うつわ愛が高じてショップをオープン!『secret』オーナー・黒田賢義さんの「好き」を仕事にするチカラ。
この3月、大阪・京町堀にオープンした『secret(スクレ)』は、国内の作家約80名のうつわが一堂に会するショップ。名だたる作家の作品がここまで充実しているショップは他にないと、平日週3日の営業にも関わらず界隈のうつわ好きが連日訪れています。オーナーは、同じく京町堀でアパレル×グリーンのセレクトショップ『VELVET(ベルベット)』を手掛ける黒田賢義さん。『VELVET』の一角にあったうつわスペースを店舗として新たにスタートさせた理由や、ビジネスのテーマである“好きなものと好きなものを掛け合わせてオンリーワンになる”手法、そしてご本人の意外過ぎる来歴について、お話を伺ってきました。
弁護士になるつもりだったのが、夢破れて、ゼロになりました。
黒田さんは2017年に『VELVET』をオープンされたと伺ってますが、アパレルの仕事を始めたきっかけを教えてください。
もともとアパレルの仕事をするつもりはなくて、弁護士になるつもりだったんです。
え、弁護士ですか?
大学の法学部を出て、法科大学院に進んで、弁護士になろうと思っていたんです。完全に弁護士になるつもりで、というか弁護士のつもりで生きてたんですけど、夢破れてしまったんですね。大学院を辞めてしばらくは先輩の司法書士事務所で働きながら、これからどうしようか……って考えたときに、昔から服が好きだったのと、当時の彼女がアパレル勤めだったので、ああじゃあアパレルいってみようかなと。それぐらいの気持ちで始めました。
夢がリセットされて、ゼロから新しい道を探す……みたいな感じですか?
そうですね。とりあえず、セレクトショップを運営するアパレル会社に入って、販売をしてたんですけど、2年ぐらい働いて結婚することになりまして。アパレルに勤めてから服を買い過ぎて借金も増えてしまったので、堅い仕事に就こうと思って、次は盆栽雑誌の編集者になったんです。
盆栽雑誌とはまた、マニアックなところに……。
洋服を買わずに済む、堅実な会社に勤めたくて。応募するまで盆栽雑誌というものがあることすら知らなかったんですけど、人が少ない会社で、構成・取材・執筆まで全部やらせてもらいました。でも、弁護士を目指してたくせに、デスクワークは向いてないなと思ってそこも2年で辞めました。
雑誌の仕事も、目指す道ではなかったんですね。
販売の時もそうだったんですけど、「この仕事ほんまにやりたいことかな」って疑問が湧いてきて。出版社に移ってからも、「そもそも自分は何がしたかったんだろう」って考えてしまったんですけど、その時ふと、自分でやろうかなと思ったんです。人に言われたことをやっているから、こんなことを考えてしまうのかもしれないと思って。それで、出版社を辞めるときに自分で商売をしようと決めました。
アパレルで起業しようと?
そうですね。そのために、外資系の革靴を扱うブランドに入りました。開業資金を貯めるのと、革靴の知識も学びたかったので。
今度は目的が明確ですね!その時は、仕事に対する疑問は湧かなかったですか?
湧かなかったですし、お金もちゃんと貯まりました。目標がないとお金貯められないんで……。革靴ブランドにいた2年間は、コンビニでアルバイトをしながら勤めてました。
コンビニバイトを掛け持ちで?
早く資金を作りたかったので。革靴ブランドの1年目で資金の目処がついたので、2年で退職して、セレクトショップ『VELVET』を始めました。
黒田 賢義
姫路市出身。関西大学法学部卒業。割烹料理屋を営む父の影響で、幼いころから窯元を訪ねるなどうつわに親しむ。司法書士事務所、アパレルメーカー、出版社を経て、2017年セレクトショップ『VELVET』を開業。2022年3月に国内の著名作家約80名のうつわを取り揃える『secret』をオープン。
secret
うつわと香りを中心としたライフスタイルショップ。営業日は毎週木・金・土(日曜はアポイント制)。営業時間は13:00~19:00