ずっと物足りない、つまらない。「満たされなさ」を推進力にするアーティスト・きゃらあいの未来。


私は中学生の頃からネットで活動してるので、自分の人格形成にSNSとかインターネットが関わってるんだろうなっていうのはあって。

小さい頃から、かわいいものが好きでした?

好きでした。でも私、弟が2人いて、弟たちの仲間になりたいからゲームをがんばったり、男の子が好きなものを好きになろうとしてましたね。あと、小学生のときに大きい目の漫画が好きだったんですけど、男子がその漫画を、「目がでかすぎてキモい」みたいなことを言うんですね。そういう風潮があって、学校では好きと言えなかったし、大きい目って恥ずかしいんだって思って。それで、好きなものを好きっていうのが恥ずかしいっていう気持ちが生まれたのかなと思うんですけど。
でも私、いま大きい目を描いてるじゃないですか。ネットで活動を始めた中学生の頃は、こんなに大きい目を描いてなかったんですよ、恥ずかしいと思ってたから。でも、全然知らない人がめっちゃかわいく大きい目の女の子を描いてるのを見て、すごい勇気をもらえて。恥ずかしくないんだ、堂々としていいんだって。それがきっかけですね、こういう絵を描くようになったのは。

さっきカメラマンさんとも、「この目が印象的だよね」って話をしてたんですけど、そんな経緯があったんですね。今は、かわいいものや、好きなものを描くことへの葛藤はないですか?

ここ2年くらいは、自分の中でしっくりきはじめました。やっと、ちぐはぐさがなくなって。ほんとにここ2年くらいは、絵を描くのはめっちゃ楽しいですね。

描くもののテーマとして、展覧会の紹介文とかでは、SNSとかゆらぎみたいなものがフィーチャーされてますが、ご自身としては意図しているところですか?

SNSに関しては、私は中学生の頃からネットで活動してて。今は小学生でもスマホを持っててTikTokで踊ったりしてますけど、今から15年くらい前は中学生でやってる人はそんなにいなかったんですね。その時代からTwitter(X)とかをやってたので、自分の人格形成にSNSとかインターネットが関わってるんだろうなっていうのはあって。それに、それだけ昔からやってると切り離せないんですよ、生活から。SNSの炎上とか暴言とか見ると苦しくなるんですけど、でも15年くらい付き合ってるから見なければいいっていうわけにはいかなくて、一緒に生きていかないといけない。だからこそ、そこで自分がどう感じるかっていうのは意識していて。SNSでひとつの意見に対して、最初は悪いとも思ってなかったのに、大量の意見を見るうちに、悪いのかもしれない…とか思っちゃうんですよ。そういう自分の意志のゆらぎみたいなのはあるなと思ってて。それも、作品を作るときにひとつの要素として入れてますね。

SNSで起きることや、そこから生じる心のゆらぎみたいなのが作品の要素としてあるんですね。

それだけでもないんですけど、文字数が限られてるなかで取り上げるとすれば、大きなテーマとしてはそこがわかりやすいかなって。SNS時代を生きてる作家ではあるから。

SNSでの他の人の作品を見たことが、作風にも大きく影響してますよね。中学時代にネットで絵を発表しようと思ったのは、誰かに見てほしいという気持ちから?

見てほしいもあるんですけど、仲間になりたいみたいな。学校で仲の良い友達の中でも、同じものが好きな子って意外といなくて。でもネットだと、お絵描き掲示板みたいなので自分と同じ作品が好きな人がいて、そこで交流ができるから。そこに入りたくて、ネットで絵を公開するようになりました。別に不登校とかでもなかったんですけど、あんまり現実世界っていうか、学校でそこまで自己主張するのが得意じゃなかったし、自分の好きなものを話すこともなかったので。ネットで友達とか話し相手ができて、それが自分の活動につながっていった感じですね。

名前も当時からきゃらあいで?

いろいろあったんですけど、こういう絵を描くときは、きゃらあいで。ネットを始めるときに適当につけたニックネームなんですけど、そのまま。でもここまで来たのは、本当にネットがあったおかげかなって思います。

ちゃんと大阪の人なんです。作品にもけっこう大阪の風景を描いていて、浜寺公園の運河から見える工場とか。
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Profile

きゃらあい

大阪府出身、京都造形芸術大学(現:京都芸術大学)アートプロデュース学科卒業。『ゆらぎの中にいる自覚』を主なテーマとしている。SNSで多様な価値観に触れられる時代、さまざまなものを吸収して、何が正しいのか、自分の意見や属性すらも分からなくなる浮遊感が自身の中に根強くあり、作品制作はそれを受け止める器にもなっている。幼い頃に親しんだ少女漫画のような大きな瞳や、ファンシー雑貨のような色彩など、独自のキャッチーさで鑑賞者を引き込み、描かれた人物と対話ができるような作品づくりを続けている。

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