カツカレーで世界に羽ばたきたい!西天満『ザ・モチベーションショップ』のメイド イン アリサさんが語るカツカレーへの愛。
憔悴していた自分にパワーを与えてくれたカツカレーは、かけがえのない存在。朝・昼・夜とハシゴできるくらい大好きです。
アリサさんがカツカレーにハマったのはどうしてなんですか?
カレーもそうですが、昔からカツカレーが好きだったわけではないんです。カツカレーって、サービスエリアの食堂とかにも大体あるけど選ばないし、ましてや好んで食べに行くようなこともありませんでした。ちょっと暗い話になるんですが、昨年父親が亡くなって。本当に急なことだったので、私もしばらく意識が朦朧としていて、ごはんを食べようとしても喉を通らないような状況でした。コロナ禍だったから亡くなった後もしばらく会えなくて、その期間の記憶は今も曖昧で、ほとんど何も思い出せないんです。
5日ほど経ってようやくお葬式ができたんですが、火葬中って2時間くらい時間が空いちゃうじゃないですか。みんなでごはんを食べようという話になったんですけど、近所には『かつや』というチェーンのトンカツ屋しかなくて。正直トンカツを食べるような気分ではなかったですが、仕方ないなと『かつや』に入って、まだ食べやすそうなカツカレーを注文しました。するとこれまで喉を通らなかったごはんが、不思議とスルスル入ってきて。ようやく顔が見られたことへの安心感や、きちんと「さよなら」が言えてホッとした気持ちもあると思うんですが、カツカレーの美味しさが身体に染み渡ってすごく感動しました。美味しい食べ物はたくさんあるけど、心から感動することってあんまりないと思うんです。その瞬間からカツカレーに目覚めて、色んなお店を食べ歩くようになりました。
そんな出来事があったんですね……。お話ししていただいてありがとうございます。「カツカレー図鑑」を作ったきっかけはありますか?
食べ歩きと並行して「カツカレー図鑑」というInstagramを作って、カツカレーの特徴やそれぞれのお店の記録を始めたんです。『ゆとりちゃん』の換気扇さんがデザインしてくれたロゴをアイコンにすると、なんだかそれっぽくなって。実は「カツカレー図鑑」の冊子も、彼が「こんなの作らへん?」って提案してくれたんですよ。ちょうど緊急事態宣言が出ていて、『ゆとりちゃん』を開けられない時期が続いて、色々おもしろいことができないか考えて作ってくれたんです。それぞれのページに二次元コードが付いていて、読み込むとGoogleの地図に飛ぶ仕組みも換気扇さんが考えてくれました。私は食べ歩いてレポを書いてるだけだけど、そのゆるさがいい感じにウケていて。今は第3集まで出ているんですが、そこからはスポンサーも付いていて、これまでのものとは分厚さが全然違うんです。
どんな方がスポンサーになっているんですか?
お店だけじゃなく、個人でスポンサーができるようにしています。ラーメン屋さんが考えたクロスワードや「私のキンケシコレクションを見てください!」みたいな広告もあって。格安の料金でやってることもあり、今スポンサーの掲載待ちが第6集まで埋まってるんです。
第6集まで!めちゃくちゃ人気ですね(笑)
いただいた資金はすべて印刷代に回しています。A4の紙に印刷したものを裁断してホッチキスで留めて、計3000部を仕事の合間に一人で作っているんです。一つひとつ裁断が雑だったりホッチキスがズレていたりするんですが、それも手作りならでの味わいかなと。裁断機や中綴じのホッチキスは、この活動を応援してくれている方に支援でいただきました。「カツカレー図鑑」のHPにamazonのほしい物リストを載せていて、応援してくれる人が自由にサポートできるようにしているんです。スポンサーの皆さんはもちろん、周りの人と一緒に協力して作っているような感覚ですね。
私がよく行くお店にも、「カツカレー図鑑」が置いてありました。設置店はどれくらいあるんでしょうか?
今は50店舗くらいかな。押し付けになるのが嫌なので、こちらからは絶対「置いてください」と言わないようにしていて。フリーペーパーやフライヤーって、興味がないと邪魔になったり捨てちゃったりすると思うんです。自分から置いてくださる方だと、すごい愛を持って配ってくれるのが嬉しくて。東京の本屋さんにも置いてくださるところがあって、そこから結構クチコミで広がってるみたい。ちなみに大阪市内に来るのが難しい遠方の方は、「カツカレー図鑑」のWEBショップで50円で販売もしてますよ!
第4集は近々出るのでしょうか?
ちょうど今作っているところです。何ヶ月に一度というペースを決めてしまうと、逆にやりたくなくなる性格なので。今は自分のペースで楽しみながら作っています。
カツカレーのストックはまだまだあるんですか?
大体一冊に5店舗ほど載せていて、70店舗くらいは余裕であリますよ。今は古いものから順にすべてのお店を載せているけど、次回からはもっと厳選しようと思っています。
そんなにあるんですね(笑)。いつもどれくらいのペースでカツカレー巡りを?
