中華はコミュニケーションツールの一つ。お揃いのユニフォームを着て町中華を食べ歩くクルー「平日中華/休日中華」って一体ナニモノ?
突然ですが、みなさん中華はお好きですか? 餃子、青椒肉絲、麻婆豆腐、天津飯……、思い浮かべるだけでヨダレが出てきそうですよね。ちょっとグルメな人なら、「麻婆豆腐はあの店が美味しくて、餃子ならあそこかな」なんてぼんやり考えちゃうのでは? 今回取材したのは、大阪を拠点に町中華を食べ歩くクルー「平日中華/休日中華」です。発起人の櫛田尚之さんが代表を務めるこちらは、2018年にスタートして以来、お揃いのユニフォームを着用してさまざまな中華料理店に足を運ぶという活動をしています。お邪魔した店には、愛らしいパンダが描かれたステッカーを貼ってもらうのがお決まりだとか。彼らのユニフォームでもあるTシャツやパンダステッカーは、オリジナルグッズとして販売も行っているそうで、これがなかなか可愛いんです。なんだか面白そうな活動ですが、そもそも「平日中華/休日中華」って一体ナニモノで、どんな経緯でスタートしたの? 今回はそんな疑問のアレコレを、代表の櫛田さんにぶつけてきました。自粛が明けて久しぶりに開催されたという「平日中華/休日中華」の集まりにもお邪魔してきたので、その模様も要チェックです!
活動のきっかけは青椒肉絲! 自分の足跡を残したいという思いから、食べ歩いたお店にステッカーを貼り始めました。
まずは「平日中華/休日中華」がどんな活動をされているか教えてください。
平日・休日に関わらずお揃いのユニフォームを着て中華を食べ歩き、それを発信する活動をしています。僕が大阪在住なので、活動の拠点は主に大阪。最近はコロナの影響で集まることができず、個人的にテイクアウトした中華をSNSにアップしながら活動を続けています。
私が櫛田さんに初めてお会いしたのも、大阪市内の中華料理店かエスニック系の立ち飲み店だったような気がします。この活動をスタートされたきっかけはありますか?
2018年くらいのことなんですが、友人とご飯に行って、一番好きな料理を尋ねられたとき、ふと「青椒肉絲」と答えたんです。そこで青椒肉絲の美味しい店を聞かれたんですが、きちんと答えることができなくて。というのも、その頃の僕は『バーミヤン』や『大阪王将』といった、いわゆるチェーン店しか知らなかったんです。それで友人に、「もっと他のお店にも行かなアカンのちゃう?」と言われてしまって、「いろいろ食べ歩いてみよう」と考えたのがきっかけ。初めは大好きな青椒肉絲を中心に、一人で食べ歩きをしていました。だけどいろんなお店に足を運ぶうち、ひと口に中華料理店と言えど、それぞれ味付けも看板メニューも全然違うことがわかってきて。それなら青椒肉絲という一つのメニューにこだわらず、美味しい中華を食べる活動にシフトしようということになって今に至ります。
最初は櫛田さん一人でスタートされたんですね。徐々にメンバーが増えていったんですか?
一人で中華を食べ歩く活動を続けるなかで、訪れたお店をSNSにアップするようになったんです。以前仲良くしていた先輩と久しぶりにお会いしたとき、中華の食べ歩きをするときに着られるユニフォームを作りたいと相談し、「面白い!楽しそう!」と言ってもらってグッズを作り始めました。ユニフォームが完成したことがきっかけで、先輩や友人と一緒に中華を食べ歩くようになって、そこから徐々にメンバーが増えていったんです。僕が印刷系の仕事をしているので、グッズはわりとすんなり製作できました。ちなみにオリジナルイラストをプリントしたTシャツやステッカーは、オンラインショップで販売もしていて。僕が今日着ているTシャツもそうです。
以前街で見かけて可愛いと思ってました! パンダのイラストがプリントされたステッカーは、お店に貼ってあるのをよく見かけます。訪れた店に貼らせてもらっているんですか?
