【私的録-MY PRIVATE SIDE】 まるでリアル新喜劇!?『JITSUZAISEI』オーナー・MINAMI MIYAJIMAさんと歩く、人情味あふれる今里の商店街。


簡単にネットで作品が買える時代だからこそ、この場所を使って、生だからできることを一緒に考えたい

最後にお届けするのは、商店街歩きの前にお聞きしたインタビュー。この5年間のことや、これからのこと、いろいろと伺いました。

ギャラリーがオープンしたのは、2021年4月4日4時44分。それからもう5年になるんですね。

当時はコロナの影響でギャラリーが閉まったり、開いていても展示料が上がったり、美大の制作室も閉鎖されたりして、若手の作家が作品を発表できる場が減ってしまっていたんですね。何かできないかなと思ってギャラリーをはじめて、とりあえず走り続けてきたんですけど、いろんな縁のつながりが増えてきて、それがうれしいですね。

当時はグループでオンラインミーティングをしながらキュレーションしているというお話をされていましたが、現在はどんな形で運営されているんですか?

今はもう完全に一人ですね。ここで何かやりたいって言ってくださる方が結構いらっしゃって、私は応援したいっていう気持ちなんです。自分で企画して作家さんを呼ぶような企画力はまだ正直ないかなと思うので、面白い人と一緒に面白いことを実現するっていう感じは、最初からずっと変わらずにやってます。大阪にはまだまだ面白い若手作家がいるので、その人たちにここでいろいろ挑戦してもらって、さらに出世してもらいたいみたいな気持ちがありますね。

若手作家さんの挑戦の場になっているんですね。

この間、京都の嵯峨美術大学の『one room』というアート団体が初めて学外で展示をしたんですけど、その会場がうちだったんです。代表の方が、学外で展示をするときに、最初に思いついたのが『JITSUZAISEI』だって言ってくださって。京都じゃなくてもいいんだと思って。

たしかに、京都のほうがギャラリーとかめっちゃ多そうです。

代表の方が何回か来てくださってて、その時からずっと展示をするときはここがいいって思ってましたって。こんな住宅地の中の場所なのにも関わらず、そういってもらえるのがうれしいですね。

どういうところが作家さんたちに支持されていると思われますか?

白い天井に白い壁というホワイトキューブなので、やりやすさはあるのかなと思います。インスタレーションができるように天井も高くしてるんですが、レンタルギャラリーで吹き抜けのあるところは、私の知る限りでは他にないですね。あとは、価格的にも借りやすいのかなと。路面店でコマーシャルギャラリーっぽく見えるのに、意外と気軽に借りられるところも、魅力に感じてもらえているのかなと思います。

若手の作家さんが挑戦しやすい場所なんですね。

だからこそ、自然とチャレンジングな展示になるし、そこが面白がってもらえるポイントなのかなと思いますね。作家さんにも、場所を使った展示とか、ここでしか見られないものを考えてほしいなと思っています。

展示企画に対して、審査基準などはあるんですか?

お金を払えば何をやってもいいというスタンスではないので、 審査は設けています。基準は、ここじゃないとできないようなこと、ここじゃないと成立しないようなことですね。ただ並べるだけの展示でも意味があるならいいんですけど、なんだろう、描くだけじゃない頭の使い方をしたほうが絶対成長につながるので、そこを一緒に考えていきたいという気持ちがあります。

単に発表の場を貸すんじゃなくて、「ここでやる意味」を一緒に考える、ということでしょうか。

今は簡単にネットで作品は見られるし、買えるんですよ。それはそれでいいとは思うんですけど、でも私はこうやって場所があるから、それをちゃんと活用したいと思ってるので。生だからできることを一緒に考えようっていう。

この場所だからこそ、できることを。

そうですね。展示のクオリティというか、面白さを保つために、そこは大事にさせてもらってます。

MINAMIさん自身が、こういう場所があったらいいなという思いもありました?

それもありましたね。自分が個展をやったときに、売上のことを考えないといけないのがプレッシャーだったんです。売上がギャラリーと折半だったりするので、売れなかったらギャラリーに迷惑をかけてしまうので、売れそうなものを描いたり、グッズを作ったりとか、お金を稼ぐ手段を考えてしまって。それって本末転倒の気がしたので、もっとのびのびやってほしいし、攻めれば攻めるほどお客さんも来ると思うんですよ。うちはカフェバーもあるから、そこで数字はある程度補えるので。もちろん作品が売れたらうれしいけど、売れるものを作ろうとしなくてもいい場でありたいなと思ってます。

カフェバーが併設されているのも、『JITSUZAISEI』ならではですよね。普段はミナミさんがカウンターに立っているんですか?

基本は私一人です。一応ここは「アートに興味がある方限定」みたいな感じで。こんな場所なので、狙って来てくださる方がほぼ100%ですね。今は展示期間中のみ開けていますが、展示がないときもイベントっぽいことをやったり、もっとこの場所を使っていきたいなと思ってます。

カフェバーがあることで、ご自身やギャラリーにとって良かったことってありますか?

