもので、スケートボードがより滑りやすいものを選んでいて、ワックスのノリもいい。他にもサンフランシスコの有名なストリートスポットを再現したセクションがあったり、階段の幅を広くすることでケガをしにくくしていたり。セクションの踏み切り部分にはオレンジのフチを塗り、境目を肉眼で見れるようにすることでトリックに集中できるようにしたり。
このこだわりはオタク領域かもしれませんが、スケートボードとスケーターへの愛そのものですね。
武田:僕らも含めて街にいるスケーターのみんながここに来て、楽しんでもらうことが大前提ですからね。ストリートでも似たようなスポットがあるからこそ、ここが代用できる場所になればなと思ってます。
タイガーラックスケートボードパーク長居 運営クルー
昔から長居公園で滑っていたローカルスケーターの武田知定、丸居賢次、石川大哲、山下真也で形成されるパーク運営クルー。長居公園にスケートボードパークを誕生させた立役者たちであり、オタク領域のこだわりと深すぎるスケートボード愛で、指定管理事業者の『わくわくパーククリエイト』とともにスケーター想いの最高のパークを作り上げた。
Instagram
武田知定:@tomosada_t
丸居賢次:@maru_411
石川大哲:@hiroaki666
山下真也:@shinkinpark_0519
タイガーラックスケートボードパーク長居
大阪府大阪市東住吉区長居公園1-1
営業時間: 24時間(4月23日〜5月8日までは9:00〜21:00)
※本登録は9:00〜18:00
利用料: 年間登録料500円
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