身体、肉体、存在…自分自身がアートの一部に。白子侑季さんが生み出す唯一無二の「SHIRACO WORLD」。

昨夏は阪急うめだ本店の巨大コンコースウインドーをカラフルに埋め尽くし、この冬はルクア大阪のショーウインドーをラブリーでいっぱいにした気鋭のアーティスト、白子侑季さん。デジタルコラージュの手法をメインにしつつも、インスタレーションやファッション、造形などその表現方法は実にさまざま。しかも、多くの企業の案件を手掛けるやり手のグラフィックデザイナー・アートディレクターでもあり……と、アウトプットの手法も活動の幅も広くて、その実態が掴めません。というわけで、白子さんとはいったい何者なのか!?が知りたくて、インタビューにうかがいました。場所は、2月28日まで展示されているルクア大阪1Fメインウインドー前。作品へのこだわりもたっぷりお聞きしています!
今回は女の子の妄想のセカイを表現しているので、あなただけのワールドを愛してあげてね、みたいなイメージです。

ルクアのバレンタインウィンドーを担当されていますが、これはどんなきっかけで?
阪急さんのコンコースウインドーを飾らせてもらって、次はバレンタインシーズンにやりたいなと思って動いていたところでちょうどご縁が繋がって。私が平面の作品を見せるだけでなく、こういう空間を使って見せることができるというところで任せていただけることになりました。具体的に進み出したのが11月中旬ぐらいだったので、けっこうタイトでした。
この展示は、ご自身がディレクションも担当されているんですか?
そうですね、ディレクター兼アーティストで。ただ、私はビジュアルを作るプロだけど、施工のプロではないから、そこは施工屋さんに見せ方のアドバイスとかもいただきながらっていう感じでした。

自分で現場を仕切れてしまうアーティストさんって、なかなかいない気がします。
フリーランスになる前は、外食産業企業でインハウスのグラフィックデザイナーをやってたんです。その会社で、店舗の立ち上げや内装ディレクションに関わるお仕事をしてたので、そういう経験も生きてるのかなと思います。例えば、この什器なんですけど、実はもっと低かったんですよ。現地調査をした時、これは立って見るには高さが足りないんじゃないかなと思って。だから今回は施工屋さんに頼んで商品が映えるように高さを出してもらいました。台座に巻いてるスカートも既製品を分解して自分で再構築して貼り付けました。

がっつり現場に入って作業されるんですね!
フィジカルな作業もけっこう得意にしていて。インスタレーションもやってたので、わりと臨機応変に動けるというか、現場慣れはしてると思います。あのマネキンのアイマスクは、メインビジュアルの女の子のアイマスクが具現化したっていうイメージなんですけど、あれも年末に一人自室で内職みたいにちくちく作りました(笑)。妄想がテーマなので、妄想したものがリアルで存在してたら面白いかなっていう感じで。

施工関係をサポートしてくれる方々の支えがあるとは言え、平面のビジュアルも制作して、小物も製作して、現場での見え方も調整して…って、1人何役!?っていう感じです。
これ、メインの女の子も私なんです。
え、そうなんですか!?
ベッドに寝転がって、セルフで撮影して。このブランコに乗ってるのとか、手とか唇とかのパーツも私なんです。自分自身の身体のパーツを素材として使うっていうことも、ずっとやり続けていて。そこが自分の制作の軸なんです。



クライアントワークでありながら、ちゃんとご自身の作品でもあるっていう。
ちょっと新ジャンルですよね。自分自身を作品に使う表現って、現代アートの文脈にもあるんですけど、それを商業の場でも生かせるという。例えば、今までだったら芸能人とかインフルエンサーとか、そういうお顔を出してこそ価値がある有名人がこういう商業施設とのコラボだったり、広告塔になったりするのが一般的ですけど、私は顔は出さないけど、世界観を作るということで、そういうお仕事もできるんじゃないかなとか。ただの妄想ですけど、そういう目線で新ジャンルを開拓していきたいなと。まわりのグラフィックも含めて、私込みのこのアート自体が強いメッセージ性を持った訴求方法のひとつになってるみたいな。
いや、あると思います!顔は出さなくても、世界観はめちゃくちゃ出てるので!こういう形での自分自身の使い方っていうのは今までなかった気がします。
私、目元を隠すのがポイントだと思ってて。目ってアイデンティティなので、“その人”を表すじゃないですか。芸能人とかだったらその人に対する憧れで商品を買ったりするからそれでいいんですけど、私の場合は見る人が自分自身を投影してほしいので。これはあなたでもあるし、私でもあるし、あの子でもある、みたいな感じのニュアンスなんです。

白子さんではあるけれど、でも誰でもなくて、誰にでもなれる。ってすごく面白いですし、白子さんの表現でありつつも、商業デザインとして成立してるところが絶妙だな思います。
アートとデザインが交わることで、より社会にメッセージを伝えやすくなるんです。アートって社会の中で絶対に機能しているものだと思うんですね。アートだからこそ伝えられる事があるんです。でもアートだけでは届きにくい場合もあって。この展示は、テーマである「LOVE Your World more!more!」をロゴとして入れてるんですけど、なくてもアートとして成立する作品を作っているつもりで。でもより多くの人に届けるためにアイキャッチとしてタイトルロゴをデザインして入れてます。そういうのが、アートと社会を繋ぐデザインの役割だと思います。

確かに、アートだったら文字で伝えなくてもいい気がしますね。このタイトルは、ルクアの方が考えたものなんですか?
私が考えました。今回は女の子の妄想のセカイを表現しているので、あなただけのワールドを愛してあげてね、みたいなイメージです。SNSの時代だし、みんな思ってることを発言して叩かれるんじゃないかとか、めっちゃありますよね。でも、言えないからといって想像したり考えるのをやめてしまうんじゃなくて、妄想は自由だから、いい妄想をいっぱいして自分だけの世界を愛してあげてほしいなと思って。それは、私が伝えたい「LOVE yourself!」にも繋がることでもあるので。
ご自身の表現のコンセプトともめちゃくちゃリンクしてるんですね!すごい、ルクアさんと白子さん、幸せなマッチングですね。
そうですよね!だから、構想を練ってる時間も作っている時間もめちゃくちゃ楽しかったです!

SHIRACO WORLD / 白子侑季
和歌山県出身。アートを通して「LOVE yourself!」を世界に伝える表現者。『愛・いのち・自己』をテーマに2004年より創作活動をスタート。2014年より『自分自身が唯一無二の作品である』という思想と哲学のもと自身の肉体をモチーフとした【セルフ・オマージュ シリーズ】を発表。グラフィック、インスタレーション、ファッションなどジャンルに囚われない様々な表現方法で国内外問わず活動中。キービジュアル制作、企業とのタイアップ企画、ミュージカルの衣装制作など、多岐に渡り“世界観を創る”仕事に携わる。
海外での活動時に『SHIRACO WORLD』を名乗るようになり、現在ではアーティストネームであり、白子侑季が創り出す世界の総称としている。アートディレクターやデザイナーとして活動する際は『白子侑季』名義。
大阪・関西万博公式ロゴマーク 優秀賞受賞(2020年)
阪急うめだ本店コンコースウインドー アートワーク(2024年)
ルクア大阪・ルクアイーレ バレンタインウインドー アートワーク(2025年)など