ここ、どこ、“ヨツヨコ”!?コロナな時代だけど、街の酒場の店主たちは元気だし、次の仕掛けを楽しんでるんです。【後編】
大阪の四つ橋筋を挟んで肥後橋界隈から西横堀界隈を“ヨツヨコ”と名付け、街や酒飲みラバーズたちに新たなグルーヴを生み出そうとしている酒場の店主たち。前編では街の印象やコロナクライシスによる現状を話してもらいましたが、後編では次なる仕掛けというか、コロナへの反撃というか、彼らの「やったろかい!」精神が爆裂したトークをお届けします。座談会を実施したのは緊急事態宣言真っ只中の頃だけど、大阪もなんとか解除されました。さぁ、“ヨツヨコ”店主たちのおもしろいたくらみが、ぼちぼち顔を出してくるんじゃないですかね。酒飲みラバーズのみんな、楽しく乾杯できる日がすぐそこまで来てるから、ワクワクしながらウズウズしててくださいよ。
コロナが完全に終息するのを待ってたら、歳とるだけ。だったら、やりたいことをやるしかないなと。
前編に続いて、メンバーは『ヒロカワテーラー』のケンケンさん、『オオサカチャオメン』の上甲さん、『炭焼TOKI』の土岐さん、『バカイゥン』の村上さん、『カクウチちょこっと』の森さん、『パーラー淀屋橋』のヨシさん、『はらいそスパークル』のジョルさん!では、次なる仕掛けのお話のスタートです。
前編では街の印象や現状について話していただきましたが、後編ではみなさんがこれから何をするかって部分を聞けたらなと。ちなみに、上甲さんや森さんは新店をオープンすると聞きましたが。
上甲:『チャオメン』の2店舗目を出すことはコロナ前から考えてたんですけど、こんな時期やからこそ攻めよかなと思って。次の目標があることでスタッフのモチベーション維持にも繋がるので、やっぱり今だなと。
ケンケン:場所は?
上甲:お初天神通りの裏参道ですね。
森:それ、めちゃめちゃ流行る場所ですやん!
上甲:でも2階やからね。人通りはあるけど、いろいろ策を練らないとアカン。
そのエリアに訪れるお客さんは多いですが、かなりの激戦区ですもんね。ちなみに森さんは?
森:僕も考え方としては上甲さんと同じで、今やからこそ攻めるべきかなと。正直、コロナのおかげでこの1年間何もしてないし、いつ終息するかも分からんし。ずっと待ってるだけやったら、歳とるだけですから。だったら、やりたいことをやるしかないなと。戦略を練りすぎてもスピード感が落ちてしまう状況なんで、攻めれる時に攻めとかないと後悔しそうでね。
コロナのことを考えすぎると、やはりみんな躊躇しますもんね。だからこそ、攻め時だと。納得です。ちなみにみなさん、コロナで時短営業になり、時間的な余裕が少しは生まれたと思います。何かを始めてみたり、普段しないことをしたりしましたか?
森:協力金の申請ですね(笑)
一同:爆笑!
ジョル:僕らにはなかなか縁のなかった、オフィスワーク的なやつですね。
森:普段はパソコン作業とか全然しないから、めちゃくちゃ大変でしたわ。後は、田舎の物件を見に行ったりもしましたね。
田舎の物件ですか?リモートワークが浸透しつつあるので、移住する人も増えてると聞きます。
森:飲食店の経営者としては難しいけど、リモートワークできる人が移住してそこに人が集まると、小さいけどマーケットは生まれますからね。月商は少ないけど、固定費は都心部より圧倒的に抑えられるし。
ジョル:宿泊も兼ねるといいっすね。飲んで食べて、そこで寝れる。いや、サイコーですやん。
森:そやねん。場所や体験としての価値を考えると、やる意味もやる価値もあるなって。
森さん、新店オープンの次は、その形態でお願いします!他のみなさんはどうです?
