Interview & Writing
六車 優花
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小林 俊史

アート、ファッション、音楽、フードなど、あらゆるジャンルのフレッシュなクリエイターが参加するカルチャーの祭典「P.O.N.D.」。こちらは今年 10月に渋谷PARCOで実施されたイベントで、10日間に渡る開催期間の来場者数はなんと延べ5,000人以上! 大盛況のうちに幕を閉じた渋谷会場を経て、5名の気鋭クリエイターによるアート作品が、心斎橋PARCO 4Fの『SKiiMa Gallery』に登場。会期のスタートに合わせて来阪していた5名のクリエイターにインタビューを行い、作品に込めた思いやこれから挑戦したいことを伺いました。ぜひこの記事をチェックして、足を運んでみてください!

カルチャーの祭典「P.O.N.D.」とは……?

そもそも「P.O.N.D.」ってどんなイベントなの? まだよく知らない人も多いと思うので、まずは「P.O.N.D.」についてご紹介します!

「P.O.N.D.」は、渋谷PARCOを舞台に2011年にスタートし、これまでのべ1000組以上の若手クリエイターが参加した「シブカル祭。」のフィロソフィー、“あたらしい才能の発見と応援”を受け継ぐ大規模なカルチャーイベントです。

8年間続いた「シブカル祭。」の後継として昨年初めて開催された「P.O.N.D.」には、「Parco Opens New Dimension」、常に“新しい次元を切り開いていくイベントでありたい”という意思が込められています。今年は“TRANSFER=移ること、伝わること”をキーワードに、「退屈な日常ではなく非日常を感じたい」「見たことのない景色をこの眼で見たい」という思いを、総勢70名以上のクリエイターが表現しました。その中から選抜された5名によるグループ展「P.O.N.D. mini」が、11月19日(金)より心斎橋PARCOの『SKiiMa Gallery』にて開催中。平面、立体、映像、写真などをミクスチャーしたミニマルな展示は、仕事やショッピングの合間に立ち寄って鑑賞するのにぴったり。みずみずしい感性を投影した個性豊かな作品が、まだ見たことのない新しい世界への境界線に連れて行ってくれるはずです!

来阪した5名のクリエイターにインタビュー。みずみずしい感性を落とし込んだ作品をご覧ください!

ここからは、イベントに合わせて来阪した5名のクリエイターへのインタビューをお届けします。

01_沼田侑香/現代アーティスト

今回展示している作品について教えてください。

沼田:以前ウィーンに留学していた際、ドイツ人の友人がとある飲み物を「このコーラは安いけど“本物のコーラ”の味がするよ」と勧めてくれたんです。その子は“本物のコーラ”を“コカ・コー●”だと認識していたみたいなのですが、私は“本物のコーラ”がよくわからなくて。そのとき、人間同士の感覚を完全に一致させるのは難しいと気付いたんです。これは、そのときのようなちょっとした認識の“ズレ”を視覚的に表現した作品。今回の展示の全体テーマにもマッチするのではと考えました。

沼田:こちらはスマホで撮った写真をプリントし、断熱材として用いられるスタイロフォームという建築資材に貼り付けて制作しました。切断面などをあえて剥き出しにすることで、構築する過程が連想できるようなつくりにしています。建築資材という本来なら人の目に触れることのないものが、剥き出しになっている状態も面白いのかなと思います。

作品の中心をくり抜くことで、前面と背面との空間の繋がりを意識できるような仕掛けに。
背面にはドイツ語で「このコーラは本物のコーラのような味がする」と描かれています。

今後挑戦したいことはありますか?

沼田:普段はアイロンビーズを用いた作品が多いのですが、もっと変わった素材を使ってみたいと考えています。今回使用したスタイロホームが気に入ったので、これとは違う建築資材にも挑戦してみたいですね。

02_遠藤文香/フォトグラファー

今回展示している作品について教えてください。

遠藤:“TRANSFER”というテーマを“異世界への移行”と解釈し、日常的なモチーフが巨大化することにより起こる意識や視点の転換を作品に落とし込みました。小さくて愛らしい佇まいのチューリップも、大きくプリントすることで、私たちに恐怖さえ感じさせる存在になり得る。人間と自然物との力関係が逆転したような、非日常的な世界を表現しています。

今後挑戦したいことはありますか?

遠藤:これまでも自然や自然物を題材に作品づくりをしてきましたが、今回のような花のシリーズはこれからも続けて行きたいと思っています。ファブリックだけでなくさまざまなマテリアルに挑戦して、さらなるアップデートができたらと考えています。また、普段は動物の写真を紙にプリントして展示することが多いですが、さらにテクスチャーを視覚的に感じられるような作品づくりを続けていきたいです。

03_Hana Watanabe/映像作家・ビジュアルアーティスト

今回展示している作品について教えてください。

Hana:短編映像と写真で構成された「新しい温度」という作品です。私は今年の夏、今まで感じたことのない胸の痛みを覚えました。とある友人が同じ時期に社会的、精神的に追い詰められている場面を目の当たりにし、その子と自分の痛みが地続きであるように感じられたのです。それ以来、他人の痛みに自分自身も深く同調できるようになりました。でもその子の痛みを私が背負ってあげることはできなくて、同じように自分の痛みも自分の痛みでしかなかったのです。だけど、大丈夫だよと伝えることはできるのではないかと思っていました。今回は痛みの移ろいをテーマに、マクロな視点から壮大な事柄を覗いているような感覚を落とし込み、小さなものにこそ何か大きなものがあるのではないか、ということを心に留めながら制作しました。水滴にCGを合成して制作した映像作品の音源は、トラックメーカーとして活動する妹が作ったもの。映像のテクスチャーに興味があるので、そこを可視化できるよう努めました。モニターをディスプレイした柱の対に展示している写真作品は、人の唇をコピー機でスキャンすることにより作り上げたものです。

こちらがその写真作品。こちらも独特のテクスチャーが感じられます。

今後挑戦したいことはありますか?

