遊びと仕事のちょうど真ん中、部活みたいな感覚を大切にしたい。大阪発のDTMユニット・パソコン音楽クラブの実験的思考。

ソフトウェア音源の進化やパソコンのスペック向上につき、近年市場から姿を消しつつあるハードウェアシンセサイザー・音源モジュール。1980年~1990年代に主流だったこちらの機材に魅了され、古い音源モジュールを用いた音楽制作を行っているのが、今回紹介するDTMユニット・パソコン音楽クラブです。ポンと名前だけを聞くと、なんだか学生時代の部活のような印象を受けますが、彼らが作る曲には懐かしさと新しさが同居した独自の音楽性が溢れています。ともに大阪で生まれ育ち、昨年満を持して上京。今では数々のアーティスト作品への参加やリミックス制作を手掛ける注目度の高い存在に。今回は、去る5月10日にリリースした4thアルバム「FINE LINE」のプロモーションのために帰阪していた彼らをキャッチ。結成のきっかけから新作アルバムについて、大阪時代の思い出までいろいろと話を伺いました。ゆる〜く飄々とした空気感をまといつつも、音楽の話になると熱い一面が垣間見える2人。記事を読んだ後は、ぜひ「FINE LINE」を聴いてみて!

古いシンセサイザーの音に魅了されて音楽制作をスタート。最初は部活をやってるようなカジュアルな感覚でした。

(左)柴田碧さん、(右)⻄山真登さん

まずはパソコン音楽クラブを結成したきっかけを伺いたいです。

西山:僕は大阪の堺市、柴田くんは泉大津出身で学生時代に知り合いました。大学は違いましたが、共通の知り合いに一緒にバンドを組もうと誘われて出会いました。

柴田:僕がキーボード、西山さんがギターを担当していました。

「この人と合いそう!」という直観はありましたか?

西山:いや全然(笑)。性格が全く違うので、最初は特に何も思わなかったです。唯一「このままバンドは続けられないな」と感じていたことが共通点で。みんなであれこれ言いながら曲を作るのが向いてないってすぐに気付いちゃったんです。それがバンドの醍醐味の1つなのかもしれないけど、たぶん僕らには向いてなくて。結局半年くらいで解散してしまいました。

柴田:距離がグッと近づいたのは、バンドで音源を作ることになった時です。彼が録音機材を買ってパソコンで編集作業をしていて、僕も興味があったのでいろんな話をするうちに、どんどん仲良くなりました。

西山:そこでDTMをやっていく流れができたんです。出会いはバンドだけど、偶然興味が向いてる方向が同じだったというか。

ちなみにどんなバンドだったんですか?

西山:女の子のボーカルがいる、いきものがかりさんみたいなポップな雰囲気のバンドです。スタジオミュージシャンの真似事みたいなことをしていました。

そこからDTMとはかなりの方向転換ですね。

西山:バンドは僕らが主体的にやってるわけじゃなかったので。2人で話していく中で、好きなものが似ていることに気付いたんです。そんな時に2人で日本橋のソフマップ(現在は閉店)に行って、5,000円くらいで買った古いシンセサイザーを使って音楽制作を始めました。

柴田:鍵盤がない古いバージョンのものを買って、それぞれ曲を作ってSoundCloudにアップロードして聴き合おうよと。登録するのにアカウント名が必要で、パソコンで曲を作っていたから「パソコン音楽クラブ」になって。最初は部活みたいな感覚でやっていたので、まさかプロになるなんて思いもよりませんでした。

こういう音楽が作りたい、という強い思いから始まったわけじゃないんですね。

西山:そうですね。古いシンセサイザーの音に魅了されました。1980年代~90年代のシンセサイザーってボタンを押していくといろんな音が選べるんです。ピアノやギターの音もあるし、聞いたことがないような音もたくさん入っていて、その音を使ってみたいというのが原点ですね。そこからその機材の音について調べていくと、ケン・イシイさんやYMOさんが使っていたことを知って。90年代の電子音楽を作っている大好きな先輩の音だったので、その方たちと同じ音を使って音楽を作れることにも惹かれました。

最初曲作った時はどんな感じでしたか?

西山:曲って言っていいのかわからない、1分くらいのデモ状態のものを聴かせ合っていました。この機械はこんな音が出ておもしろかったよみたいなことを言い合いつつ。

柴田:今でもその感じは好きですけどね。

西山:当時は機材のボタンを押して「この音カッコいい!」みたいな好奇心でいっぱいで。ある程度ギターやピアノも弾けたので、思いつくままにいろんな音を重ねていって、飽きたら完成って感じでした。楽しくていろいろ作っていると、ある程度いい感じの曲ができたみたいで、「ライブやリミックスをやってみませんか」と聴いてくれている人から連絡をもらって。人に頼まれたからにはちゃんと作らなきゃと思って続けるうちに、今みたいな感じになりました。

オファーをもらい始めたのはスタートしてどれくらいのことですか?

柴田:約半年ほどです。大体1年くらいでリミックスや音源作りもお願いされるようになりましたね。

西山:意外と早かったです。僕らはライブハウスでの下積み期間がなくて、オンラインで聴いてくれた人が各地から呼んでくれて、そこからどんどん世界が広がっていきました。今僕らが軸にしているダンスミュージックに出会ったのも、東京のクラブで参加したライブがきっかけです。

ちなみに2人の音楽のルーツは?

柴田:YMOや電気グルーヴはずっと好きです。中高生の頃『TSUTAYA』にクラブミュージックのコーナーがあって、洒落てるなぁと思いながら聴いてましたけど。

西山:クラブミュージックはリスニング音楽として捉えていたよね。

柴田:そうですね。自分とは縁遠いものと思っていたから。

西山:今はそのエッセンスを加味しつつ曲を作っているけど、最初の頃クラブに呼ばれた時は、大阪のオタク2人がえらいところに連れて来られてしまったものだと思いました。1発目の東京は秋葉原だったので友達になれそうな人がたくさんいたんですが、その後が渋谷の『clubasia(クラブエイジア)』っていうハコで、イカつい人ばかりに見えてほんと怖かったです。

柴田:それが僕はギリギリ学生の22歳、西山さんは23歳くらいの頃で。ステージにいる演者を客席で観るっていうライブしか知らなかったので、曲を聴かずにそれぞれのペースで過ごしているのがとっても新鮮でした。

西山:音楽を真正面から聴いてない空間があるのが逆にいいなって。もともと音楽って強制的に聴かせるものじゃないと思っていて。もちろんアーティストのライブを熱心に観ることもあるけど、音楽が空間や雰囲気に溶け込むような時間っていいなって思ったんです。クラブに呼ばれる機会が増えて、DJタイムに音楽を聴きながら人と喋ったりお酒を飲んだりするのが心地いいと感じるようになりました。

4thアルバム「FINE LINE」のテーマは“宇宙人のいる生活”。他人の意識を組み込むことで、僕らの想像を超えたワクワクする作品に仕上がりました。
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Profile

パソコン音楽クラブ

2015年結成、大阪出身の柴田碧(左)と⻄山真登(右)からなるDTMユニット。往年のハードウェアシンセサイザー・音源モジュールを用いた音楽制作をしており、他のアーティスト作品への参加やリミックス制作も多数手掛ける。アニメ「ポケットモンスター」のエンディングテーマ制作なども担当。

Website: https://www.pasoconongaku.club
Youtube: https://www.youtube.com/@pasoconongaku
Soundcloud: https://soundcloud.com/0jyvjnv1dely

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