絵本は親子をつなぐコミュニケーションツール。“絵本のつなぎて”として活動するふわはねさんの、ぬくもりあふれるまなざしについて。
子育てって本当に一瞬!手と手をつなぐ代わりに、絵本を通して親子のコミュケーションを。
ふわはねさんが考える絵本の魅力について教えてください。
絵本は、親と子どもの対話につながるコミュニケーションツールだと思っていて。自分の思いを言葉にすることが難しい赤ちゃんも、絵本を介すと表情の変化などが垣間見れるんです。最初は無反応でも、何度も読み聞かせをすることで少しずつ笑うようになったり声を出すようになったり。子どもの成長を一冊の絵本を通して見ることができる。それってすごくすてきなことですよね。
だからといって、私はそれが絵本じゃなくてもいいと思うんです。歌でもいいし、お母さんが料理好きなら料理でもいい。私はそれがたまたま絵本だったけど、それぞれの得意なことや好きなことを、子どもとのコミュニケーションに生かすことが大切なんじゃないのかな。この年齢になると、子育てって本当に一瞬だなと思うんです。当時はできなかったけど、もっとこうしてあげれば良かったって後から思い返すことが本当に多くて。子どもってすぐ大きくなっちゃうから、一緒に過ごせる宝物のような時間を大切にしてほしいですね。
ふわはねさんにとって一番のコミュニケーションツールが、たまたま絵本だったということですね。“絵本のつなぎて”という言葉には、どんな意味が込められているのでしょうか?
先ほど子育ては一瞬というお話をしましたが、子どもと手をつないで過ごせる時間って実は驚くほど短くて。本当はずっと手をつないであげたいけど、そういうわけにもいかないですよね。手と手をつながなくなっても、親子をつないできた絵本が思い出となり心に住み続け、そしてまた次の世代へとつながっていけばいいなぁという思いも込めています。絵本を作る人、読む人、読んでもらう人をつなぎたいという願いもあって。絵本の選書や紹介文を書くことが、その目的につながっていると思うと嬉しくなります。
実際に子育てをしていた頃は、ふわはねさん自身もかなり読み聞かせをされていたんですか?
絵本講師の資格講座に通い始めたのが、長女が1歳になった頃で。勉強も兼ねてかなりたくさん絵本の読み聞かせをしていました。4月から授業が始まって3月に終わったんですが途中で第2子を妊娠して、資格を取得してすぐの4月に出産しました。臨月で卒業したので、最後のレポートを書くのがめちゃくちゃ大変でしたね。子育て期のド真ん中で資格を取ることができて、自分や子どもたちにとっても良かったなと思います。
ちなみに、こちらの「絵本のアトリエ」には何冊くらい本があるのでしょうか?
4,000冊以上ありますね。
すごいですね!まさに圧巻といったところです。すべてふわはねさんが目を通したうえで、いいと思ったものを置かれているんですか?
いただいたものもあるんですが、基本的には自分で集めています。この家を建てたのが去年の2月で、それまではマンションに住んでいたのですが、それはもう本が溢れかえっていて……。床が抜けるかと思いました(笑)。新しい家に引っ越して、アトリエを作ることができて本当に良かったです。
ここ3〜4年はボードゲームにもハマっていて、「HABA」というドイツのメーカーのものが好きで集めています。ボードゲームってコミュニケーションツールとしてすごく優秀で、いいものがたくさんあるんですよ。知らない人同士でもこれさえあれば仲良くなれるし、何より子育てにとってもいいんです。負けたら悔しいとか、勝ったらどうして勝てたか考えるとか、ちょっと相手を出し抜いてみるとか。やっているうちに、自然と色んな感情や思考が生まれるんです。実はカギになるカードを自分が持ってるのに持ってない顔をするとか、一人がゴールしそうになったらみんなで団結して阻止するとかね。学校ではあまり良しとされないことを、ボードゲームだと自然とやらなきゃいけなくなっちゃう。そういうのって社会に出たら結構大事なんですよね。しかもみんな平等なルールで進めていきますし、ボードゲームって“小さな社会”って言われていているんですよ。
学校じゃ教えてもらえないことをボードゲームから学べるんですね。アトリエはどのように活用されているんでしょうか?
最初はオープンスペースにする予定で、カフェとして使おうと思っていたんですが、別にカフェをやりたいわけじゃないしなぁと思っちゃって。真剣にカフェをやってる方が他にたくさんいるのに、そうじゃない私がやるのもどうなのかなと。
だったらカフェじゃなく、お茶をゆっくり飲んでもらえる場所にできればいいじゃんと思って、友達のおうちに遊びに来たような気持ちで過ごせる空間を目指しました。絵本もボードゲームもあるし、おままごとセットもあるし、その場で遊んでコミュニケーションを取ってもらいたいなと。最近は幼児教育を学ぶ長女にサポートに入ってもらって、子どもが絵本やままごとで遊んでいる隣で、お母さんたちと真剣にボードゲームをしています。子どもと同じ空間にいながら、それぞれが楽しめる場って意外と少ないんですよね。大人だけで来られることもありますし、とにかくくつろいでもらえるスペースにしたくて。今は予約制にして、貸切で使えるようにもしています。東京の作家さんが来阪した時に寄ってくださることもあって、イベントもさせてもらっています。
めちゃくちゃ落ち着く空間ですもんね。絵本を読んでボードゲームで遊んで、何時間でも過ごせてしまいそうです。ふわはねさんは、作家さんとのつながりも結構あるんでしょうか?
東京にはちょこちょこ行っていて、東京は作家さんとの距離感がめちゃくちゃ近いんです。作家さんと出版社さんとのフットサルサークルとかもあって、コロナの前はみんなでフットサルをしてご飯食べて、互いに知り合いを紹介し合うっていうのがよくあったそうです。日頃の活動を通して知り合った作家さんが、アトリエに遊びに来てくれることもありますよ。
少し話の順番が前後しますが、日めくりカレンダーはどういう経緯で作ったんでしょうか?
もともとお気に入りの作家さんの日めくりカレンダーを使っていたんですが、2年前から急に作らなくなっちゃって。来年からどうしようと思っていると、「ふわはねさんが作ってみたら?」とフォロワーさんに言われて。いやいや、そんなに簡単に作れるわけじゃん!って思いました。だけどもし作るなら、その日ごとのおすすめの絵本を入れたいし、月の満ち欠けは必須だし……とかいろいろ考えていて。仲良くしていただいている『ニジノ絵本屋』という絵本屋兼出版社があって、日めくりカレンダーを作りたいっていう話をしたら、「じゃあ作ってみようよ」ということになったんです。それが10月だったんですが、私は4月始まりが良かったから制作もギリギリ間に合って。というのも、子どもがいると年度始めは4月なんです。一枚ずつめくっていくとどんどん少なくなって、もうあとこれだけしかないね……みたいな。そんな風に子どもの成長を感じることがあったので、4月スタートにこだわりました。
イラストは、お月さまの絵本といえばのカワチ・レンさんにお願いしました。今年もカワチ・レンさんに書いていただいてて、来年度は北村人さんにお願いすることになっています。今は、それにちょうど取り掛かるところで。今回は私の描いた言葉に絵をつけていただくので遅くなってもいけないし、365日分……今から間に合うかドキドキですね。
ふわはね
大阪・北摂在住、2人の娘を持つ母。絵本講師の資格を有し、絵本に関する活動を通して作り手、読み手、聞き手をつなげる“絵本のつなぎて”。自宅に併設する予約制のアトリエスペースには、4,000冊以上の絵本や児童文学、子育てに関する本のほか、50種類以上のボードゲームをスタンバイ。