ジョル:何かを始めたってわけじゃないですけど、以前にも増して人の繋がりの大切さを考えるようになりましたね。それこそケンケンさんや森さんの店みたいに、コミュニティを持ってる店はやっぱり強いなと。コロナの状況で時短営業になっても、お客さんたちが店を応援するために来てくれてはるし、そういうシーンを見てるとホントうらやましいなと。
確かに。常連さん同士の繋がりも濃いですからね。
ジョル:だから、僕自身もさらにフレンドリーになったし、店同士の繋がりももっと強くしていきたいと思ってるんです。店が終わって飲みに行くだけじゃなくて、みんなで一緒にできることをいろいろ考えてましたね。
ケンケン:あれ、ジョルがしゃべってるんよな?
ジョル:あ、すいません。真面目な自分が出ちゃいました(笑)
いろいろ試行錯誤してきたけど、やっぱり夜の酒場であることが自分らの原点。コロナのおかげで、その原点の大切さを見つめ直せた。
ヨシさんの店では、昨年の最初の緊急事態宣言時にオンラインショップを開設したりと、いろいろ策を打ち出していましたが、現在はどうですか?
ヨシ:最初に緊急事態宣言が出た時は、みんなかなり焦ったと思う。でも正直、店側もお客さんもこの状況が当たり前になりつつあるし、来年もまた同じ状況がやって来るかもしれない。オンラインショップを開設したり、GO TO EATに参加したりしたけど、逆に今、何もしなかったらどうなるかなーと思ってて。
あえて、今は何もしないという選択を?
ヨシ:そう、対策を打つというよりかは、お客さんに対してできることをしたくてね。今まで忙しい時はお客さんと会話できないこともあったから、そのお客さんがどんな人で、どうしてうちの店を選んでくれたのかとか、コミュニケーションを深めることに時間を注ぎたいんですよ。だって、わざわざ遠方から来てくれた人かもしれないし、実はどこかで繋がりのある人かもしれないし、やっぱり飲食店としての接客をより重視するようになったかな。
こんな時期でも来てくれるお客さんだからこそ、その姿勢は大切にしたいですよね。ちなみにムラケンさんは?
ケンケン:今でもめちゃ忙しいやろ?
ムラケン:いやいや、そんなことないですよ。年末まではヤバかったですけど、今は落ち着いてるのでひとまずゆっくりしながらって感じです。
ケンケン:『バカイゥン』の入店待ちのお客さんが、うちの店で待機ってのもあったからな。
ジョル:USJみたいになってますやん!
ムラケン:ちょっと待ってください。その噂、だいぶ盛ってるでしょ!
ケンケン:ホンマやで。お客さんが「今7組待ちやから、ひとまずヒロカワテーラーいてる」とか話してたから(笑)
土岐:さすがやな、ムラケン君
ムラケン:ほんま勘弁してくださいよ。
ケンケン:でも、日々変わらずに忙しくできてたことが、ホンマありがたいことやと思うよな。
ホントそうですよね。当たり前の日々に感謝というか。ちなみに、上甲さんや土岐さんはどうですか?コロナの時期に何か始めたことなどについて。
上甲:先ほど話してた新店の準備とかですね。ただ、新年早々に自転車で事故ったので、結局何もできないままで…。今日、退院したのでこれからスピード上げてきますよ。
ケンケン:もう大丈夫なんやんな?
上甲:はい、折れたアゴも復活したので、これでようやく試食もできるなと。入院中はスタッフに「こんな感じで作ってー」「じゃ食べてみてー」「味はどんな感じー」という状態でしたから(笑)。しかも、うまくしゃべれない状況で。
森:もう、ネタになってますやん!
上甲:でも実体験やから(笑)。後は、アゴ折れてても、店舗のマニュアルやルール作りはできるので、そっちにも注力してましたね。ベースになるマニュアルなどがないと、2店舗目からは絶対にうまくいかなくなるので。そして今日はこの後、復活したアゴを使って初めての試食です(笑)
ジョル:やっぱネタですやん!
上甲さんありがとうございます(笑)。では、土岐さんは?
土岐:なんか話しにくいなぁ(笑)。うちの場合はメニューの見直しや焼き物へのこだわりを深めたり、次の出店に向けたスタッフの教育とかに時間を費やしてるかな。昨年はテイクアウトにもみんなでチャレンジしたけど、なかなか大変やったから、店の本質的な部分を追求した方がいいかなと思って。
ケンケン:そうやな。やっぱり夜の酒場であることが、自分らの原点やから。その部分をちゃんとせな!って改めて思うようになったね。
土岐:いろいろ試行錯誤してきたからこそ、ですね。コロナで生まれた時間的な余裕が、原点の大切さ気づかせてくれたのかなと。僕もそう思いますわ。
そこに気づけるかどうかで、やっぱりこれからの店の在り方も変わってきますよね。ケンケンさんは、何か変化ありました?
