Interview & Writing
小佐田 莉沙
Photo
小林 俊史

突然ですが、皆さんは空箱職人・はるきるさんを知っていますか? 細身のスーツをサラリと着こなす彼は、誰もが一度は目にしたことがあるお菓子の空き箱に“貼る”、“切る”などのアレンジを加え、全く想像のつかない精巧なアート作品として世に送り出しているアーティスト。Twitterのフォロワー数は48万人超えと、SNSを中心に話題を集めています。そんなはるきるさんの展覧会『はるきる空き箱びじゅつかん』が、現在心斎橋PARCO 14Fの『SPACE14』にて12月12日(日)まで開催中。あの緻密な作品を間近で鑑賞できる貴重な機会、これは見逃せない?? ということで、今回はMARZEL編集部がイベントにお邪魔し、在廊中のはるきるさんにインタビューしてきました。展示している作品についてはもちろん、スタートしたキッカケから制作時の苦悩、ものづくりの思考のことまで、幼少期や学生時代のエピソードも交えつつお話してもらいました。知られざる彼の原点にフィーチャーします!

アルフォートの箱を見て「あ、これも紙だな」と思って。見た人の想像力をかき立てる作品づくりを心がけています。

本日は、在廊中にお時間をいただきありがとうございます! 展覧会を拝見しましたが、日常的に目にしている商品の箱からつくられているとは思えないほどのクオリティで、つい見とれてしまいました(笑)。そもそも空き箱を使って作品づくりをしようと思ったキッカケって、なんだったんでしょう?

子供の頃から好きだったペーパークラフトを専門的に学びたいと神戸芸術工科大学に進学して、当時はいろいろ作品をつくっていたんですけど、あるときこれだけだと面白味がないなぁと感じて。なんか一捻り加えたいと悩んでいたとき、食べていた<アルフォート>の箱を見て、「あ、これも紙だな」と思って。これでも何かできそうだと思い立って、つくり始めたのがキッカケです。

アルフォートの作品は今回も展示されていますよね。作品のインスピレーションとなったのは、どういうものだったんですか?

実は、アルフォートのチョコレートには船の絵が描かれているんですよ。せっかくお菓子の箱を材料として使うので、そのお菓子のデザインやイメージみたいなものをできる限り活かしたいなと。だからアルフォートの空き箱を使うなら、船をモチーフにしたいと思って制作しました。商品のイメージや世界観、箱のデザインを活かすという点は今もこだわっている部分ですね。

なるほど。他にも作品づくりにおいて大切にしていることってありますか?

作品づくりをするとき、できれば単体の作品を1つつくるというよりは、その作品の世界観みたいなモノをつくりたいなと思っていまして。これは最近心がけていることなので、初期の作品には反映されていないのですが。例えば、フィギュアを1体だけつくるとすれば、フィギュア単体の作品になっちゃうと思うんです。でも、その隣に相棒になる犬とかを一緒に添えておくだけで、一気にストーリー性が出るじゃないですか。この作品を見ている人が、これはこういう世界で、こんなストーリーがあるんだなっていう想像を膨らませられるような、そんな作品を目指したいなと思っています。

お菓子のモチーフから生まれたアルフォートによる作品。
お菓子のイメージから生まれたムーンライトによる作品。
小さな世界観を制作したというお菓子の箱の街並みには精巧すぎて圧倒されました……。

作品づくりを始めるとき、まず最初に取りかかることってなんですか?

最初にアイデアを出したいので、スーパーなどいろんな箱が売っている場所をうろうろしながら、この箱だったらどんな作品になるかなぁと考えながら歩きます。そのなかで、「あ、これいけるな」と思って買うことが作品制作の第一歩になりますね。ちなみにですが、商品の中身は基本すべて自分で消費しています(笑)。

念入りにリサーチをされているんですね! いろんな箱を見ているとき、どういった部分が一番気になるんですか?

やっぱり箱のデザインですね。空き箱と言ってもプロのデザイナーがデザインしたものなので、色合いだったり模様だったり、それこそ文字の一つ一つもすごく魅力的だと思うんです。そのデザインのここを切り取ってこう貼り付けると元の良さを僕の作品にも活かせるな、みたいなことを見つけるのが一番楽しいですね。

逆に作品をつくるうえで大変なことはありますか?

デザインを詰めるときが一番大変ですね。実際に手を動かして制作している時間って、実はそんなに長くなくて。それよりは作品のデザインや構想の方が時間がかかります。全部が全部、簡単にアイデアが出てきたら良いんですけど。「このパッケージはどんな世界観なんだろう」みたいなモノもよくあるんで。

なるほど。一番苦労した作品ってどれですか?

リッツが結構大変でしたね。クラッカーなんですけど、リッツと言えばクラッカー以外で全く思い浮かばなくて(笑)

確かに! それでもリッツにインスピレーションが湧いたんですね!

そうですね。箱の色合いとかデザインの感じで、結局ライオンをつくりました。今となっては色合いがマッチしていて、すごくいい感じの作品になったんじゃないかと思います。

これまでたくさんの作品をつくられてきたと思うのですが、それぞれ完成作品におけるクオリティーの基準はありますか?

細かさとか技術力とかをよく重視されるんですが、僕は必ずしもそうではないと考えています。2週間ひたすらつくり続けたモノより、3時間で完成した作品の方が魅力的なこともあると思うんで。その基準がじゃあ何かと言ったら、元の箱をうまく料理できているのかだったり作品の構図であったり、パッと見たときに「え、これ面白い」って思えるかどうかだったりすると思うんです。そういう意味だと、僕の過去作品で鼻セレブのウサギとアザラシをモチーフにした作品があるんですけど。大抵の作品は結構細かくつくり込んでるんで、それこそ何十時間もかけていますが、あれは細かい作業が少ないので正直数時間でできちゃうんですよ。だけど僕の中では結構お気に入りで、良い作品だなと思ってます。

会場でも存在感を放っていた鼻セレブのアザラシ。愛くるしい表情がたまらない。

仮面ライダーの変身ベルトをチラシで制作していた小学生時代。昔から立体的なモノをよくつくっていました。

はるきるさんの幼少期について教えてください。小さい頃からペーパークラフトが好きとのことでしたが、昔から何かつくっていたんですか?

