『混ぜるな危険』 が仕掛ける<香る晩餐会>は、和食の禁忌に挑む秘密のたくらみ。
テーマをどう読み解いて、どういう形にしていくのか、そこがすごく大切(土居)
什器がさまざまな要素の関係性をつなぐ、呼応するようなものを意識しました(鈴木)
土居さんは企業にお勤めで、鈴木さんは大工さんなんですね。お2人は什器の製作を担当されたそうですが、どんなものを作られたんですか?
鈴木:料理ひと品ごとに、素材も形状も異なる、お皿兼お盆のような什器を作りました。香る包丁だったり香る料理だったりさまざまある中で、什器が前に出るよりは、それぞれの関係性をつなぐ、呼応するようなものを意識しました。
今回作られたもので、いちばん大切にされた部分はどんなところですか?
土居:お盆だけが目立ってしまうとイベントとしてのバランスが崩れてしまうので、料理という主役を引き立てつつ、京都という街や、『MOGANA』 ホテルという空間をつないでいける役割にしたいなと考えました。
<香る晩餐会>の什器は、お仕事でのものづくりとはまた違いますか?
鈴木:持っている技術や技能とかをツールとして使うっていうのは仕事と似てますけど、香りを扱うので、ふだん以上にプロセスはしっかり踏んでいくという感じでした。
目に見えないうえに、まだ世にないものを具体的な形にしていく作業は、すごく大変なんじゃないかと思うのですが…。
土居:テーマをどう読み解いて、どういう形にしていくのか、そこはすごく大切にしました。あとは彼(鈴木)が持っている技術と手に入る素材で、それをどこまで実現できるのかっていう調整がいちばん難しかったですね。
鈴木:楽しかったですけどね、予期せぬ発見がたくさんあって。自分の生み出すものを、チームのみんなが広げてくれるのがすごく楽しかったですね。
それぞれが、テーマを解釈してどう表現するかを持ち寄る感じですか?
鈴木:お互いの進捗状況を確認しながら、料理や什器を同時並行で進めていきました。待ちの部分もありましたけど、そこは1人で力技で持って行くんじゃなくて、しっかり共有しながら進めるのが大事だと思ってました。
テーマがあるとは言え、香りという形のないものをお互いが共有しながらアウトプットしていくってすごい作業ですよね。
鈴木:そこの難しさはありますよね。でも、それぞれ料理人とか大工とかの技術があって、その技術で香りを表現することによって、お互いがハッとさせられることもあって。料理の世界や技術を知ることができて、それは本業にも生かせるかなと思いましたね。貿易じゃないけど、それぞれが持っているものを輸出入するみたいな。
土居:そこは、チームでやってる良さでもありましたね。
ちなみにお2人は、何がきっかけで『混ぜるな危険』に参加されたんですか?
土居:もともと上村と僕らは大学のゼミが一緒で、卒業してからもずっと付き合いがあって。最初の<読香文庫>から参加してますね。
上村さんから『混ぜるな危険』の話を聞いたとき、驚かなかったですか?
鈴木:僕はそんなに驚かなかったですね。彼、大学時代からすごい香りが好きだったんで。嗅覚や香りに可能性を感じるって言う話も、僕も共感できるところがありました。
土居:僕も、むしろそうやんなって感じが強くて。もともと僕らは大学で建築を勉強してきたけど、建築っていうよりプロダクトとかデザインとかに興味があったみたいな。そういう意味ではしっくりくる感じがありましたね。
建築畑出身の皆さんが香りのプロジェクトって、すごく意外な気がするんですけど…。
土居:セクションに分かれているので、香りに関しては上村と専門の人がいて、僕らはそれを解釈しつつ、自分たちの得意なことを生かしてやってるので。香りそのものについては、僕はまだそれほど詳しくはないですね。
鈴木:自分の得意なもの、持ってる技術に香りを混ぜて提案することで新しいことが生まれるので、根底は同じかなっていう感じはしますね。
(撮影協力)
MOGANA
「装いを愉しむ」をコンセプトに掲げ、2018年にオープンした全23室のホテル
〒604-8276 京都市中京区小川通御池下ル壺屋町450
アクセス:
京都市営地下鉄「二条城前駅」より徒歩4分
京都市営地下鉄「烏丸御池駅」より徒歩約7分
JR「京都駅」よりお車にて約15分
TEL:075-606-5281
https://yadomogana.com
混ぜるな危険
2019年に活動を開始。“「香り」で、世界の解像度はあがる”をコンセプトに掲げ、「香り」と接続してこなかった「何か」を繋げていくプロジェクトチーム。京都の『恵文社一乗寺店』にて開催された “匂いで選ぶ”ブックフェア<読香文庫(どっこうぶんこ)>をはじめ、香りとカクテルを掛け合わせた<香る夜会>などのイベントを実施。「香り」を媒体にして、これまで見えなかった価値や世界を、提案している。