【私的録-MY PRIVATE SIDE】 まるでリアル新喜劇!?『JITSUZAISEI』オーナー・MINAMI MIYAJIMAさんと歩く、人情味あふれる今里の商店街。

OsakaMetro今里駅から徒歩5分ほど、商店街から少し離れた路地に、現代アートギャラリー『JITSUZAISEI』があります。こちらのオーナーであり、自身もアーティストとして活動するMINAMI MIYAJIMAさんを取材させていただいたのは、2021年10月のこと。コロナ禍のただ中にあった2021年4月4日4時44分にオープンし、最初の3ヵ月は住所を明かさず、クラファンで支援した人のみが場所を知ることができる……というトリッキーな仕掛けに興味を惹かれ、取材をお願いしました。あれから5年、市内中心地から離れた今里という場所にありながらも、『JITSUZAISEI』は数々の印象的な展示を重ね、独自の存在感を示し続けています。そこで今回は、気になるあの人の違った一面を掘り下げる【私的録-MY PRIVATE SIDE】として、MINAMIさんの一日に密着。ギャラリーやアトリエにお邪魔してこれまでの5年間を振り返りつつ、今やホームとなった今里界隈を案内してもらいました。
下町にたたずむ真っ白なギャラリーと、モノトーンのアトリエを訪問。

現代アートギャラリー『JITSUZAISEI』があるのは、家々が立ち並ぶ住宅街の中。周囲にはお寺や神社、学校、公園、商店街が点在しています。ギャラリーの立地としては少し意外な、いわゆる“生活の場”といった雰囲気。でも、不思議なほど違和感なく溶け込んでいるのが印象的です。

「ここはもともと一軒家なんですけど、たまたま縁あって使わせてもらえることになって。最初は自分のアトリエにしようと思ってたんですけど、当時はちょうどコロナ禍で、若手の発表の場がなくなっているという話を聞いていたんです。そこで、自分にも何かできないかなと考えて、ギャラリーにしました」

弱冠24歳でギャラリーオーナーとなったMINAMIさん。右も左もわからないところから始めて、この5年で自分自身がずいぶん変わったと言います。「とりあえず走ってみよう、という感じで始めたんですけど、少しずつ自分がやりたいことが見えてきて、面白い人が集まってきて、関わる人も変わってきて。すごく居心地のいい場所になってきたなと感じます」

ギャラリーに併設されているカフェバーの存在も、自身の変化に大きく影響していると言います。「人と会う機会が増えて、人が怖くなくなりました(笑)。めちゃくちゃ喋れるようになりました」
もともとMINAMIさんは「人と喋りたくないし、会いたくもない、完全に引きこもりタイプ」。それなのにカフェバーを始めることになったのは、とある人からの強い勧めがありました。「夫がバーを経営してまして、コミュニケーションが生まれるから、絶対やったほうがいいって言うんですよ。私は正直、マジで嫌だなと思ってたんですけど。でもどんどん構想が進んで、もうやるしかないかと思って」
最初は嫌々ながらも、カフェバーを開いたことで周囲とのつながりができ、地元の知り合いも増えたと言います。最近はギャラリーの近くにアトリエも借りたとのことで、そちらにもお邪魔することに。

ギャラリーから徒歩数分、案内していただいたのは、こちらもごくごく普通の一軒家。でも階段を上がると、そこには白と黒の異空間が待ち受けていました。


和室の引き戸の向こうに広がっていたのは、自身の作品をプリントしたファブリックで壁を覆い、床もモノトーンに張り替えたアトリエ。ここがMINAMIさんの創作の場です。
「ここは知り合いのデザイン会社さんの物件なんですけど、2階が空いてるから使っていいよと言っていただいて。2か月ほど前から借りてます」。ちなみに、床を張ってくれたのもギャラリーのお客さんとのこと。モノトーンで描かれる無機質な作品のイメージとは対照的に、その背景には人と人との有機的なつながりがあるのが意外でした。

画材は、ホルベインのスーパー オペーク ブラック(黒すぎる黒)を愛用。定着率が良く、さわっても汚れないところが良いそう。「色が使えないので、黒の色味にはこだわりたいなと思って。色って無限にあるのでパニックになっちゃうんです。100か0か、白か黒か、自分の思考とリンクしてますね」

現在手掛けているのは、チリのギャラリーに出展する作品。「チリとスペインにあるギャラリーから連絡が来て。チリのことをほとんど知らないので、どんな反応が返ってくるのか楽しみですね」と話します。最近は海外のギャラリーから声が掛かることも多く、昨年はウィーンのアートフェアに10メートルもの大作を出展。そうした交流をきっかけに、5月にはウィーンで出会ったオランダのアーティストが『JITSUZAISEI』で展示を行う予定もあるそうです。

作品も画材もご自身の服装もすべてがモノトーンなMINAMIさん。でもご自宅は、「全然ちがいます。普通に茶色とかあります(笑)」とのことでした。


MINAMI MIYAJIMA
1997年、大阪市此花区梅香生まれ。現代アーティスト。2021年、自身がディレクターを務めるアートギャラリー『JITSUZAISEI(実在性)』を設立。四角形(スクエア)をモチーフとした抽象表現を軸に制作している。関西を拠点に国内外で個展・グループ展・アートフェアに参加。オーストリア・ウィーンのアートフェア『SPARK』をはじめ、ハンガリー、フランスでのグループ展出展、台湾での個展開催など、活動の場を海外へと拡大。アーティスト活動と並行して、グラフィックデザインやイラストレーションも手がける。