小学生の頃に好きな仮面ライダーがいまして。その変身ベルトが欲しかったんですけど、誕生日が来るのを待ちきれずに、家にあったチラシを使ってつくっていました。昔からそういった立体的なモノをよくつくっていたような気がします。

小学生がチラシで変身ベルトをつくろうと思ったことがすごいです。そこから空き箱と出合うまで、他にはどういった作品を制作されてたんですか?

切り絵ですかね。あれって紙を切って絵を描いていくので、どれも平面的なんですよ。だからあまり面白くないなと思って、切り絵で立体作品をつくるというのをしばらくやっていました。空き箱と出会う2年前くらいのことなので、大学に入学した頃からだと思います。

切り絵で立体作品って想像があまりつかないです(笑)。そういった過去の経験や作品から、今の作品に活かされていることってありますか?

そうですね。今つくっている空き箱の作品はどれも展開図などは無くて、その都度自分の頭の中で紙をこねる感覚で制作しているんです。でも基本的な立体展開能力や紙をキレイに切り抜くスキルなどは、切り絵の作品を制作していたときに培ったものだと思っています。

ちょっと話は変わりますが、はるきるさんのプライベートについてもお尋ねしたいです。作品制作以外でハマっていることとかあります?

最近は、ボードゲームとかアナログゲームに結構ハマっていますね。カタンの開拓者っていう無人島を4人で開拓していくというゲームです。元々ドイツで生まれたボードゲームらしいですが、それぞれ資源を持っていて、お互いに「僕の木材あげるから君のレンガちょうだい」とか言いながら一番無人島を開拓した人が勝ちみたいな(笑)

面白そうです! やはりプライベートでも何かつくられているんですね(笑)。他にも何か時間を使っていることはありますか?

今はSNSを中心に活動していることもあって、いわゆる若者の間で流行っているものやすごい人気のあるものに関しては、できる限りチェックするようにしています。例えば、最近だったら鬼滅の刃とか。パクるとかじゃないですけど、こういうポーズが美しいなとか、構図などをよく見ながら勉強しています。漫画?アニメ?ゲームは、作品に影響を受ける部分が多いので特にチェックしていますね。

そのなかでも、特に影響を受けたものがあれば教えて下さい!

ダークスオールというゲームの世界観が、ものすごく好きなんです。西洋の騎士みたいなキャラがよく出てきて、作品の世界観やデザインで影響されている部分は多いと思います。

初めて聞く作品でした。一度チェックしてみます。

小学生のお子さんが見ても楽しい!と思える作品を制作していきたい。芸術や美術をもっと身近で楽しいものに。

個展や自身初の著書を発刊するなど活躍のフィールドを広げられていると思いますが、活動の中で心がけていることってありますか?

今は芸術家として活動しているんですけど、いわゆる芸術家と呼ばれている方って気難しい方が多い印象だと思うんです。でも実際、世間一般の人たちに楽しんでもらうというよりかは、本当にわかる人にさえわかってもらえたら良いって考えている人が割といるということも事実なんです。美術館へ行っても、すごく価値のある絵がなんでこんなにすごいんだろうって、結構わからなかったりするじゃないですか。ただまぁ芸術家の世界ってそういうことが多いと思うんです。だから、僕の場合は誰が見ても、それこそ小学生のお子さんが見ても楽しい!と思えるようなモノをつくりたいなと。それこそが作品として魅力的だと思うので、誰が見ても楽しい作品をつくるという点は心がけています。今後はこれを新しい芸術家のスタイルとして、確立していけたら良いですね。

なるほど。そういったスタイルを確立するうえで、やってみたいことがあれば教えて下さい。

自分で“空箱職人”と名乗っていますが、僕がやってることって本当に誰でも簡単に始められるんです。だから、小学生などに向けたワークショップができたらいいなと思っていて。だけどただ普通にするんじゃなく、美術館でワークショップを開くとか。なんとなく敷居が高いイメージのある美術館で、生活に馴染みのある空き箱を使ったワークショップをする。アートとラフに触れ合えるような活動を通して、芸術や美術は遠くて難しいものではなく、もっと身近で楽しいものとして世間に浸透させることができたらいいなと思っています。


Event Information

はるきる空き箱びじゅつかん

会期:11月12日(金)~ 12月12日(日)
※入場は閉場の30分前まで
※最終日は18時閉場

会場:心斎橋PARCO 14F SPACE14(大阪市中央区心斎橋筋1-8-3)
入場料:一般800円/小・中学生500円 ※小学生未満無料

https://shinsaibashi.parco.jp/event/detail/?id=14298

Profile

はるきる(Harukiru)

空箱職人。神戸芸術工科大学アート・クラフト学科卒業。2017年頃より空き箱工作を始め作品をTwitterで発信。そのクオリティーの高さが毎回話題になり、テレビでも多数取り上げられている。現在は新作を制作しながら、企業とのコラボレーションなども行う。2019年の5月に神戸で行った初の個展では、ほぼ自身のTwitterでの告知のみに関わらず4,635人が来場。同年7月には初の書籍「お菓子の箱だけで作る空箱工作」(ワニブックス社)を発刊。

Youtube チャンネル:空箱職人はるきる HARUKIRU

share

TWITTER
FACEBOOK
LINE