油彩画が本当の自分に出会わせてくれた。大阪のストリートからアートシーンを横断していくツダハルトさんが描き、刻む、日常に潜む光景とこれからの自分史。


最終的にはアカデミックなシーンでも存在感を放ちながら、ストリートとも行き来できるようなアーティストとして活動していきたい。

油彩画を始めてから5年が経ち、自身のスタイルでの表現活動が際立ってきているように思うんですが、ツダさん的にアーティストとしての転機となるような出来事は何かありましたか?

2022年から2024年が転機というか、素敵な方々と出会えたおかげで導いてもらったと思ってます。高校を卒業した翌年の2022年12月に、DJをしてる中学の友だちとその仲間でポップアップをしたんですが、僕はキャンドルの販売と作品の展示を行いました。場所は南堀江のコーヒーショップで、オーナーのタイラさんには今も色んな相談に乗ってもらってます。ポップアップではたくさんの方に作品を観てもらうことができ、その時に南堀江のギャラリー『AQUR』のマガノさんと出会い、2023年7月に初の個展をさせてもらいました。そして、そこに<WHIMSY>の宗太さんが来て、2024AWアイテムへの作品提供や2024年10月に『RISE ABOVE GALLERY』で開催した個展へと繋がったんです。2022年の頃は、どうやって活動していくか悩みながら描いてたけど、周りの方々のおかげで今があります。みんなすごい方ばかりで、こうやって繋がっていただけたことに自分の理解がまだ追いついてない部分もあるんです(笑)

写真左は、初めてのポップアップで制作したオリジナルキャンドル。写真右は、キャラクターをダイナマイト化した立体作品。

一気に繋がっていったんですね。でも、ツダさんが描き続けてきた作品があったからこそ、この繋がりがどんどん良い方向に進んでいったんじゃないですかね。周りには素敵な先輩たちがいますが、色んな話や時間を重ねてきた中でツダさん自身の考え方などが変わった部分はありますか?

すごく変わりましたね。人としてのエネルギーというかマインドというか、宗太さんにしても「さぁ、行くぞ!」っていう感じがすごくて。個展をサポートしていただいた時も、アイテムを作る時も、熱量にびっくりさせられました(笑)。だから、すごい熱量を持った方から影響を受けることは多いですね。生き方の部分とか、僕はまだまだわからないことだらけなので。ただ、自分の思考の部分だけは絶対に侵入されたくないんです。

今とこれからのためになる、そんな良い影響ばかりですね。思考の部分というのは、絵を描く上での?

そうですね。そこは意図的にガードしてます。影響されて、自分の思考が揺らいでしまうことが怖くて…。絵を描くことをはじめ、作品制作の部分については自分の思考で大丈夫!そう思うようにしてます。

ツダさんの芯の部分ですもんね。そこを揺らがさず、きちんと自分に根付かせてるのは大事なことだと思います。一度揺らいでしまうと、迷走というか、自分の答えを導き出せなくなりそうですもんね。作品では日常のちょっとした場面を描いてますが、ツダさん自身が日常の中で大切にしてることって何かありますか?

受け入れることですね。

アーティスト・ツダハルトのシグネチャーフォントとして制作している粘土で作った文字。こちらの「i want to know cheat code」は、直訳すると「チートコードを知りたい」ですが、真意は「ラクして生きる方法を教えてほしい」。努力や挑戦を忘れた人への警笛となるような言葉。

というのは?

例えば個展などで作品を観ていただいた時に、お客さんがちょっと申し訳なさそうに絵の意図を聞いてきたり、気を使いながら感想を伝えてくることがあったんです。自分としては、新しい視点を見つけるきっかけにもなるので、むしろ意見をどんどん聞きたいなと。そんな想いがあったことを、<WHIMSY>の2024AWアイテムを作る時に宗太さんと話してて、“相手の選択を肯定する”を裏テーマに掲げて制作していたんです。

否定はしない。受け入れることで、見えてくるものがあると。

というか、自分は絶対じゃないってことです。もちろん自分の思考は自分のものですが、相手の選択は否定せずに、意見はちゃんと聞く。この選択の話はスケッチブックにも書き残してて、選択を続けてきた結果が今の自分なんです。でも、別の選択をしたパターンも存在するわけで、僕が今幸せなのは選択を肯定してきたからであり、相手の選択も肯定するべきだと。