ケンケン:まぁ変化というか、自分らの原点への想いがより強くなったことは、深化かなと。だから、今のコロナという状況は、飲食店経営するには大変やけど、すごく勉強にもなってると思う。みんなその想いは持ってるから、“ヨツヨコ”はこれからどんどんおもろくなるんちゃうかな。
平野町通ルネッサンス、居酒屋DISCO、アパレル展開…、みんなで仕掛けるのが“ヨツヨコ”スタイル。
ここまでみなさんの酒場への想いをいろいろ伺ってきたんですが、新店オープン以外にも何か仕掛けていくことってあるんですか?
森:“ヨツヨコ”界隈のみんなでイベントしたいよなって話は、ずっとしてたんですよ。昨年の4月頃は「夏くらいにできたらいいな」と言いつつも忙しかったり、規制があったりでできず…。年末には「2月くらいにできたらな」と話してたんですが、また緊急事態宣言が発令されてもうたし。
ジョル:そうなんですよね。実は「平野町通ルネッサンス」と題したイベントを『YAE』のタスクと考えてたんですよ。
※平野町通:京町堀1丁目から平野町2丁目にかけた東西の通り
どんなイベントなんですか?
ジョル:平野町通は昔すごく栄えてたエリアで、そこをもう一度盛り上げたいなと思って。森さんやケンケンさん、ヨシ君とかにも相談させてもらってたんです。クラブサーキットの居酒屋版みたいな感じで、各店舗にDJを置いて、音楽を楽しみながら飲んで食べてエリアを回遊するっていうイベント。2月くらいに開催したかったんですけどね…、もう過ぎちゃいました。
森:がっつり緊急事態宣言出てるしな。
ジョル:なんなら、特措法で法律までできちゃった!みたいな(笑)
ヨシ:かなり楽しみにしてたんだけどねー。
具体的な内容まで考えてたんですか?
ジョル:店によって“色”があるので、そこに合わせたDJや選曲はもちろんなんですが、LINE@を活用して参加店舗が…(だいぶ詳しい部分まで話していただきましたが、念のため割愛しておきます。この仕組みは、ぜひイベント当日に体感してもらえれば!)みたいな感じです。
ケンケン:なるほどなー。しっかり考えとんなー。
ジョル:やるからには一過性のイベントにしたくないので、店もお客さんもちゃんと繋がっていける仕組みにしたくて。楽しさ優先はもちろんだけど、大人が集まって仕掛けるイベントだから、そこはしっかりしたいなと。
土岐:やっぱり真面目やね。
ジョル:みんな酒場での僕しか見てないけど、実はしっかり者なんです(笑)
ケンケン:さすが元リクルート!
ジョル:いえいえ、成れの果てがこれでございます。
森:まだ成れの果てちゃうやろ。
ムラケン:これから、ここからやし!
ヨシ:田中邦衛のモノマネもできるしね。
ジョル:加えて、井上陽水もおまかせください。「みなさん、ごきげんよぉ〜」
ケンケン:なんでやねん(笑)
「平野町通ルネッサンス」、めちゃ気になります!他にも何かあります?
ケンケン:みんなで合同でやる前に、ひとまず店でイベントしよかなと。居酒屋DISCO的な感じで、ジュンゾウさん(オガワジュンゾウさん/イベントプロデューサー)がやりたいって言ってくれててね。和もの中心のDJイベントを3月にする予定やねん。
上甲:盛り上がりそうですね、それ。
ケンケン:まだ時短営業の要請があるかもやけど、それなら早くスタートして早く閉めたらええかなと。まずは、やることに意味があると思ってるから。
ジョル:絶対行きますよ!「平野町通」ルネッサンスも4月後半くらいには開催したいと思ってるので、みなさんご協力よろしくお願いします。
森:もちろん、当たり前やん!