自分が食べ歩いた足跡を残したくて、一人で活動していたときから貼らせていただいてます。「ごぶごぶ」や「魔法のレストラン」といったグルメ番組を観ていると、取材したお店にステッカーを貼っていくじゃないですか。ちょっとおこがましいですが、あれに少し憧れていたんです。だけど町中華の店主って、強面な人が多い印象がありません? 喋ってみたら人の良いおじちゃんだったということがほとんどなんですが、初見だとやはり威圧感があるんですよね。最初に貼らせてもらったときは、恐る恐る「……ほんまにすみません。このステッカー、貼ってもいいですか?」とめちゃくちゃ勇気を出して聞きました。そのときは一人でしたし、断られてしまうかもと緊張しながらでしたが、意外にも快く貼らせてくださいました。それで、こんな僕の活動を受け入れてくれるお店もあるんだと思ったんです。平日に食べに行ったお店には「平日中華」、休日に食べに行ったお店には「休日中華」のステッカーを、今も変わらず貼らせてもらっていて。こういう親しみやすいツールがあれば、普段なかなか行く機会のない人にも、町中華を身近に感じてもらえるんじゃないのかなと。街に根付いてきた中華料理店が、これから先も愛され続けてほしいという思いもありますね。
「平日中華/休日中華」というネーミングもキャッチーですよね。
平日に行ったときは“#平日中華”、休日は“#休日中華”というハッシュタグを付けてSNSにアップしていたので、ネーミングのルーツはそこですね。よく酒場に行くと、「中華屋さんの人ですよね?」と言われるんですが、中華が好きで食べ歩いているだけなんです(笑)。
私もステッカーを持っているんですが、あまりにも可愛いのでなかなか貼る勇気が出ないです。デザインはどなたに依頼されたんですか?
僕がデザインしています。昔から絵を描くのは好きで、中華=パンダのインスピレーションと、貼らせていただいても嫌じゃないデザインということで、これに辿り着きました。変なステッカーやったらごめんやけど、可愛いパンダやったら仕方ないかっていうおっちゃんもいてますね(笑)。Tシャツのデザインも自分でやっています。
よく食べに行くメンバーには、どんな方がおられるんですか?
飲食関係、アパレル、美容師、バリスタ、デザイナー……、本当に多岐に渡ります。基本は6人から8人くらいで、最初にお話した先輩がベースですね。たまに「メンバーって何人くらいいるの?」と聞かれるんですが、実際は特に決まっていなくて。飲みに行ったとき、たまたま会った人と中華の話をして、「今度一緒に行きましょう」という流れになることも多いですし。これまでで一番印象的だったのは、道頓堀の『中華茶房8』という店で開催した2019年の忘年会かな。SNS上で「『平日中華/休日中華』で忘年会をします」とアナウンスしたところ、総勢40人以上が集まって。もちろんお馴染みのメンバーもいましたが、初対面の方からから酒場で一度だけ会ったことのある人まで、さまざまな人が参加してくれました。その日はいろんな人に挨拶したりゲーム大会したり、とても楽しかったのでコロナが落ち着いたらもう一度やりたいですし、今後も続けていけたらと思っています。ここ一年は人と食卓を囲むこと自体が規制されていたので、この活動も自粛せざるを得なくなりました。少し緩和されたタイミングで、一人でランチに行ったりテイクアウトをしたりはたまにありましたが、早くみんなでワイワイできるようになってほしいですね。
料理はもちろん情報をシェアできるのも町中華の醍醐味。中華はいろんな人と仲良くなれるコミュニケーションツールの一つ。
この活動をしていて良かったと思うことや、町中華の魅力を教えてください。
一人でも食べに行けるし、大人数で食べに行くともっと楽しいところかな。中華料理ってひと皿ひと皿が大きいから、一人で行くとなかなかいろんなものが食べられないんです。青椒肉絲、麻婆豆腐、チャーハン、ラーメン……、食べたいものはたくさんあるけど、あれもこれも注文するのは胃袋的にも難しいですよね。好きなものをみんなで頼んで、互いにシェアできるというのは魅力の一つだと思います。ところで、僕は先ほど青椒肉絲が好物だという話をしたけど、ライターさんの好きな中華やおすすめの店はありますか?
神戸の元町にある『中国郷菜館 大陸風』の麻婆豆腐が好きです。辛味とコクのバランスが絶妙で、花椒のビリビリ痺れる感じがめちゃくちゃ好みなんです。
話を聞いているだけで美味しそう。僕も行ってみたくなりました! ……という感じで、“中華”という共通の話題を通して話が膨らんでいくのも楽しくて、みんなで集まったときも中華の話ばかりしています。「この店美味しいで」とか「ここ行ったことある?」とか、情報を共有できるのがいいですよね。「あそこ入りにくそうやけど、意外と雰囲気いいねん」という訪れた人ならではの意見も聞けますし、「あの店の店主さん面白いで」とかエピソードトークも交えて紹介できるんです。
それなら面識のない人同士も仲良くなれそうですね!