Hana:これまで平面的な映像制作がメインだったので、今後は空間を活用したビデオインスタレーションにも挑戦してみたいです。単なる一つのテーマを設けるだけでなく、ストーリー性を持たせて多面的に展開できたらいいなと考えています。

04_田嶋周造/アーティスト・ミュージシャン

今回展示している作品について教えてください。

田嶋:僕は油絵というジャンルにこだわって制作しています。絵画はいわば2次元的な存在で、現実には起こり得ないことも簡単に描くことができる。僕は風景などを眺めていると、次第に全ての輪郭が同じ解像度で過剰なほどはっきりと見えてくるときがあります。実際は人間の脳が視覚情報を都合よく処理しているだけで、本来の景観や自分の周りにあるものは、どれもぼやけずその実態を保っているものなんです。その感覚を落とし込んだのが、木々を描いたこちらの作品。森や林を描く際は、ピントの合っている手前部分を細かく、それ以外はエフェクトがかかったように表現することが多いですが、今回はあえてサボらず全てを緻密に描いてみました。僕が思うシュルレアリスティックの概念を落とし込み、見たことのないような新しい世界を表現しています。

「右の作品にも、現実と幻想をミクスチャーした準シュルレアリスティック的な感性を込めました」と田嶋さん。

今後挑戦したいことはありますか?

田嶋:絵画以外のメディアに興味があるので、アーティストとして活躍の幅を広げていけたらいいなと思います。また、ヒップホップユニットとしての活動にも力を入れていきたいです。

05_菊池虎十/アーティスト

今回展示している作品について教えてください。

菊池:主に、日本に古来から伝わる友禅染という技法を用いた作品づくりをしています。作品の軸となる“布”が僕らの生活に密接な存在であるという観点から、人や植物などの身近な題材にフォーカスしました。なかでも人をモチーフにしたのは、僕が東京出身で、小さい頃から人が大勢行き交う街で過ごしてきたという生い立ちが主な理由。それぞれの顔はよく見えないけど、常に知らない人が自分を囲んでいる状況は、僕にとっては心地よくさえあるのです。顔のない“誰か”を布に落とし込むことで、人の気配のようなものを可視化させようと試みました。この空間ならではの展示にも注目してください。

友禅染を用いたとは思えないような写実的な作品もスタンバイ。

今後挑戦したいことはありますか?

菊池:今回は展示に木製フレームを使用しましたが、布と同じようにフレームにも流動性を持たせることができれば、もっと面白くなるのかなと。次回はフレームの素材にもこだわりたいなと思います。また、布自体を動かないようガッチリ留めた作品が多いので、よりラフな動きが出るようにすれば、見え方も変わってくるかもしれませんね。布にもいろいろありますし、種類を変えてチャレンジしてみたいです。


5名の若きクリエイターによるグループ展「P.O.N.D. mini」は、11月30日(火)まで。興味のある方は、ぜひ心斎橋PARCO 4Fの『SKiiMa Gallery』へ!


Event Information

「P.O.N.D. mini ~パルコで出会う、まだわからない世界~」

会期:〜2021年11月30日(火)
時間:館の営業時間に準ずる
場所:SkiiMa Gallery
大阪市中央区心斎橋筋1-8-3 心斎橋PARCO 4F/SkiiMa SHINSAIBASHI内

HP/https://pond.parco.jp/
Twitter/@pond_official
Instagram/@p.o.n.d.official


Profile

沼田侑香

現代アーティスト

東京藝術大学美術研究科絵画専攻在籍。19年石橋財団奨学金奨学生に選出されウィーン美術アカデミーに留学。VRやAR、3DCGなどのバーチャル空間の拡張による変化をインスタレーションやアイロンビーズで表現。
https://numatayuka.official.ec/

Profile

遠藤文香

フォトグラファー

写真家。東京藝術大学大学院美術学部デザイン科修了。自然における人為の介入をデジタル加工で模し、アニミズム的な自然観をテーマに写真作品を制作。21年7月に初の個展を開催。

Profile

Hana Watanabe

映像作家•ビジュアルアーティスト

99年生まれ。東京を拠点に活動する映像作家・ビジュアルアーティスト。姉妹オーディオユニット<tamanaramen>のメンバー。個人に内在する寂しさや都市の孤独にフォーカスした作品を制作している。

Profile

田嶋周造

アーティスト•ミュージシャン

21年武蔵野美術大学油絵学科卒業。18年CAF賞審査員賞受賞。主に絵画を中心に、インスタレーション、映像も制作。ヒップホップユニット<PICNIC YOU>のラッパー・ビートメイカーとして音楽活動も行う。
https://linkco.re/tb5aEn1e

Profile

菊池虎十

アーティスト

98年生まれ。東京藝術大学美術学部染織専攻在籍。布に伝統的な染色技法である友禅染めを用いて染色し、そのモチーフを変形させることにより、空気を纏い、空間を装飾する作品を制作。

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