淀川区に巨大壁画が出現!仕掛け人BAKIBAKIさんが描く、2025年大阪・関西万博に向けた「淀壁構想」とは。


淀川区って、昔のNYのブルックリンに似てるというか。変えていけそうな予感があった。

「十三光スタジオ」は住所非公開。イベントの際、参加者にのみ住所が公開される。

淀川区をプロジェクトの舞台に選んだのは、ご自身のスタジオがあるからですか?

そうですね。「十三光スタジオ」は祖父の鉄工所跡なんですよ。6年前に東京から帰って来た時に、祖父が残してくれたものを生かしたいって気持ちがあったのと、もうひとつはミナミとかキタはもうできあがってるけど、ここは今からでも何かやりたいことできるんかなって予感があったんです。自分たちで、ちょっとずつ変えていけそうな感じがあるんかなと。淀川区ってお年寄りが多いまちで、橋を渡ったら梅田や中津があるから若者のカルチャーもあんまりない。でもNYのブルックリンがイケてるまちになる前と似てるというか。若いアーティストとか面白い人が、住みたいと思えるようなまちにしていけるんちゃうかと思ったんです。

海外や東京を見て来たからこそ、淀川区のポテンシャルに気付けたのかもしれないですね。

そうですね。それと、コロナ禍で海外に行けなくなったじゃないですか。前はほんまにフットワーク軽々でどこでも行ってたんですけどそれができなくなったのと、あとは子供が生まれたのもあって、このエリアを受け皿にしていろんなアーティストを呼んで、ここで壁画プロジェクトをできたらええなっていう構想が生まれたんです。

コロナやお子さんの誕生があって、拠点である淀川区に関心が向いたと。

こっちで知り合いも増えたし、行政の人ともつながれたし。この6年で十三光スタジオもたくさんのアーティストといろんなイベントをやってきたんですけど、スタジオのプライベートな感じと、壁画プロジェクトみたいなパブリックな感じを両立できたら面白いんちゃうかなと。

アスリートみたいな気分ですよ。決められた日数で、この壁をどう攻略するか!みたいな。

学生時代、初めて「自分の絵をコントロールできた」と感じたBAKI柄。「この柄に関しては、僕より上手な人はいないんですよ」

BAKIBAKIさんはなぜ壁画を描くようになったんですか?

もともと壁画から始めたわけでなくて、大学時代は彫刻専攻やったんです。2001年からライブペイントデュオ<DOPPEL>の活動でライブペイントをするようになったんですけど、2人で描くから大きさが必要やし、ある程度大きくないと見映えもしないんですよ。そのうち野外フェスとかで、だんだん大きい作品を描くようになっていった感じですね。

スタートはライブペインティングなんですね

20代から30代はライブペイントがクラブカルチャーから派生してきた時期で、自分たちでイベントを主催したりしてたんですけど、でもライブペイントってドメスティックな文化で、日本だけにとどまってしまう部分があったんです。海外では壁画フェスとかで、みんなガンガンでかいのを描いてるんですよ。それを見て、海外とリンクしていくには壁画っていうフォーマットが通用するんやなと思って。それで壁画のほうに移行していきました。

ギャラリーやスタジオでの展示と、壁画の違いはどんなところですか?

壁画は美術館みたいにわざわざ観に行くものではなくて勝手に目に入るものやし、アートに興味がない人の目にも入るものですよね。そこが一番の違いで、外に出す(描く)ことでまわりの反応もぜんぜん違う。壁画はストリートアートというより、自分の中ではパブリックアートという感覚なんです。

たしかに、公共の風景の一部になるわけですもんね。

それと、まちに残るというのも大きい。ナイチンゲールはコロナ禍の最前線にいる医療従事者の方への感謝という意味を込めましたけど、あれがアマビエやったら多分もう飽きられてると思うんですよ。新聞のように日々更新されていくものなら時事性があってもいいけど、壁は残るものやから。時事性を持たせることで古くなってしまう場合もある。バンクシーみたいに社会的なメッセージを発信するアーティストならそれも面白いけど、そういうわけではないから。

「日本は公共空間に対して、みんなのもので誰のものでもないって意識がある。装飾も襖絵とか内側には凝るけど、建造物を装飾したりは歴史的にもあまりないですよね」

ちなみに、BAKIBAKIさんが最初に手掛けた壁画は?

<DOPPEL>の活動を始めた頃に、北海道の牛舎に描かせてもらったことがあったんです。相方は塔みたいなところに描いて、僕は牛舎の屋根に描いたんですけど、その時に外で描くことの洗礼を受けました。屋根の上に当時のBAKI柄を描いたんですけど、翌朝見たら、霜で塗料が流れてるんですよ。うわーっ!てなりました。当時はそれが耐えられなかったですけど、やっぱりあるんですよ、外で描くと。野外でライブペイントしてたら雨で絵が流されたりするんですけど、経験を積むうちにポジティブになって、なんなら「地球と一緒に描いてます」みたいな(笑)。雨のテクスチャーも生かすぐらいの感じで。

そういうの、まさに外ならではですね。

台湾の高雄って港町で壁画を描いたときは、基本スコール、やんだら灼熱。そんな環境で描くってもう、アスリートみたいな気分ですよ。決められた日数で、この壁をどう攻略するか!みたいな。だいたい海外に行くと、自分で描こうと思っていたことの半分もできずに終わりますからね。言葉の問題もあるし、日本人ほど几帳面じゃないから、画材が届かないとか普通にあるんですよ。でもそれを乗り越えて完成させる達成感があるというか(笑)。

アトリエにこもって描くのとはぜんぜん違う!

そんな状況でもなんとか作品を完成させられるのは、ライブペイントでやってきた経験値が生きてるのは確かですね。外的な要因を受け入れて取り込むっていう感じ。

すごい、めっちゃ面白いですね。

ほんまに、壁画ってポピュラーじゃないだけで、めっちゃ魅力的なアートのひとつやと思うんです。

2025年の万博に向けて、個人のアーティストが何か起こせそうなタイミングやムードを感じるんですよ。
123
Profile

BAKIBAKI

1978年生まれ。オリジナルデザインのを武器に、世界各国の壁画フェスティバルに参加。また、ショップやホテルなどの壁画を手掛ける。2015年より大阪・十三に「十三光スタジオ」を開設、巨大壁画を制作のほか、イベントやワークショップ等も開催。

http://bakibaking.com/
https://www.yodokabe.net/

CATEGORY
MONTHLY
RANKING
MONTHLY RANKING

MARZELでは関西の様々な情報や
プレスリリースを受け付けています。
情報のご提供はこちら

TWITTER
FACEBOOK
LINE