コロナ禍になる前は、北浜・肥後橋エリアでよく飲み歩いているアリヤマ・グランデさんと一緒に、「アリヤマ中華会」を企画していました。ここでは普段関わることのない業種の人たちと食の話をしたり繋がったりすることができて、すごくいい時間を過ごしています。食の話って初対面でもすごく盛り上がるんですよね。僕、実はすごく人見知りなんです。初対面の人と喋るのは苦手だけど、みんなで中華を食べているとそれぞれの温かい人柄が見えてきて、緊張もほぐれて楽しく過ごせるんです。一種のコミュニケーションツールになり得る、これも中華の魅力かもしれないですね。
町中華は、店主や街の人の人生が詰め込まれた特別な場所。今後は僕らのZINEを作りたい。
お次は櫛田さんと一緒に中華料理店へ移動して、久しぶりに開催された「平日中華/休日中華」の集まりに潜入! ここからは、その模様をお届けします。
みなさん今日はよろしくお願いします!
一同:よろしくお願いします!
早速ですがマナさんと池ちゃんさんは、どういう経緯でこの活動に参加するようになったんですか?
マナ:くっしー(櫛田さん)は前の職場のお客さんで、知り合って7年ほど経つのですが、当時よく飲みに行っていたんです。何年か前に久々に飲んだとき、「実は中華がすごく好きで、食べ歩きユニフォームを作ろうと思うんです」という相談を受けて。何それ!楽しそう!って思って、気付いたら私も中華Tシャツを着て、一緒に中華を食べ歩くようになっていました。
櫛田:マナさんは先ほどお話した、グッズ作りの相談に乗ってもらった先輩です。彼女がいてくれたおかげで、いろんな人が集まってくれるようになりました。この活動の初期メンバーですね。
ちなみにマナさんは、町中華のどういうところがお好きなんですか?
マナ:単純だけど、お店の雰囲気が好き。女性一人だとちょっと入りづらい味のあるお店も、町中華特有の温かみのようなものが感じられて、その雰囲気に惹かれるんです。年季の入った机や壁、使い込まれた食器は、どれもその店が町で愛されてきた証なのかなって。だからそれぞれのお店の内装や食器、箸袋のデザインを見るのも好きですね。あとは断然、どの料理もビールに合うところ。
櫛田:大体どんな土地にも中華料理店はありますし、その店を通して街の移り変わりも見えてくる。店主さんだけじゃなく、きっとその街に住む人の人生が詰まった場所なんですよね。
池ちゃんさんは、どういう流れで参加されるようになったんですか?
池ちゃん:僕は初期メンバーではないのですが、北浜で飲んでいるとき、たまたま平日中華/休日中華クルーに遭遇して。みんなが着ていたユニフォームに興味を持って、「その服は何ですか?」と聞いてみたんです。そしたらくっしーさんが「良かったら今度集まりにおいでよ」と言ってくれて、気付けば主要メンバーになっていました(笑)。そうやって参加するにつれて、美味しい中華はもちろんですが、円卓って最高のコミュニケーションの場だと思うようになったんです。
コミュニケーションの場、それはどういうところがですか?
池ちゃん:向こうにある料理が食べたいなぁっていうときに、「ちょっと失礼します」ってひと声かけて円卓を回すでしょ。自然とコミュニケーションが取れるんです。しかも大皿で提供されることが多いから、料理の美味しさをみんなで分かち合うことができる。それに机を丸く囲むから、誰も仲間外れにならずに話ができますし。人との仲を深めたいときは、中華を選ぶといいのかもしれないですね。
確かに、そう考えると中華料理をみんなで囲むこの円卓は、絶好のコミュニケーションの場ですね。最後に、今後挑戦していきたいことはありますか?
櫛田:もう少しアーカイヴが溜まったら、「平日中華/休日中華」のZINEを作りたいなと。簡単なマップも付けて実用的なものにできたらいいですね。個人的なことですが、最近子供が生まれたので、家族で一緒に行ける“ファミリー中華”も紹介したいと思っています。ステッカー付きにするのもいいし、誰かと店を巡る企画やファッションシューティングをしても面白そう。やりたいことはたくさんあるので、それを少しずつ実現できたらいいなと。大人数で気兼ねなく中華を食べに行ける日が、とにかく早く来ることを願います!
平日中華/休日中華
2018年スタート、発起人の櫛田尚之さんが代表を務める大阪を拠点とした中華クルー。お揃いのユニフォームを着用し、中華料理店を食べ歩く活動をしており、これまで巡ったお店の総数は約100軒。“中華”という親しみやすいツールを通してさまざまな人と仲良くなれる中華飲み会は、初めましての人もすんなり馴染める心地よさ。現在はコロナの影響で自粛中だが、落ち着き次第再開予定。グッズも販売中なので、興味のある人は下記URLをチェック!