Interview & Writing
六車 優花
Photo
梅田 佳澄

意思の強さを感じさせるまっすぐな瞳とミステリアスな表情が印象的な み さんは、関西を拠点に活躍するフリーランスのモデル。事務所無所属、そして年齢非公開という謎多き存在ながら、その独特な世界観で多くの人々を魅了し、これまでオファーされた案件は数知れず。今回は、フォトグラファーのポートレート撮影からカタログをはじめとした広告関係のモデルまで、多彩にこなす彼女のパーソナリティにフォーカス。モデルを始めたキッカケや撮影を重ねていくなかでの気持ちの変化、フリーランスにこだわる理由などを伺いました。写真に生きることの意味を見出し、自分らしく表現活動を続ける み さんの不思議な魅力に、あなたも惹きつけられてしまうこと間違いなしです!

外見はもちろん、その時感じていることを思い返せるように。私にとって写真は“記録”的な意味を持っています。

まずはモデルを始めたキッカケを教えてください。

趣味で写真を撮っている友人に頼まれて、3年ほど前に初めてポートレートモデルをしたんです。その友人が写真をSNSに載せたところ、「これは誰なの?」と思った以上に反響があって。もともと写真を撮られるのは苦手だったんですが、そのことをキッカケに自分の写真を残すことの意味を考えるようになりました。姿かたちはもちろん、その時考えていることや感じていることを、後から見て思い出せるよう切り取っておきたいなと。写真ってその時の精神状態が如実に現れるから、何ヶ月か後に見返すと「この時落ちてたな」とか結構分かっちゃったりする。それってすごく興味深いし、自分が他人からどう見えているのかもっと知りたくなったんです。

み さんにとって、写真に写ることは記録的な意味が大きいのでしょうか?

始めは写真の“記録”的な面に惹かれていましたが、徐々に作品としての面白さにも気付き、さらにモデルというポジションに魅力を感じるようになりました。スタートした当初は、どちらかというと写真=作品の意識が強かったかな。だけど何度も撮影を重ねるうちにその概念が変化して、現在は写真=記録と捉えて自分を精一杯表現しています。

どういった方法でモデル活動をスタートしたんですか?

「被写体やります」というメッセージとともに、Twitterでカメラマンさんを募集したんです。最初はポージングも全く分からず、数をこなすごとに少しずつ成長していきました。自分がその作品の一部になれるよう、撮り手の表現を邪魔しないよう、だけど自分の表現も殺さないように。たくさん考えて試行錯誤していましたね。撮影してくださった写真にも、一枚一枚目を通すようにしていました。今思えば、それがある種のポージングや立ち振る舞いの研究だったのかも。そんな作品たちをSNSに少しずつアップしているうちに、思いのほか色んな方からお声が掛かるようになって。本当はもっとひっそりやる予定だったんですけど……。

み さんがモデルをされていることを、周りの方はあまりご存知ではないんでしょうか?

モデルを始めて少し経ってから、ようやく仲のいい友人にだけ話すことができて。今も基本的に自分から伝えることはほとんどないですね。名前を決める際もすごく悩んで、極力エゴサできないよう“み”という一文字を選んだし。年齢や本業も公表したくなくて、これは何にも捉われず私らしく表現活動をしたいという願いからです。あまり自分のことを話さない性格なので、友人や知り合いのカメラマンには「ミステリアスだね」と言われることが多いですね。

やりたいことをやってお金がもらえたらラッキー。何にも制限されず、色んな人と関わりながら自分を表現していきたい。

これまでモデル活動をしてきて、特に印象的だった出来事や出会いはありますか?

2年ほど私のことを撮り続けてくれているカメラマンさんがいて、今年4月に写真展『quiet』を共同開催したんです。「写真展をやりたい」と私から相談したら、「一緒にやろう!」と言ってくださって。これまでのアーカイヴに、新たに撮り下ろした鳥取砂丘での作品も加えて、とても満足のいく個展となりました。2年間の成長や変化が目に見えて分かるのが面白かったです。また、クリエイティブラボ『アシタノシカク』の大垣ガクさんとの出会いも印象的でした。ガクさんに出会えたおかげで普段とは違う撮影を経験できたし、それが紙面に印刷されてカタログやポスターとして残るのもうれしかった。いつも「やりたいようにやっていいよ」と言ってくださるので、フラットな気持ちで撮影できるんです。新しい経験をする機会を与えてくださって感謝しています。

こちらは1月に開催した個展のメインビジュアル。鳥取の大自然に囲まれての撮影がとても楽しかったそう。
『アシタノシカク』と人気吉本芸人や様々なジャンルのアーティストによるコラボイベントの際につくられた商品カタログ。表紙にはモデルを務めた み さんの姿が。

撮影前に何か準備していることはあるんですか?