時間さえあれば、朝・昼・夜とハシゴしています。駅ナカのお店って意外と早朝から開いていますし、中央卸売市場には朝4時からやってるカツカレーのお店があるんですよ!
カツカレーをハシゴ……、それはかなり気合いが必要かも(笑)。いろいろ食べ歩いていると思いますが、こういうカツカレーが好み!みたいなのはありますか?
パーフェクトなカツカレーってなかなか難しいんですよね。普通のカレーと違って、カツも最強、米の硬さも最強、ルーも最強っていうトライアングルができないと完璧じゃないんです。
気にしなきゃいけない要素が多いんですね。
そうなんです。だけど、個人的にはトンカツ屋さんのカツカレーはあんまりハズレがないと思っていて。やっぱりカツが美味しいし、ちょっとレアなカツが一つだけこちら側に向いてる……みたいな、カツを引き立たせる演出も最高。お米にこだわってる店も多いから、そこもいいんです。これぞというひと皿に出合えた時は、いつも心の中でスタンディングオベーションをしています。
カツカレーって欧風のルーに合わせるイメージがありますが、スパイスカレーに合わせているお店もありますよね。どちらもお好きなんですか?
あくまで個人の見解ですが、カツカレーに用いるのは少しとろみがあってソースに近い欧風のルーがベター。フルーツや玉ネギの旨味と甘み、生姜の風味をギュッと凝縮したような深みのある味わいが好みです。スパイスカレーとカツって合わないことはないけど、私はその魅力がまだわからないんです。スプーンにカツを乗せて、ソースをつけるような感覚でルーと一緒に食べるのがカツカレーだと考えていて。スパイスカレーってシャバシャバのものも多いから、なんか違うような気がしちゃうんです。だけど大阪・西大橋にある『サカソング』のカツカレーは別格。スパイスカレーなんだけど、カツにルーがめちゃくちゃマッチしていて。しっかりバランスを考えて作られてるんだろうなってわかるんです。
単純にカレーにカツが乗っていればオールオッケー、というわけではないんですね。これまで何軒くらい食べ歩いているのでしょうか?
100軒は余裕で超えてると思います。大阪はもちろん、旅行先でも4軒くらいは必ず回ります。本当はその土地の美味しいものを食べるのがいいんでしょうけど、地元で愛されているカツカレーのお店をピックアップして行くのも楽しいんです。いずれは「カツカレー図鑑」の島根編や北海道編を作りたいので、そのためにはストックも必要ですし。カツカレーって体調的にいつ食べられへんようになるかもわからないから、食べられる時に食べとこうっていうのはあります。……カツカレーへの愛を語りすぎてすみません(笑)
カツカレーへの愛、ビシビシ伝わってきます(笑)。ちなみに『ザ・モチベーションショップ』のカレーはどんなカレーなんでしょうか?
最初はキーマのみでしたが飽きてしまって、限定で違うカレーも始めました。今のメニューは、キーマカレー、トマトカレー、週替わりカレー、エゾシカキーマカレーです。一人で回しているので、メニューが増えたことで大変さが増しました(笑)。3月からは火曜をカツカレーの日にしていて、最近はそこを目がけて来てくださる方も多いですね。
お客さんの気持ちめっちゃわかります。カツカレー好きが作っているカツカレーって食べてみたいですもん。アリサさんのカツカレーの特徴を教えてほしいです。
具材が入っていないシンプルなルーですね。塊肉は入れずにお肉から出る出汁を使っていて、デミグラスソースのような口当たりが特徴です。いつも来てくれるおっちゃんには、「昔、喫茶店で食べてたような懐かしい味やね」と言われます。コーヒーを入れることで苦味とコクが加わって、奥行きのある味になるんです。野菜やフルーツの甘みもしっかり感じられて、私的には休日も自分のカレーを食べたいくらい美味しいです。カツは、三元豚のロースカツと鹿児島のさつま地鶏のチキンカツから選べるようにしています。
聞いてるだけでお腹が空いてきました。ぜひ食べてみたいです。
カツカレー営業の日を作ってから、その日だけ食べにくる人もめちゃくちゃいるんです。それが私の自信にもなっていて。スパイスカレーはちょっとした変化で味がブレることも多いけど、カツカレーは結構安定しています。いっそのことカツカレー屋にしちゃおうかなと思ってるくらい(笑)。いつ食べても「うんまっ!」ってなりますね。
メイド イン アリサ
島根生まれ、大阪育ち。2020年に大阪・西天満『ゆとりちゃん』を間借りしてカレーと癖靴下のお店『ザ・モチベーションショップ』をオープン。カツカレーの食べ歩きが趣味で、カツカレー専門のフリーペーパー「カツカレー図鑑」を不定期発行。最近は「ゴールデンカムイ」にどっぷりハマっており、よく見ると店内にもマンガやグッズがちらほら。
ザ・モチベーションショップ
大阪市北区西天満4-8-1
TEL/なし
営業時間/11:00~16:30(L.O. 16:00)
定休日/月曜・日曜