やっぱりコミュニケーションの大切さを実感しました。作品がどんなにかっこよくても、人としての相性が合わないと一緒に仕事がしづらいので、ここはそういう部分を自然に感じ取れる場にもなっていると思います。飲みながら話すことで作家さんの本音がふと見えたり、新しい一面を発見したりして楽しいですし、そこから関係性が広がっていく感じがありますね。

打ち合わせだけではわからない部分も、ここだと見えてきそうですね。

それと、私だけじゃなくて、コレクターさんとか音楽をやってる方とか、本当にいろんな人が集まるので、そこで「一緒に何かやろうよ」って話になったり、「こんなの作りたいんです」って相談が出たら「この人紹介するよ」ってつながったり。その様子を見てるのもすごく楽しいです。

アートやクリエイティブに関わる人が集まる場所だから、何かが生まれやすいのかもしれないですね。サロン的な感じなのかなと思いました。

そうですね。だから、ギャラリーだけじゃなくて、2階のこの場所も、ちゃんと楽しい場所にしていきたいなっていうのは特に最近意識してますね。

ギャラリー運営と並行して、ご自身の制作活動も、ずっと続けておられるんですよね?活動にもこの5年で何か変化はありましたか?

海外の展示に呼んでもらえることが増えて、昨年はオーストリアのアートフェアに出展しました。もともとInstagramでフォローし合っていた海外の現代アーティストが、まわりのキュレーターやギャラリストに「この子いいよ」って紹介してくれたんです。最初はグループ展に呼んでもらったんですけど、それが好評だったみたいで、アートフェアでは高さ2メートル、横10メートルのキャンバスに描きました。

超大作ですね!現地の人の反応ってどんな感じなんですか?

めちゃくちゃ良くて。正直、こっちに生まれたかったとちょっと思いました(笑)。海外のほうが、私の作風に刺さる人が多い気がしますね。

活動の場が、海外にも広がってきているんですね。

次はチリでの展示が決まってるんですけど、ここを始める前と比べたら、信じられないぐらいの出会いがあって。私自身の知名度も少しずつ上がってきたのかなと思って、それは素直にうれしいですね。

作風的には、何か変化はありました?

四角というモチーフはずっと変わらないんですけど、表現は少しずつ変わっています。最初は、遠目で見ると砂嵐みたいにしか見えないくらい、めちゃくちゃ小さい四角をひたすら描いていました。それが年々大きくなって、キャンバス自体もどんどん大きくなっていって。今は「これをどう扱うか」ということにも興味があって、柄として空間を描いたり、空間全体を使った見せ方を考えたりしています。

たしかに、平面だけじゃなくて、すごくいろいろな可能性がありそうです。

パッと見よく分からないんですけど、よく見たら奥行きがあって前に進めそうとか、球体が浮かんでたりとか。こういうのを描き出してから、海外でも面白がってもらえるようになったかなと思います。さらに今は、出口を作って、上からのぞいてるのか下から見上げてるのかわからない感じにしたり。そういう小さなアップデートはずっとしてますね。

オーストリア・ウィーンのアートフェア『SPARK』に出展された作品(※提供:MINAMI MIYAJIMA)

没入感がすごいですね…

3DでVRの空間でやってみたりとか、私次第でどうにでもなるような気がしてるので、いろいろやってみたいですね。

以前は、四角いモチーフは自分を浄化するために描いていたとお話されていましたが、今はどうですか?

最初は本当にすがるしかないって感じで描いてたんですけど、今はわりと計算して作ってます。自分と向き合うという意味では変わってないけど、八つ当たりみたいな気持ちはなくなりました。

なぜそれほど四角に惹かれるのか、ご自身ではどう考えていらっしゃいますか?

まだ答えは出てないんですけど、建築が好きなんですよ。建築=空間のインスタレーションともいえるじゃないですか。そこにずっと魅了されてて。いつか建築もやってみたいけど、今はできないから、自分の頭の中の妄想をとりあえず絵として描き出すっていう感じです。

四角以外のモチーフを描いてみたいという欲求はないですか?

昔はイラストレーターに憧れて人物画とかを描いてて、でもそれがしんどくなってこの絵にシフトチェンジしたんですけど。やっぱりイラストを描くのが好きで、そっちも少しずつやってます。グループ展に出させてもらったり、そっちもすごく楽しいですね。もうちょっと基盤を整えられたら、別名義でイラストレーターとしてもお仕事できるようになったらいいなと思ってます。

5年間続けてこられて、少し余裕が出たという感じもありますか?

いや、ずっと迷走はしてます(笑)。でも、以前は受け身で、流される方が楽だと思ってたんですけど、ちゃんと自分で選んで進めているようになってきたので成長かもしれないです

でも5年は決して短い時間ではないと思いますが、その中で「やめよう」と思ったことはなかったですか?

それはないですね。自分で決められるというのは大きいと思います。誰かに合わせるというより、自分で「今はちょっとペースを落としたいな」と思えば、そうすることもできるので。その自由さがあったから、ここまで続けてこられたのかなと思います。

これから改めて、この場所をどうしていきたいですか?

面白いアーティストが集まり続ける場所であることが一番ですね。この場所だからこそ尖れるし、ここに集う人をもっと増やしていきたいです。

ちなみにここを始めた当初、5年後の今を想像していましたか?


全くしていなかったです。むしろ「嫌になって店を閉める妄想」ばっかりしてました(笑)


<INFORMATION>

アートギャラリー&カフェバーJITSUZAISEI

※カフェバーは会期中のみ営業
住所:東成区大今里4-14-18
Instagram: @jitsuzaisei

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Profile

MINAMI MIYAJIMA

1997年、大阪市此花区梅香生まれ。現代アーティスト。2021年、自身がディレクターを務めるアートギャラリー『JITSUZAISEI(実在性)』を設立。四角形(スクエア)をモチーフとした抽象表現を軸に制作している。関西を拠点に国内外で個展・グループ展・アートフェアに参加。オーストリア・ウィーンのアートフェア『SPARK』をはじめ、ハンガリー、フランスでのグループ展出展、台湾での個展開催など、活動の場を海外へと拡大。アーティスト活動と並行して、グラフィックデザインやイラストレーションも手がける。

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