私は衣装も自分で用意することが多くて、作品のテーマやカメラマンさんのニーズを聞きながら決めるようにしています。あとはカメラマンさんの他の作品を見て、「この人が撮ったら自分はどんな風に映るだろう」とイメージづくりをすることも。ポージングの研究と言えることは、始めた当時も今も特にしてないかな。食べるのが好きだから食事制限もしないし、本当にありのままの姿で撮影に臨んでいます。

モデルを始めたことで、性格や内面の変化はありましたか?

もともと人見知りだけど、モデルをしてると初めましてのカメラマンさんに会う機会も多いんです。もちろん最初は緊張していましたが、何度も撮影を重ねていくと気心の知れた関係になれることが分かって。私たちはカメラマンとモデルである以前に、同じ人と人だから。例え数時間の撮影であっても、信頼できる関係性を構築することが大事だと感じるようになりました。今はコロナなどもあって、そういった方との撮影を中心にしているのですが、今後はまた初めての方とも関係を築きつつ写真を撮っていただきたいですね。

み さんがフリーランスにこだわる理由を教えてください。

モデル事務所からオファーをいただくことも多いのですが、すべて断っていて。正直CMやTV、雑誌などのメディアに出演することには、あまり興味がないんです。私がモデル活動をするうえで重要視しているのは、その時の自分自身を記録すること、そして人と人とのコミュニケーションです。事務所に所属してしまうと、どうしても商業的な撮影が多くなるし、それぞれのカメラマンさんと関係性を築くのも難しくなってしまう。誰にも制限されず、色んな人と関わりを持ちながら自分を表現していくには、フリーランスというスタイルが一番合っているんじゃないかなと。やりたいことをやってお金がもらえたらラッキー。モデルをするのが楽しいから、それで充分なんです。

写真に写ることは私にとってのモチベーション。カメラを向けられると、自分のなかのスイッチが切り替わるんです。

これからもモデルを続けていく予定ですか?

私は何かにハマったらとことん追求したいタイプなので、たぶんしばらくはモデル活動に夢中になっていると思います。だけど趣味や興味のあることも多いから、いずれは別のベクトルをメインにする可能性もありますね。料理やイラストも好きだし、数年後には調理師免許を取ったりイラストレーターを目指していたりするかも(笑)。とにかく何にも縛られず、自由でいたいんです。たとえモデルという形じゃなくても、私の今を切り取る“写真に写る”ことだけは、ずっと続けていけたらいいなと考えています。

コロナ禍で感じたことや心境の変化はありましたか?

「運動は苦手なんです」とコメントしつつも、軽々とコンクリ壁を登ってくれた み さん。バリエ豊富なポージングにも驚かされた。

もともとインドア派だから外出を自粛するのは苦じゃなかったけど、本来の鬱っぽい性格もあり、世の中の暗いムードを感じて気分が落ちることはありました。その時期は、まさに写真に生かされていましたね。本当に限界を感じた時は、「撮影の予定があるから」「私は必要とされているから」と言い聞かせて自分を保っていました。目の前にカメラがあると、私のなかのもう一つの人格が目を覚ますんです。全身のスイッチが切り替わって、普段の私からは想像もつかないくらいアクティブに動けるようになるし、色んな表情が生まれる。カメラがあることを意識しつつも緊張することはなくて、ただ私自身を全力で表現できるようになるんです。写真に写るということ、自分にレンズを向けてシャッターを切られること自体が、私にとってのモチベーションの一つなんだと実感しました。

Profile

関西在住、プロフィールを一切公表せずに活動するフリーランスのモデル。現在はポートレートを中心に、カタログやフリーペーパーなどの撮影もこなす。最近はスパイスカレー作りにハマっており、スパイスの専門店を訪れたりレシピ本を購入したりしているそう。

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