なるほど、選択を肯定することは、自分も相手も前向きでいられる。

例えば、「アレはダサい!」とか言う人がいるじゃないですか。でも、“アレ”を作ったり、選んだ人もいるわけで、その理由までしっかりと考えた上で、ダサいのではなく自分に合ってなかっただけ。テイストとかノリの違いは突き詰めると、自分の学びにもなりますからね。頭ごなしに否定するのではなく、肯定して自分の中に受け入れること。そんなことを日常の中では大切にしてます。

新たな視点にもなるし、気づきにもなるし、そういった日常や人との向き合い方は、日々の制作だけではなく、ツダさんの内面的な成長にも繋がりそうですね。

はい。ただ、なかなか慣れないこともあって…。

何ですか、それは?(笑)

昨年10月に『RISE ABOVE GALLERY』で行った個展でもたくさんの人に来ていただいたんですが、「すみません、一緒に写真を撮ってください」って言われることがあって…。僕的には「えっ!?そんなことになるんや」って感じで。<WHIMSY>のショップである『COFLO』にいた時も、商品を購入していただいたお客さんにスタッフさんが「作った人はこの人ですよ!」って紹介され、また写真を撮ることになったりして…。初めましての人といきなり一緒に写真を撮ることがまだ慣れないし、堂々としたいけどふにゃふにゃしちゃって…。

ごめんなさい、ツダさん可愛いすぎ(笑)。でも、すごく喜ばしいことだし、お客さんからしたら「ツダさんだ!」って感じでしょ。まぁ変に慣れる必要もないですし、ありのままのツダさんで受け入れたら良いと思います。2月14日からは、京都の現代アートギャラリー『haku』での個展も始まるので、また写真を一緒に撮られる機会が増えるかもですね。

その部分はまた、頑張ります(笑)。『haku』では、2023年6月のグループ展に参加して以来で、キュレーターのhiroさんに今回声をかけていただきました。現在、制作の佳境ですが、いろんな作品との出会いを楽しみにしておいていただければと思います。

僕らも楽しみにしてます!では、これからのツダさんの夢、アーティストとしての目指してる姿について聞かせてください!

お世話になってる先輩たちに支えられて、今の僕はストリートのシーンで活動できてます。ストリートカルチャーは大好きで、僕自身を形成してる大切な要素でもありますが、最終的にはアカデミックなシーンでも存在感を放てるアーティストになりたい。ストリートとアカデミックのどっちも行き来しながら、活動したいと思ってるんです。

めっちゃ素敵な夢であり、姿ですね。僕は専門家ではないですが、現代美術とストリートアートの境界線はここ数年でなくなってるように感じるし、カテゴライズする上での言葉なのかなと。ツダさんのスタイルで双方のシーンを行き来する動きができれば、また新しいシナジーが生まれてきそう。表現はいつの時代も自由だから、ガンガン進んでください!

それと、これは恥ずかしくて言ってないんですが……。

言いましょう!!

美術館で自分の作品展がしたい!!これは、僕の中にある大きな目標です!


<ツダさんのお気に入りのお店>

タイラさんのコーヒーショップ(大阪市西区南堀江2)
僕が初めてポップアップをさせていただいた、店名のないコーヒーショップです。オーナーのタイラさんには今もお世話になってて、週1回は必ず行って色々相談に乗ってもらってます。

COFLO(大阪市西区南堀江1)
<WHIMSY>を手がける宗太さんのショップです。宗太さんには個展をサポートしていただいたり、<WHIMSY>の2024AWアイテムを一緒に作らせてもらったりと、すごくお世話になってます。週1ペースで遊びに行って情報交換したり、色んな話を聞いてもらってます。

123
Profile

ツダハルト

2003年生まれ、東大阪市出身。高校2年生から油彩画を独学で始め、日常に潜むシュールな場面を複合的に構成して描く。その他にも粘土を用いた立体作品やグラフィック作品の制作を通して、鑑賞者と自身の関係性も楽しめる表現を追求。2022年に行ったポップアップをきっかけに様々な繋がりが生まれ、アーティストとしての活動が本格化し、これまでに大阪や京都、名古屋、東京などで展示を行う。スケートボードカルチャーをバックボーンにした大阪発のソックスブランド<WHIMSY>には、2024AWの様々なアイテムに作品を提供する。アンティークな雑貨やおもちゃ、昔の雑誌を収集するのが好き。

CATEGORY
MONTHLY
RANKING
MONTHLY RANKING

MARZELでは関西の様々な情報や
プレスリリースを受け付けています。
情報のご提供はこちら

TWITTER
FACEBOOK
LINE