いや、なんか盛り上がってきましたね。
ジョル:後はね、イベント関連のグッズもそうだし、“ヨツヨコ”のアパレル展開とかもアリですよね。
森:『RayCoal』さんもご近所やし、アパレル関係の人も多いからできるんちゃう。各店はもちろん、セレクトショップさんでPOP UPさせてもらったりな。
ヨシ:なんか、また新しいグルーヴが生まれそうだねー。
ジョル:僕はおんぶに抱っこスタイルなんで、先輩方に付いていくのみです!
森:そのデカイ体でか(笑)
ケンケン:オレはジョルに付いていくで!
ジョル:いえいえ、僕がケンケンさんに付いていきますよ。
ケンケン:なんでやねん!
ヨシ:じゃ、僕もケンケンさんに!
上甲:僕も!
ケンケン:そろそろ、オレをおんぶしてくれよ(笑)
ジョル:すいません、甘えん坊の末っ子なんで。
土岐:そうは見えないね(笑)
一同:爆笑。
ケンケン:まぁ、コロナな状況はまだまだ続くやろうけど、みんなでおもろい種まいて、育てていこや!ヨツヨコをな!
森:みんなの街やから、みんなで育てないとね。ケンケンさんイイこと言いますわ。やっぱ、みんなでケンケンさんに付いて行こ(笑)
ケンケン:だから、そのノリをもうやめぃ!
コロナクライシスで飲食店は大変な時期ですが、“ヨツヨコ”店主たちは超ポジティブだし、誰よりも酒場愛が深い人たちばかり。「平野町通ルネッサンス」や「居酒屋DISCO」など次なる仕掛けも続々なので、酒飲みラバーズの人も、まだこのエリアに来たことがない人も、乞うご期待!やっぱり、おもろい人がいる街は、おもろくなっていく!そう思うんですよね。
撮影協力:neji
http://neji-kyomachibori.jp/
https://www.instagram.com/neji.kyomachibori
廣川 賢
『ヒロカワテーラー』店主。瓦町で爆発的な人気を誇った『スタンド ニューサンカク』が移転リニューアルし、現在の名称に。界隈の店主たちやお客さんからは「ケンケンさん」と親しまれる、街のアニキ的存在。
大阪市中央区平野町4-5-10
上甲 博司
豊富な酒の肴とせいろ蒸しが人気の『オオサカ チャオメン』の店主。肥後橋界隈をさらに盛り上げるための、“ヨツヨコ”というエリア名称を名付けた張本人。この春には、2号店を梅田にオープン予定で、ただいま準備に奔走中。
大阪市中央区平野町4-7-7平野町イシカワビル101
土岐 正人
炭火の香りが香ばしい焼き鳥と界隈では希少なオープンテラスを有して、地元客はもちろん、エリア外のお客さんからも支持される『炭焼TOKI』の店主。肥後橋界隈の事情にも詳しく、“ヨツヨコ”のキーマンの一人。
大阪市中央区平野町4-6-6
村上 謙一
“ヨツヨコ”界隈では先駆け的なお店として、連日連夜賑わいを魅せる『バカイゥン』の店主。イタリアンでありながら縦横無尽なメニュー構成と圧倒的なコスパを実現するのも、村上さんのポテンシャルの高さ。
大阪市中央区道修町4-5-12西原ビル1F
森 悠介
『カクウチちょこっと』店主。森さんの人柄全開の「ワッショイ!」なスタイルで、街の酒場ムードづくりを牽引。3月中旬予定で、グループ5店舗目となる会員制のすき焼き店を肥後橋駅前にオープン。
大阪市西区京町堀1-7-5アルカディーナ京町堀1F
古田島善之
『パーラー淀屋橋』店主。箕面の『cafe EZE』、北浜の『spectacle KITAHAMA』も経営。ゆるりニュートラルな雰囲気を醸し出しつつも、しっかり芯のある漢。店ではたまに腕を振るうという料理は、相当のハイレベル。
大阪市中央区平野町4-2-6
ニシカワ“ジョル”シューへー
カレー愛好家からも人気の『はらいそスパークル』店主。通称は「ジョル」で、街の先輩やお客さんからも愛されまくる存在。肥後橋の代名詞、もはや伝統芸能の粋に達した乾杯の音頭は、ぜひ生で体感すべし。
大阪市西区京町堀1-9-13NAXAS HIGOBASHI 2F